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医療法人の事業報告書、次回の医療経済実調での活用は見送り―中医協

2016.12.2.(金)

 2018年度の診療報酬改定の基礎資料となる医療経済実態調査において、回収率向上に向けて調査の簡素化などを行うが、「医療法人の事業報告書」の活用については引き続きの検討テーマとする―。

 11月30日に開かれた中央社会保険医療協議会の調査実施小委員会では、こういった方針が了承されました。

11月30日に開催された、「第340回 中央社会保険医療協議会 総会」

11月30日に開催された、「第340回 中央社会保険医療協議会 総会」

医療現場の調査負担軽減に向け、調査項目数を15%削減

 診療報酬改定においては、「医療機関などの経営がどのような状況にあるのか」を踏まえることも重要です。このため前回改定前後の経営状況を把握するために医療経済実態調査が行われ、その結果が改定の重要な基礎資料となります。

 医療経済実態調査のうち、医療機関や薬局などの経営状況を調べる「医療機関等調査」の有効回答率を高めることが求められており、10月19日の前回会合では(1)回答意欲を高めるためのインセンティブを付与する(2)回答負担を軽減する(3)電子調査票の利用を基本とする―といった方針が了承されました。

 厚労省保険局医療課保険医療企画調査室の矢田貝泰之室長は、この方針に沿って次のような具体案を提示。小委員会として了承され、今後、調査票の議論に入ります。

▼資産・負債・税金などを施設単位で算出することを簡易化するため、具体的な計算式を追記する

▼電子調査票に法人全体の金額と施設按分の基礎数値(病床数、面積など)を入力すると、自動的に施設単位で算出できる機能を追加する

▼相談体制を充実する(コールセンターの電話番後の記載など)

▼回答意欲を喚起するため、「電子調査票を利用して、自施設の経営状況の分かりやすいフィードバック」などを行う

▼原則として電子点数票を利用してもらうよう依頼する

▼回答負担を軽減するため項目の整理などを行う

 

 このうち項目の整理については、次のような具体案も提示・了承されました。

▽未活用となっている項目を削除・統合する(例えば、受取利息・配当金、補助金などは「その他の収益」として統合する、これにより15%程度、項目数が減少される)

▽収益に直結する情報について、調査対象を2事業年度分に拡大する(病院の病床数など)

▽保険薬局について、調剤基本料、立地状況を調査し、区分別の分析を可能とする

 

 なお、医療経済実態調査を補完するために「医療法人の事業報告書」を活用することも検討されていましたが、「施設単位でのデータ把握ができない」「診療報酬改定にどう活用するかが固まっていない」といった課題があるため、次期改定に用いることは見送り、引き続きの検討課題とすることになりました。

医薬品・医療機器の費用対効果評価、分析に当たっての比較対象を確認

 11月30日には、中医協の「費用対効果評価専門部会」も開催され、2018年度からの試行的導入に向けた分析方法の報告が厚労省から行われました。

 2018年度から医薬品・医療機器の価格再算定に、一部「費用対効果評価」を導入することとなっています。そこで、6品目の医薬品と6品目の医療機器について、▽企業からデータ提出を求める▽当該データについて専門家が再分析を行う▽総合的評価(アプレイザル)を行う―という作業が進められていますが、費用・効果の評価するに当たっては、「何と比較するか」という点が重要です。今般、各医薬品・医療機器の比較対象薬・機器などが明らかになされました。

 例えばC型肝炎治療薬については、新たな治療法が順次開発されていることを受け、言わば「1世代前の標準的治療薬」(ハーボニーであれば、それ以前の標準治療薬であった「ダクルインザ」「スンべプラ」など)と比べて、どれだけ費用が低減・増加するのか、どれだけ効果が高まったのかを、これから調べていくことになります。

 

 なお、「高額な医療技術を用いた医療技術」の費用対効果評価導入に向けた、検討スケジュールなども報告されました。すでに11月9日の中医協総会で「具体例」を選定し、研究を行う方向が固まっていますが、具体例の選定に当たっては▽希少疾病を対象とする技術▽代替技術がない技術―は除外し、諸外国で一定の費用対効果評価が行われていることを考慮する方針が固まりました。医薬品・医療機器の「具体例」検討と同じ考え方で、年明けから費用対効果評価専門組織(非公開)で研究が進められます。

新薬、新医療機器、新臨床検査の保険収載を了承

 また30日に開催された中医協総会では、次の新薬と新医療機器、新臨床検査の保険収載が了承されました。

▼HIV感染症用薬の『ダルナビル エタノール付加物/コビシスタット』(販売名:プレジコビックス配合錠)(12月7日収載予定)

▼症候性抹消動脈疾患患者の血流改善に用いる『ゴア バイアバーン ステントグラフト(スタンダード)』『同(ロング)』(12月収載予定)

▼眼圧降下を目的として白内障手術に用いる『iStent トラベキュラーマイクロバイパスステントシステム』(12月収載予定)

▼FISH法(蛍光 in situハイブリダイゼーション法)による、末梢血・骨髄由来細胞におけるFIP1L1-PDGFRα融合遺伝子(12月収載予定)

  
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