2017年の医療経済実態調査に向け、回答医療機関へのインセンティブや電子調査票活用などを検討―中医協・調査実施小委
2016.10.20.(木)
2018年度の次期診療報酬改定に向けて、医療機関などの経営状況を把握するために「医療経済実態調査」を実施するが、有効回答率を上げるために、例えば「電子調査票の利用を基本とする」ことや、「回答意欲を高めるためのイセンティブを付与する」ことなどを考えてはどうか―。
厚生労働省は、19日に開催した中央社会保険医療協議会の調査実施小委員会でこのような提案を行いました(関連記事はこちら)。
2015年調査の有効回答率は52.4%、さらなる向上を目指すには
診療報酬は保険医療機関の収入の中心となるため、改定にあたっては「医療機関などの経営がどのような状況にあるのか」などを捉えることが必須です。このため改定前後の経営状況を把握するために医療経済実態調査が行われ、その結果が改定の重要な基礎資料となります。
医療経済実態調査は、医療機関や薬局などの経営状況を調べる「医療機関等調査」と、保険者の財政状況を調べる「保険者調査」の2つで構成されます。
前者の「医療機関等調査」は、全国の医療機関から対象施設を抽出しアンケート方式で実施されるため、有効回答率を高めることが、結果の信頼性にとって非常に重要となります。
前回改定(2016年度改定)のベースとなった2015年の調査では、有効回答率は52.4%と比較的高水準ですが(関連記事はこちらとこちら)、厚労省はさらに有効回答率を向上させるために、次のような方策を検討してはどうかと提案しているのです。
(1)回答意欲を高めるためのインセンティブを付与する
(2)回答負担を軽減する
(3)電子調査票の利用を基本とする
(1)は、「アンケート調査には協力しない方針である」などと考えている医療機関などにも協力を得るために一定のインセンティブを付与してはどうかという考えです。具体的なインセンティブはこれから検討されますが、厚労省保険局医療課保険医療企画調査室の矢田貝泰之室長は、例えば「調査結果全体ではこのような状況で、回答した貴院はこの位置にいる」といったベンチマークデータを提示することなどが考えられると説明しています。
(2)は、これまでにも「調査票の簡素化」などが行われており、さらなる負担軽減のためにどのような方策が考えられるかという提案です。
この点、診療側の遠藤秀樹委員(日本歯科医師会常務理事)は、「一部項目が抜けている回答について、他の部分を活用することはできないのか」と質問しましたが、矢田貝保険医療企画調査室長は「今後の研究課題」とするにとどめ、まず調査票の簡素化などの負担軽減を検討してほしいと要望しています。
また同じく診療側の安部好弘委員(日本薬剤師会常務理事)は、「法人化している薬局では、税理士などが決算書を作成している。税理士などに、どのような調査票であれば回答しやすいのかをヒアリングしてはどうか」と提案。
なお、調査票を簡素化すれば有効回答率の向上は期待できますが、改定論議に必要な情報が十分に得られなくなる可能性もあります。矢田貝保険医療企画調査室長は「両者のバランスを検討していきたい」とコメントしています。
(3)は、電子調査票で回答した施設群では、紙調査票での回答施設群よりも有効回答率が高い(病院における電子調査票の有効回答率は58.7%、紙調査票では41.3%)点に着目した提案です。矢田貝保険医療企画調査室長は「電子調査票の利用を基本とし、電子調査票の利用が難しい場合のみ紙調査票を利用してもらうことを案内してはどうか」と提案しました。
なお19日の調査実施小委には、医療経済実態調査を補完するものとして「医療法人の事業報告書」などを活用してはどうかとの提案も行われています。
医療法人では、会計年度ごとに都道府県に▼事業報告書▼財産目録▼貸借対照表▼損益計算書―などを提出します。これらには「施設単位のデータは把握できない(法人単位のため)」「介護老人保健施設のデータも含まれてしまう」「保険診療を行っていない医療機関のデータも含まれてしまう」などの課題もありますが、例えば「病院・診療所1施設のみの医療法人のデータ把握」や「介護老人保健施設を有する医療法人のデータ把握」などを行い、医療経済実態調査と併せて分析することで、医療機関の経営状況をより詳細に把握できると期待できます。
厚労省は、年明け1月頃までに調査内容を固め、来年(2017年)6月を対象とした調査を実施し、11月には調査結果を公表するスケジュール案を示しており、調査実施小委では、今後、さらに具体的な方策を検討していきます。
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