医療機関経営への見解、支払側は「安定している」、診療側は「改善していない」―中医協総会
2015.11.24.(火)
先ごろ公開された医療経済実態調査結果について、支払側は「安定している」ことを強調する一方、診療側は「改善していない」と反論しており、2016年度の次期診療報酬改定をめぐる議論が熱を帯びています。
医療経済実態調査は、診療報酬改定の前後で医療機関などの経営状況がどう変化しているのかを把握するために行われます。この結果は、改定率や改定内容を決定する際の資料にもなります。
中央社会保険医療協議会では、調査結果に対する見解を支払側、診療側がそれぞれ出した後、厚生労働大臣に対して診療報酬改定に向けた中医協意見をまとめることができないか調整が行われます。20日に開かれた中医協の総会では、支払側・診療側の双方から見解が発表されました。
支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)の見解から、病院の経営状況をピックアップすると、次のような指摘が行われています。支払側は、2013-14年度の経営状況だけでなく、2009-10年度、2011-12年度の過去のデータも併せて分析している点が特徴的です。
▽一般病院は全般的に低い水準であったが、医療法人と個人病院は黒字を維持している
▽機能別に見ると、療養病床60%以上の一般病院では黒字を維持している
▽一般病院のうち、公立病院を除く50-299床の中小規模病院では黒字を維持している
▽公立病院では、給与費・委託費・減価償却費が高く、人的資本・試算への投資が相応の収入に結びついていない可能性がある
こうした結果を踏まえ、支払側は「医療機関などの経営状況は安定している」と判断しています。支払側の分析に対して、診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は「過去の調査を含めて分析しているが、調査対象が異なるので比較には無理がある」と指摘しましたが、支払側の幸野委員は「中期トレンドを見る必要がある」と反論しています。
一方、診療側の松本純一委員(日本医師会常任理事)の見解では、病院経営について次のような指摘がなされています。診療側の分析では、2013-14年度の状況のみが対象とされました。
▽一般病院・一般診療所では損益率が低下している
▽一般病院の損益率低下の大きな要因は、給与費の上昇にあると考えられる
▽医療法人の一般病院では、医師給与は低下し、看護職員の給与も抑制されている
▽一般病院を病床規模別に見ると、すべての規模で赤字が拡大している(大病院では消費増税への補填が不足している可能性がある)
▽国公立以外の一般病院を看護配置別に見ると、7対1で赤字が最も大きい
こうした状況を踏まえ診療側は「必要な人材を確保し、設備投資を行って医療提供体制を維持できる状況にはない」と訴えています。
両側の見解は大きく異なっており、中医協としての意見書(通常は12月上旬にまとめる)をまとめることができるか、今後の議論に注目が集まります(例えば、診療側がプラス改定、支払側がマイナス改定を求めていると両論を併記することも少なくありません)。
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