2014年度改定後に病院の収支は若干悪化するも、療養は現状維持―医療経済実調結果
2015.11.4.(水)
2014年度の前回診療報酬改定後に、公立を除いた一般病院全体の収支は若干悪化し、赤字決算となっている―。このような状況が、4日に開かれた中央社会保険医療協議会の総会に厚生労働省から報告されました。
この結果について、診療側・支払側の双方が近く見解を発表することになっており、改定率の決定に向けた意見を中医協で取りまとめる可能性もあります。
診療報酬改定においては、直近の改定後に医療機関の経営状況がどうなっているのかを調べ、それを生かすというプロセスがとられます。
2016年度改定に向けては、14改定前後で収支がどう変化しているかが調べられました。メディ・ウォッチでは今回、「医業・介護収益に占める介護収益の割合が2%未満の医療機関」に焦点を合わせました。
まず、一般病院全体の状況を見てみましょう。ここで注意すべきは、公立病院の会計基準が14年度から新たになったという点です。そこで、公立病院を除いた一般病院(661施設、平均186床)の医業収益を見ると、13年度時点では33億7041万7000でしたが、14年度には34億2053万2000円で、1.5%増加しました。また、介護費用は3.1%減少しています。一方、医業・介護費用は、13年度には33億5248万9000円でしたが、14年度には34億3437万5000円と2.4%の増加。結果、損益差額は13年度に2285万7000円の黒字でしたが、14年度には906万5000円の赤字となっています。
前回改定後に収入はわずかに増加しましたが、それを上回る支出増によって経営状況が厳しくなっているようです。
次に、一般病棟入院基本料を算定している病院について、看護配置別の収支を見てみると、下表のようになっています。ここでは全体の状況を見るために公立病院も含めています。
7対1病院(224施設、平均329床)では、損益差額が13年度のマイナス1億3896万円から、14年度にはマイナス2億6547万5000円となり、赤字幅が拡大しました。金額の大きな給与費の増加(3.5%増)や、診療材料費・医療消耗器具備品費の増加(3.9%増)による「費用増」が赤字拡大の主な要因と考えられます。
10対1病院(179施設、平均168床)や15対1病院(67施設、平均120床)でも同様の傾向ですが、13対1病院(19施設、平均88床)では若干、経営状況が好転しています。
また特定機能病院(78施設、平均859床)についても、一般7対1病院と同様の傾向が見て取れます。
一方、療養病棟を持つ病院に目を移すと、基本料1を算定している病院(140施設、平均147床)では、収益と費用の伸びが同程度となり、14年度改定の前後で経営に大きな影響は出ていないようです。
次に、100床当たりの損益状況を見てみます。
一般病院全体(公立含む816病院、平均201床)では、やはり収益の伸び(1.5%増)を費用の伸びが上回り(3.0%増)、損益差額は、13年度のマイナス3084万2000円から、14年度には5867万5000円へと赤字が拡大しています。
このうち療養病床が60%以上の一般病院(139施設、平均119床)では、収益の伸び(2.0%増)が支出の伸び(1.7%増)を上回り、損益差額は13年度の4573万1000円から14年度には4963万1000円となり、黒字が拡大しました。
一方、療養病床を持たない一般病院(491施設、平均231床)では、一般病院全体と同様に、赤字が拡大しました。
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