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ICUの看護必要度A項目、項目毎の重み付けを変えて「4点以上」を重症患者に―中医協総会

2015.11.4.(水)

 2016年度の次期診療報酬改定において、特定集中治療室用(以下、ICU)の重症度、医療・看護必要度(以下、看護必要度)A項目について、「心電図モニター・輸液ポンプ・シリンジポンプは現行どおり1点」「その他の動脈ラインなどは2点」とし、A項目4点以上を重症患者と考える―。このような見直し案が浮上してきました。

 4日に開かれた中央社会保険医療協議会の総会には、この見直し案によって「重症患者の割合が現行の87%から74%に低下する」という試算結果が厚生労働省から示されています。

11月4日に開催された、「第310回 中央社会保険医療協議会 総会」

11月4日に開催された、「第310回 中央社会保険医療協議会 総会」

ICUのA項目見直し、重症患者割合は減少

 ICUについては、現在「ICU用の看護必要度A項目3点以上、かつB項目3点以上」の重症患者が常に入院患者の8割(特定集中治療室管理料1と2では9割)以上いなければならないという施設基準が定められています。

現在のICUの重症度、医療・看護必要度の項目

現在のICUの重症度、医療・看護必要度の項目

 しかしICUの入院患者について厚労省が詳細に調査を行ったところ、この背景には、「心電図モニター」「輸液ポンプ」「シリンジポンプ」の3項目のみでA項目3点を満たす患者が多いとの実態が明らかになりました。この3項目のみの患者には、▽医師による指示の見直し頻度がとても少ない▽や看護師による看護提供頻度がとても少ない▽包括範囲の出来高点数がとても低い―という特徴があり、これがために「『A項目3点』のほうが『A項目2点以下』よりも状態が安定しており、医療資源投入量が少ない患者の割合が多い」という、いわば逆転減少が起きているのです。

「心電図モニター」「輸液ポンプ」「シリンジポンプ」のみでA項目3点となっている患者では、状態が比較的安定しており、包括範囲出来高実績も小さい割合が高い

「心電図モニター」「輸液ポンプ」「シリンジポンプ」のみでA項目3点となっている患者では、状態が比較的安定しており、包括範囲出来高実績も小さい割合が高い

 また、一部のICUでは「心電図モニター」「輸液ポンプ」「シリンジポンプ」のみでA項目3点を満たす患者が5割を超えている状況も明らかになっています。

一部の病院では、「心電図モニター」「輸液ポンプ」「シリンジポンプ」のみでA項目3点を満たす患者の割合が50%以上と極端に高くなっている

一部の病院では、「心電図モニター」「輸液ポンプ」「シリンジポンプ」のみでA項目3点を満たす患者の割合が50%以上と極端に高くなっている

 このため中医協の下部組織である「入院医療等の調査・評価分科会」では、「心電図モニターと輸液ポンプとの集約化や、重み付けの変更を行ってはどうか」との意見が多数だされました(関連記事はこちら)。

 厚労省は、こうしたデータや議論を踏まえて、4日の中医協総会に次のような提案を暗に行っています。

(1)A項目のうち「心電図モニター」「輸液ポンプ」「シリンジポンプ」は現行どおり1点のままとする

(2)A項目のうち、その他の項目は2点とする(現行は1点)

(3)A項目に関する重症患者の基準を、「A項目4点以上」とする(現行は3点以上)

 この見直しを行った場合、A項目に関する重症患者の割合は、現行の約88%から約76%に、12ポイント低下します。

 またB項目を加えた重症患者の基準を満たす患者の割合は、現行の87%から74%へと13ポイント低下することも分かりました。診療科別に見ると、内科7ポイント減(90%から83%)、循環器系16ポイント減(88%から72%)、外科10ポイント減(83%から73%)という状況です。

ICU用の看護必要度A項目について、「心電図モニター」「輸液ポンプ」「シリンジポンプ」は1点、その他は2点とし、「A項目4点以上(かつB項目3点以上)」を重症患者と定義づけると、重症患者の割合は現在の87%から74%に低下する

ICU用の看護必要度A項目について、「心電図モニター」「輸液ポンプ」「シリンジポンプ」は1点、その他は2点とし、「A項目4点以上(かつB項目3点以上)」を重症患者と定義づけると、重症患者の割合は現在の87%から74%に低下する

 この見直し案について、幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「支払側の総意」として賛成を表明しましたが、診療側の万代恭嗣委員(日本病院会常任理事)は「循環器系の疾患でICUに入室している患者の一部をICUで診るな、というメッセージに思える。直ちに賛同しかねる」と難色を示しています。

ICUのB項目見直しに対し、診療側委員は難色示す

 厚労省は、看護必要度のB項目について、ICU・HCU(ハイケアユニット)・一般病棟で統一する考えも示しています(関連記事はこちら))。もっとも重症患者の基準値については、ICUでは3点、HCUでは4点、一般病棟では3点と傾斜が設けられる見込みです。これにより「患者の継続的な評価につながる」という効果も得られるため、このB項目見直し案には反対意見は出ていませんでした。

 しかし4日の中医協総会では、「重篤な患者を診るICUと、早期からの機能回復を目指す一般病棟ではB項目の評価を同じくするのは好ましくない」(猪口雄二委員:全日本病院協会副会長)、「ICU、HCU、一般病棟では患者像が異なるはずだ。B項目の統一には無理があるのではないか」(松原謙二委員:日本医師会副会長)といった異論が出るなど、看護必要度を巡る議論は、一般病棟・ICUともにまだまだ調整が必要なようです。

 この点について厚労省保険局医療課の宮嵜雅則課長は、「B項目を統一する提案を行っているが、使い方までも統一するとは述べていない。例えば、ICUとHCUでは『AかつB』で重症患者を定義付け、一般病棟では『Aのみ』で重症患者を定義づけるということも考えられる」と説明しています。16年度の次期改定では、一般病棟について「B項目の点数は不問」「A項目3点以上を重症患者とする」という見直しが行われる可能性もありそうです。

 また宮嵜課長は、ICUの重症患者割合(現在は80%、または90%以上)について「議論の結果、例えば70%に引き下げるという選択肢が出てくるかもしれない」とも述べており、「A項目、B項目の見直し」と「重症患者の基準値」、「重症患者割合の基準値」を総合的に議論していく考えも明らかにしました。

 近く、さらに詳細な試算結果などが厚労省から示される見込みですが、例えば「動脈ライン」と「人工呼吸器の装着」の2つのみでA項目を満たせることになり、「より重症な患者を診ている病院では基準値の緩和になる」(厚労省保険局医療課の担当者)点にも留意が必要です。

循環器系の先天奇形など、NICUの算定可能日数を延長

 厚労省は、このほかにもICUについて次の2つの見直しを提案しており、中医協では目だった反対意見は出ていません。

▽薬剤関連業務を実施するために、ICU内に薬剤を配置することを評価する

▽新生児特定集中治療室管理料(NICU)、小児特定集中治療室管理料(PICU)について、一部の重症患者では算定日数上限を延長する

 前者は、ICUでの薬剤師配置には▽医師・看護師の業務負担軽減▽副作用の回避、軽減▽薬剤関連インシデントの減少▽薬剤種類数の減少―といった効果があるとの研究結果を踏まえた見直し案です。具体的には、「病棟薬剤業務実施加算」についてICUでも届出を認めることなどが考えられます。

ICUに薬剤師を配置することで、可避的な副作用の発生率を下げることが期待できる

ICUに薬剤師を配置することで、可避的な副作用の発生率を下げることが期待できる

 後者は、「循環器系の先天奇形(心臓手術・人工呼吸器など)」や「体外式心肺補助(ECOM)」「血液浄化」「心臓手術のハイリスク(RACHスコア4以上)」「左心低形成症候群」など一部の重症患者について、NICUやPICUの算定日数上限を延長してはどうかとの提案です。NICUでは原則21日(低出生体重児や先天性疾患により長期間の設定もあり)、PICUでは14日までしか高点数を算定できませんが、これらの疾患では、この上限を超えても高密度な治療が必要なケースがあるためです。

循環器系の先天奇形(心臓手術や人工呼吸などが必要)では、NICUの入院期間がどうしても長くなってしまう

循環器系の先天奇形(心臓手術や人工呼吸などが必要)では、NICUの入院期間がどうしても長くなってしまう

体外式心肺補助(ECOM)の使用であったり、血液浄化などを行う患児では、どうしてもPICUの算定日数が長くなってしまう

体外式心肺補助(ECOM)の使用であったり、血液浄化などを行う患児では、どうしてもPICUの算定日数が長くなってしまう

NICU、GCUについて、入院期間が長くなりがちな「出生体重が1500グラム以上で、先天性水頭症などの先天性奇形など有する」患児では、算定可能日数を延長する仕組みが前回の2014年度(平成26年度)診療報酬改定で導入された

NICU、GCUについて、入院期間が長くなりがちな「出生体重が1500グラム以上で、先天性水頭症などの先天性奇形など有する」患児では、算定可能日数を延長する仕組みが前回の2014年度(平成26年度)診療報酬改定で導入された

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