二次救急で再診後、緊急で即日入院した場合などの評価を充実―中医協総会
2015.11.4.(水)
2016年度の次期診療報酬改定では、2次救急医療機関における「夜間休日の救急患者」受け入れについて新たに評価を行ってはどうか―。こういった提案が、4日に開かれた中央社会保険医療協議会の総会で厚生労働省から行われました。
また「脳梗塞でt-PAを施行した患者」や「狭心症で冠動脈の検査や治療を行った患者」を、救急医療管理加算1の評価対象とする方向も提案されています。
診療報酬改定では、医療現場に現存する課題の解消・是正を図るとともに、より質の高い医療提供体制を構築するために、経済的な評価の充実が行われます。
現状に課題があり、かつ充実していくべき医療分野の1つとして「救急医療」が挙げられます。
総務省消防庁の調査「救急・救助の現況」からは、救急出動件数や救急搬送人員はここ10年間で大きく増加しており、特に高齢の患者が増加していることが分かります。
一方で、比較的軽症の患者を受け入れることが期待される二次救急医療機関は減少傾向にあります。
この背景には、二次救急医療機関の負担、中でも「時間外、深夜、休日」の救急患者の増加による負担が大きいのではないかと考えられています。
厚労省はこの点を勘案し、二次救急医療機関で深夜・土曜日・休日の救急搬送患者を受け入れることを評価する「B001-2-6 夜間休日救急搬送医学管理料」(200点)を2012年度改定で儲けました。三次救急である救命救急センターへの患者集中を避ける狙いもあります。しかし、この点数は再診患者では算定することはできません(初診の場合のみ算定可能)。
また、初診で「入院治療が必要」と判断され、即日入院となった場合には、入院料や検査などのほかに、初診料やその加算(時間外加算・休日加算・深夜加算)を算定することができますが、再診で同様に即日入院となった場合には入院料などは算定できますが、再診料およびその加算(時間外加算・休日加算・深夜加算)を算定することはできないのです(初・再診料の通則3「入院中の患者に対する再診の費用は、入院基本料・特定入院料・短期滞在手術等基本料に含まれるものとする」)。
こうした不整合を是正するために厚労省保険局医療課の宮嵜雅則課長は、二次救急医療機関における「夜間休日の救急患者の受け入れ」や「夜間休日における再診後の緊急入院」を評価することを提案しています。
例えば、前者については「夜間休日救急搬送医学管理料を再診の場合にも算定可能とする」ことや、後者では「再診後に、緊急で即日入院となった場合に再診料やその加算などを算定可能とする」ことなどが考えられます。
この点について診療側の猪口雄二委員(全日本病院協会副会長)は、「二次救急医療機関では夜間の人件費増などで経営が苦しい。十分な評価をしてほしい」と厚労省提案に一定の評価を行いました。しかし、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「厚労省の提案で二次救急医療機関の経営が改善するか疑問だ。時間外の救急患者の受け入れ実績などを評価すべきではないかだろうか」と指摘しており、今後の調整が待たれます。
2014年度の前回改定では「救急医療管理加算」を、▽意識障害、広範囲熱傷、緊急手術が必要な患者などを受け入れる場合の「加算1」(800点)▽加算1に「準ずる重篤な状態」の患者を受け入れる場合の「加算2」(400点)―に区分しました。
救急医療管理加算は、命にかかわるような重篤な状態の患者に対し、濃密な医療を提供することを評価する診療報酬項目です。しかし「(意識障害などに)準ずるような重篤な状態」が対象となっていたため、この曖昧な表現を逆手にとり、単なる発熱の患者でこの加算を算定する状況が散見されたのです。そこで、14年度改定では「準ずる状態」の患者については点数が半減されました。
ただし「脳構築でt-PA(血栓溶解療法)を施行した患者」や「狭心症・慢性虚血性心疾患でPCIや心臓カテーテル検査の施行や治療をした患者」も、入院後7日以内の出来高算定点数が高いことから、宮崎課長は「加算1で評価する」ことを提案しています。具体的には「緊急手術を必要とする状態」に準ずるものとして扱う見込です。
この提案に対し、診療側の委員からは「当然の見直しだ」とする声が多く出され、支払側の幸野委員も了承しており、次期改定のパーツがまた一つ揃った格好です。
なお幸野委員は「診療報酬改定の結果検証調査では、比較的軽症と考えられる帯状疱疹や虫垂炎などで加算2を算定しているケースも見られた(関連記事はこちら)」と指摘し、更なる適正化などを検討すべきとの考えを強調しています。
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