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診療報酬改定セミナー2024 看護必要度シミュレーションリリース

費用対効果評価の結果は医薬品・医療機器の再算定に活用―費用対効果評価専門部会

2015.8.27.(木)

 2016年度から始まる費用対効果評価では、保険収載後一定期間の経った医薬品や医療機器を対象とし、評価結果に基づく再算定を行う―。このような内容を盛り込んだ中間報告が、26日に開かれた中央社会保険医療協議会の費用対効果評価専門部会でまとまりました。

 厚生労働省は今後、▽対象品目の選定基準▽評価に当たってのガイドライン▽再算定の具体的な方法―などを詰め、16年度から試行実施を行う考えです。

8月26日に開催された、「第28回 中央社会保険医療協議会 費用対効果評価専門部会」

8月26日に開催された、「第28回 中央社会保険医療協議会 費用対効果評価専門部会」

企業に費用対効果評価のデータ提出求める

 費用対効果評価は、医療技術や医薬品などを保険収載する際、あるいは保険償還価格を設定する際に、「類似のほかの医療技術や医薬品と比べて、それが適当かどうか」を判断する仕組みです。

 中医協の費用対効果評価専門部会で、イギリスやドイツの制度を参考に検討を進めており、26日にまとめられた中間報告では制度の概要がかなり明確になっています。評価の流れは、次のようなフローで進められます。

(1)費用対効果評価の対象品目の選定基準を設定し、これに基づいて対象品目を選定する

  ↓

(2)企業(製薬メーカーや医療機器メーカー)が、対象品目に関する費用と効果のデータを提出する

  ↓

(3)提出データについて、公的な専門組織が費用と効果の再分析を行う

  ↓

(4)中医協に設置される費用対効果評価専門組織(仮称)において、科学的、倫理的な妥当性や社会的影響などに関する総合的な評価(アプレイザル)を行う

  ↓

(5)費用対効果評価結果を踏まえて、医薬品や医療機器の保険償還価格などに反映させる

 それぞれについて少し詳しく見ていきましょう。

より適切な指標などあれば、QALY提出は必須ではない

 (1)の対象品目選定基準は、これから検討されますが、厚労省保険局医療課の佐々木健企画官は次のような要件を例示しています。

▽補正加算の要件を満たすものや、原価計算方式で算定されるもの

▽製品単価や売上高が一定以上のもの

 ただし、希少疾患の治療に用いる医薬品・医療機器や、代替性のないものは対象から除外される見込みです。

 (2)の「企業による分析」や(3)の「専門組織による再分析」に当たっては、評価結果の信頼性を担保するために「標準的なガイドライン」が提示されます。具体的には、▽費用には何を含めるのか▽効果はどのように測定するのか▽データはどの範囲から収集するのか―などが詳細に定められることになる見込みです。

 このうち「効果」にはついては、イギリスで用いられているQALY(質調整生存年、健康状態を加味した生存年数)を基本としつつ、疾患や医薬品などの特性などに応じて、その他の指標も用いることが可能となります。佐々木企画官は「QALYで対応できない場合や、より適切な指標が存在する場合もある」と述べ、「QALY提出は必須ではない」ことを明確にしました。

1QALYは、例えば「完全な健康状態が1年間継続する」と考えられる。また、「健康状態が0.5の状態が2年間継続する」場合も1QALYとなる

1QALYは、例えば「完全な健康状態が1年間継続する」と考えられる。また、「健康状態が0.5の状態が2年間継続する」場合も1QALYとなる

 (4)のアプレイザルについては、診療側の鈴木邦彦委員(日本医師会副会長)から「日本語にすべき」との指摘があり、同じく診療側の万代恭嗣委員(日本病院会常任理事)は「総合的な評価としてはどうか」と提案しています。今後、厚労省と福田敬参考人(国立保健医療科学院統括研究官)らで相談していくことになりました。

費用対効果評価の一連の流れ

費用対効果評価の一連の流れ

評価結果は再算定に活用

 注目される(5)の「費用対効果評価結果の活用方法」については、「保険償還価格への反映」とすることで決着しています。

 ただし、企業側のデータ準備や専門組織による再分析やアプレイザルにかかる時間を考慮すると、新薬や新医療機器への価格反映は、現行制度上は難しいことが分かります。

 そこで中間報告では、「保険収載の後、一定期間後(収載後1回目から数回目の改定時)に再算定を行う」ことを提案しています。具体的な再算定の方法は今後の検討を待つ必要があります。

 また、▽新薬価格などへの反映がどのように可能か▽費用対効果が良いのか悪いのかを判断する目安(閾値)をどう設定するか―などが引き続き検討されます。

試行的導入に当たっては、評価結果は既収載品の「再算定」に用いる

試行的導入に当たっては、評価結果は既収載品の「再算定」に用いる

 ところで結果の活用方法には、「保険償還の可否」もあります。厚労省が当初用意した「中間報告案」には「保険償還の可否」についても、今後検討する旨の記述がありました。これに対し、鈴木委員をはじめとする診療側委員だけでなく、支払側の白川修二委員(健康保険組合連合会)からも「患者のアクセスを阻害する。好ましくない」といった指摘が相次ぎ、取り下げられました。

15年中に選定基準やガイドラインを策定

 専門部会では、今後、▽選定基準の具体的な要件▽ガイドライン▽費用対効果評価専門組織(仮称)の構成員▽アプレイザルで考慮すべき要素▽再算定の具体的な方法▽新規収載時に求めるデータ提出に係る取り組み―について検討を進めます。

 また年明けからは中医協総会で診療報酬点数改定の詰めの議論が行われるため、これらは15年中に結論が出される見込みです。

 その後、対象品目の具体的な選定などを行った上で、16年度から費用対効果評価の試行導入となります。

 また試行導入結果を踏まえ、将来の本格的導入に向けた検討も継続されます。

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