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診療報酬改定セミナー2024 新制度シミュレーションリリース

医療保険改革案、政府与党で年末の予算編成に向けて方向性探る―社保審・医療保険部会

2016.12.13.(火)

 高額療養費の見直しや、入院患者における光熱水費負担など、次期医療保険制度改革の方向は、社会保障審議会・医療保険部会の意見を全体として踏まえた上で、年末の予算編成過程の中で政府与党で検討する―。

 8日に開かれた社会保障審議会・医療保険部会では、こういった考えが厚生労働省から提示されました。

高額療養費や療養病棟入院患者への居住費負担など、どう決着するのか

 2017年の次期医療保険制度改革に向けて、医療保険部会では、(1)高額療養費の見直し(2)後期高齢者の保険料軽減特例の見直し(3)入院時の光熱水費負担の見直し(4)金融資産などの考慮(5)かかりつけ医以外を受診した場合の外来定額負担(6)スイッチOTC化された医療用医薬品の保険償還の在り方(7)子ども医療費助成の場合の国保減額調整措置の見直し(8)任意継続被保険者制度の在り方―などについて議論を行ってきました。

 11月30日の前回会合では、各項目について厚労省から見直し案が提示され、それをもとに意見交換が行われています。例えば、(1)の高額療養費について、厚労省からは次の2案が提示され、委員の意見は「能力に応じた負担を求めるべき」として案1を推す意見と、「住民税非課税世帯に負担増を課すべきではない」として案2を推す意見に分かれました。

【案1】現役並み所得世帯の月額自己負担上限を69歳以下と同じに設定する。一般所得区分の外来特例を廃止し、月額自己負担上限を69歳以下と同じに設定する。住民税非課税世帯で外来特例を維持するが、月額自己負担上限を引き上げる

【案2】現役並み所得世帯の月額自己負担上限を69歳以下と同じに設定する。一般所得区分の外来特例は維持するが、月額自己負担上限を引き上げる。住民税非課税世帯で現状を維持する

2017年における、70歳以上高齢者の高額療養費見直し案2点、「住民税非課税世帯で負担増を行うか、どうか」が大きなポイントとなる

2017年における、70歳以上高齢者の高額療養費見直し案2点、「住民税非課税世帯で負担増を行うか、どうか」が大きなポイントとなる

 

 厚労省は委員のこのような意見を整理した「議論の整理」(案)を8日の医療保険部会に提示。そこでは委員の細かな意見ももれなく拾っています。

 まず(1)の高額療養費については、▼70歳以上の現役並み所得者について、69歳以下と同様に細分化して、同様の負担限度額を設定する▼70歳以上の一般区分については、69歳以下と負担限度額を引き上げる(当然、多数回該当も設置)▼低所得者(住民税非課税世帯)の負担限度額は据え置く―ことには合意が得られたことを確認。これは上記の案1・案2に共通する見直し内容です。

 一方、案1と案2で異なる「外来特例」については、▼現役並み所得者については廃止▼一般区分については維持した上で上限額を引き上げる▼低所得者については維持し、かつ上限額も据え置く―という案2を推す声が多かったとしています。

 この点について、白川修二委員(健康保険組合連合会副会長)や藤井隆太委員(日本商工会議所社会保障専門委員会委員)らは、「案2に沿って強引にまとめている印象がある。案1を支持する委員も降り、少なくとも『外来特例廃止を求める意見もあった』ことは記載すべきである」と強く求めました。

 

 また(3)の入院時の光熱水費負担については、65歳以上で療養病床に入院する患者のうち、▼医療区分1については現行の1日当たり 320 円から370 円に引き上げる(2017年10月より)▼医療区分2と3についは、まず 1日当たり200 円(2017年10月より)の負担を新たに求め、その後370 円に引き上げる(2018年4月より)―ことを支持する意見が多かったとしています。

 この点について新谷信幸委員(日本労働組合総連合会副事務局長)や松原謙二委員(日本医師会副会長)は、「(後者の)医療区分2・3の患者に光熱水費負担を求めるべきではないとする委員も複数いた。反対意見も明記すべきである」と要望しています。

医療療養に入院する65歳以上・医療区分1の患者について光熱水費負担を引き上げるとともに、65歳以上・医療区分2・3の患者にも新たに光熱水費負担を求めることが提案されている

医療療養に入院する65歳以上・医療区分1の患者について光熱水費負担を引き上げるとともに、65歳以上・医療区分2・3の患者にも新たに光熱水費負担を求めることが提案されている

 

 (7)の子ども医療費を助成する市町村における、国保への国庫負担減額措置については、「2018年度から減額措置を見直す」方針を確認。具体的には「未就学児までを対象として医療費助成を行っている」市町村が対象で、さらに何らかの「一部負担金」「所得制限」を設けている場合に限定すべきとの意見もあったことを記載しています。

 この点については、渡邊廣吉委員(全国町村会行政委員会委員、新潟県聖籠町長)や山本圭子参考人(栃木県保健福祉部保健医療監、福田富一委員:全国知事会社会保障常任委員会委員長・栃木県知事の代理)は、「少子化対策に逆行する」として対象年齢や所得などによる縛りを設けず「一律に減額調整を廃止する」よう改めて求めています。

 

 次期医療保険制度改革に向けた医療保険部会の議論は一旦終了し、今後は、政府与党に議論の場が移ります。医療保険部会における意見ももちろん参考にされますが、「高齢者に対する負担増」について与党議員は極めて慎重な姿勢をとっており、どのような形で決着するのか注目が集まります。

  
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