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薬剤師など多職種の病棟配置、看護師と併せて入院基本料の中で評価せよ―日慢協・武久会長

2017.5.12.(金)

 薬剤師などのコ・メディカルが常駐している病棟では、これを看護師とともに入院基本料の中で評価すべきである。現行の7対1や10対1で50名の看護師配置が必要となる場合、50名全員を看護師とするよりも、40名を看護師、10名分を薬剤師などのコ・メディカルとしたほうが、よりレベルの高いチーム医療が提供できる—。

 日本慢性期医療協会の武久洋三会長は、11日の定例記者会見で、このような要望を2018年度の次期診療報酬改定に向けて行っていく考えを示しました。

5月11日、定例記者会見に臨んだ日本慢性期医療協会の武久洋三会長

5月11日、定例記者会見に臨んだ日本慢性期医療協会の武久洋三会長

コ・メディカル配置を診療報酬で評価することで、病棟への配置が進む

 現在、7対1や10対1などの一般病棟入院基本料・特定機能病院入院基本料、20対1や25対1の療養病棟入院基本料は、「看護配置」をベースに点数設定が行われています。7対1や10対1とは、看護配置を意味することからも明らかです(関連記事はこちらこちらこちら)。

 しかし武久会長は、「病棟には医師・看護師以外にも、▼薬剤師▼リハビリ専門職▼社会福祉士▼管理栄養士▼臨床検査技師—など、さまざまなコ・メディカルが勤務し、専門機能を果たしている。こうした多職種によるチーム医療提供が当たり前になっているにも関わらず、入院基本料では看護配置しか評価されないのはおかしい」と述べ、2018年度の次期診療報酬改定での見直しが必要と訴えました(関連記事はこちら)。

 具体的には、例えば薬剤師が病棟に常駐している場合には、これを看護師●名分とカウントし、7対1や10対1の中に組み込む(7対1や10対1を看護師で満たした上でのコ・メディカル配置の評価ではない)べきとの考えを明確にしています。武久会長は、「50名の看護配置必要な7対1や10対1病棟であれば、50名すべてを看護師とするよりも、40名を看護師、10名分をコ・メディカルとしたほうが、より良い医療が提供できる」とも説明しています。

 確かに投薬などの際には薬剤の専門家である薬剤師が、リハビリテーションの際にはその専門家である理学療法士や作業療法士が病棟に配置されていれば、看護の専門家である看護師も安心して看護に専念でき、また各専門職がそれぞれの領域で専門性を発揮しながらチームを組むことで、医療の質が上がるものと期待されます。

 しかし、多職種を配置したいと病院側が考えても、診療報酬などで評価されなければ(現在は、加算などで一部職種の業務が評価されるのみ、例えば病棟薬剤業務実施加算など)、経営面を考慮し躊躇してしまうでしょう。武久会長は「診療報酬で病棟におけるコ・メディカル配置を評価することで、多職種の雇用につながり、患者によい医療が提供される。専門的なチーム医療が必要となる高度急性期病院ほど、コ・メディカル配置を評価すべき」と述べ、2018年度の次期診療報酬改定での導入を強く求めていく考えです。

高齢者の増加に備え、専門医の50%以上を「総合診療専門医」とせよ

 また、11日の定例記者会見で武久会長は「専門医の50%以上を総合診療専門医とすべき」との提言も行いました。

 日慢協の調査によれば、慢性期病棟に転院してきた時点、つまり急性期病棟を退院した時点で、▼腎機能低下(BUN20.1以上)患者が39.65%▼低ナトリウム(Na136未満)患者が29.64%▼低栄養(ALB3.8未満)患者が59.7%―など、相当数の患者が脱水や低栄養状態に陥っていることが明らかになりました(関連記事はこちら)。

慢性期病院に入院する患者について、入院時の検査値を見ると、相当程度の患者が低栄養・脱水などの状態に陥っている

慢性期病院に入院する患者について、入院時の検査値を見ると、相当程度の患者が低栄養・脱水などの状態に陥っている

 

 武久会長は、「急性期病棟では、臓器別専門医が専門の臓器治療しか診ていない」ことが原因の一つではないかと推測。今後、2025年に向けて高齢入院患者がますます増加していく中では、「総合診療専門医を急性期病棟にも数多く配置することが必要。今後の新専門医制度においては、「総合診療専門医は専門医の50%以上が必要である」との考えを示しました(関連記事はこちらこちら)。

 また総合診療専門医となるための研修では、大学病院を初めとする基幹病院だけでは十分な症例を診ることができないとし、▼一定レベル以上のpost acute病院(地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟の上位4分の1などを、国や日慢協が指定)▼高度慢性期病院(後期高齢の慢性期患者であっても適切な治療を行い、在宅復帰を行う慢性期病院)―で1年間の研修を義務付けることなども提案しています。

 

 なお日慢協では2年前から「総合診療医を養成する講座」を開き、独自認定しています。武久会長はこれを拡大していく考えも示すとともに、新専門医制度の中で「あらゆる臓器の治療を行える総合診療専門医のほうが、臓器別専門医よりも、高度な研修が必要であり、『上位』に位置付けられるべき」と強調しました。

 
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