25対1医療療養の5割超が20対1医療療養へ、介護療養の5割弱が介護医療院Iの1へ―日慢協調査
2018.3.8.(木)
25対1医療療養のうちベッド数ベースで54.1%が「20対1医療療養への移行」を希望し、うち82.9%は「2018年度中に移行する」意向を持っている。また介護療養のうちベッド数ベースで46.5%が「介護医療院I(サービス費I)への転換」を希望し、うち84.6%は「3年以内(2020年度まで)に転換する」意向を持っている―。
日本慢性期医療協会の武久洋三会長と池端幸彦副会長は3月8日の定例記者会見で、このような調査結果を発表しました。
武久会長・池端副会長は「日慢協の試算では、『介護老人保健施設相当の介護医療院IIへの転換で、最も収益が改善する』との結果が出たが、『まず現行(機能強化型介護療養)並みの介護医療院Iへ転換し、後に今後を検討しよう』と考える施設が多いのではないか」と見通しています(関連記事はこちら)。
25対1医療療養の半数、2022年度改定の前までに20対1医療療養へ移行したい考え
2018年度の診療報酬・介護報酬改定の答申が行われ、「医療療養病棟」と「介護医療院」の大枠の姿が明らかになりました。
医療療養については、▼看護配置20対1以上を基本とし、医療区分2・3の患者割合で段階的評価を行う(80%以上の療養病棟入院基本料I:800-1810点、50%以上の療養病棟入院基本料II:735-1745点)▼看護配置25対1以上(20対1を満たさない)、あるいは医療区分2・3患者割合が50%に満たない医療療養は経過措置としてのみ存続できる―ことになりました(関連記事はこちら)。
また、介護医療院は、機能強化型介護療養並みの人員配置等が求められる【介護医療院I型】(▼機能強化A相当のサービス費I:803-1332単位▼機能強化B相当のサービス費II:791-1312単位▼機能強化B相当でやや介護配置が薄いサービス費III:775-1296単位)と、転換型老健施設並みの人員配置等が求められる【介護医療院II型】(▼介護配置4対1のサービス費I:758-1221単位▼介護配置5対1のサービス費II:742-1205単位▼介護配置6対1のサービス費III:731-1194単位)が設定されました(関連記事はこちら)。
現在の25対1医療療養(療養病棟入院基本料2)や介護療養病床は、これから一定期間のうちに、例えば「看護配置の強化や重症患者の獲得などをし、20対1医療療養(新たな療養病棟入院基本料IまたはII)を目指す」のか、あるいは「生活環境の整備などを行い、介護医療院を目指す」のかを決めなければいけません(介護療養では「6年間」、25対1医療療養では「まず2年間」(今後の改定で延長を検討)の経過措置が設定された)。
日慢協では、2018年度の改定内容が明らかになった今年(2018年)2月に、会員のうち「25対1医療療養」あるいは「介護療養」を持つ施設を対象に「転換・移行の意向」調査を実施。今般、その結果が公表されました。調査対象のおよそ半数と目される224病院が回答し、▼25対1医療療養を持つ施設:93病院(25対1医療療養の病床数が6797床)▼介護療養を持つ施設:163病院(介護療養の病床数が1万2754床)—という構成です(両者を持つ病院は別々にカウントされている)。
まず前者の「25対1医療療養」の転換・移行意向を見てみましょう。
93病院のうち、62病院が「20対1医療療養(療養病棟入院基本料IまたはII)への移行」を希望しています。対象病床数は3677床で、25対1医療療養のうち、ベッド数ベースで「54.1%が20対1医療療養へ移行する」考えであることが分かります。
移行予定時期を見ると、「20対1医療療養へ移行」意向のある3677床のうち、82.9%・3047床は「2018年度中に移行する」考えで、▼4.4%・163床は「2019年度移行希望」▼3.6%・131床は「2020年度移行希望」▼1.5%・56床が「2021年度移行希望」—という状況です。25対1医療療養全体で考えると、「2018年度中に44.8%が、次期診療報酬改定の前(2019年度)までに47.2%が、次々期診療報酬改定の前(2021年度)までに50.0%が、20対1医療療養に移行する」考えを持っている計算になります。
また93病院のうち、介護医療院I型への転換希望は9病院・420床(25対1医療療養全体の6.2%)、介護医療院II型への転換希望は6病院・207床(同3.0%)にとどまっています。
なお、27病院・2187床(同32.2%)は「未定」と回答するにとどめています。
介護療養の44%、6年間の経過措置中に介護医療院I型へ転換したい考え
次に「介護療養」の転換意向を見てみましょう。
163病院のうち、68病院が「介護医療院I型のサービス費I」への転換を希望しています。
対象病床数は5926床で、介護療養のうち、ベッド数ベースで「46.5%が介護医療院I型のサービス費Iへ転換する」考えであることが分かります。
転換予定時期を見ると、「介護医療院I型のサービス費Iへ転換」意向のある5926床のうち、47.8%・2834床は「2018年度中に転換する」考えで、▼17.5%・1036床は「2019年度転換希望」▼19.3%・1145床は「2020年度転換希望」▼7.1%・418床が「2021年度転換希望」▼1.7%・100床が「2022年度転換希望」▼1.9%・115床が「2023年度転換希望」—という状況です。介護療養全体で考えると、「2018年度中に22.2%が、次期介護報酬改定の前(2020年度)までに39.3%が、次々期介護報酬改定の改定前(2023年度)までに44.3%が、介護医療院I型のサービス費Iに転換する」考えを持っている計算になります。
また163病院のうち、その他の介護医療院I型(サービス費IIまたはIII)への転換希望は11病院・877床(介護療養全体の6.9%)、介護医療院II型・サービス費Iへの転換希望は4病院・111床(同0.9%)にとどまり、逆に20対1医療療養への転換希望が32病院・1019床(同8.0%)となっています。
なお、66病院・4256床(同33.4%)は「未定」と回答するにとどめています。
調査時点では解釈通知等が出ておらず、また、経過措置等が設定されているために25対1医療療養・介護療養のいずれでも「3分の1程度は、様子見をしている」状況と言えるでしょう。
ところで、日慢協では昨年(2017年)2月に、人員配置等について仮定を置いた上で「介護医療院へ転換した場合の収益」を試算しています。そこでは「療養強化型並みの介護医療院I型へ転換するよりも、転換老健並みの介護医療院II型へ転換したほうが、収益性が高くなる」との結果が出ていました(関連記事はこちら)。人員配置や単位数設定は、仮定と実際(答申内容)とでそれほど大きく変わらないため、武久会長と池端副会長は、「まず、現在と同じ人員配置等である介護医療院I型のサービス費Iに転換し、そこから将来を検討しようと考えた病院が多いのではないか」と推測します。なお武久会長は、例えば「複数病棟のうち、一部に機能(人員)を寄せて強化し20対1医療療養とする、他方を人員配置が薄くてよい介護医療院II型に転換する」といったチャレンジングな転換の道もあるとコメントしています。
今後、解釈通知や疑義解釈(Q&A)などを読み込む中で、「どういった転換・移行戦略がよりよい選択肢となるか」を各病院で考えていくこととなり、意向内容も変わっていく可能性があります。
なお、日慢協会員病院の中からは、「医療療養から介護医療院への転換を考えているが、保険者に渋られている」との報告がなされています。厚生労働省は「医療療養から介護医療院への転換にあたっては総量規制の対象とならない」旨の考えを示しており、転換は可能なはずです。しかし、医療療養から介護医療院への転換が小規模の町村で増えれば、「介護費の増大、介護保険料の急騰」につながってしまいます。武久会長は、こうした保険者の事情にも理解を示した上で、「現在、厚労省に見解を尋ねているが、明確な回答はまだ来ていない」と状況を説明しています。
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