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【18年度介護報酬改定答申・速報4】ケアマネに新加算設け、医療機関との連携を促進

2018.1.31.(水)

 メディ・ウォッチでは、ついに明らかになった2018年度介護報酬改定案をサービス類型ごとに紹介しています(関連記事はこちらこちらこちら)。本稿では、介護支援専門員(ケアマネジャー)による「居宅介護支援」を取り上げます。

1月26日に開催された「第158回 社会保障審議会 介護給付費分科会」で、2018年度介護報酬改定案が了承された

1月26日に開催された「第158回 社会保障審議会 介護給付費分科会」で、2018年度介護報酬改定案が了承された

 居宅介護支援については、次のような見直しが行われます。

(1)ケアマネジメントの質を高めるための要件などの厳格化と、それに伴う基本報酬引き上げ
(2)利用者が入退院した際の医療機関などとの連携を促す加算の新設・再編
(3)利用者が末期の悪性腫瘍である場合のケアプラン修正方法の簡素化

 それぞれ具体的にお伝えした後に、(2)に関して、介護支援事業所(ケアマネ事業所)の連携先となる医療機関側が知っておくべき情報をご紹介します。

管理者要件など厳しくし、基本報酬引き上げ

 (1)の「ケアマネジメントの質を高めるための要件厳格化」では、「ケアマネが実施しなければならない基本的な業務」が追加され、実施していない事業所には大幅な報酬減算などのペナルティが科されます。

 具体的には、ケアプラン作成時、ケアマネが利用者に「複数のサービス事業所を紹介するよう求めることもできます」「なぜこのサービス事業所を選んだのか理由を聞くこともできます」などと丁寧に説明することが義務付けられます。

 現在、ケアプランを作成する際などに、サービスを提供する事業者を集めて「サービス担当者会議」を開くといったルールを守らない事業所では、【運営基準減算】として基本報酬が50%減算されてしまいます。さらに、今般の見直しで「複数のサービス事業所を紹介するよう求めることもできます」といった説明義務を果たさない事業所についても、この減算が適用されます。【運営基準減算】が適用される状態が2か月以上続いた場合は基本報酬を算定できなくなり、ケアマネ事業所としての指定が取り消されることもあります。

 また、ケアマネ事業所の管理者要件(現行は「ケアマネであること」)が厳しくなり、2021年4月以降、研修を受けた「主任ケアマネジャー」に限定されます。

 ケアマネの基本業務が増えることや、管理者要件が厳しくなることを踏まえて、居宅介護支援の基本報酬は1%程度引き上げられます。なお、居宅介護支援の基本報酬は、ケアマネが担当する利用者数に応じて3区分で設定されており、具体的には次のように変わります。

【居宅介護支援(I)】(契約日が古い順に利用者39人目まで)
▼要介護1・2:1053単位/月(現在と比べて11単位・1.1%増)▼要介護3・4・5:1368単位/月(同15単位・1.1%増)

【居宅介護支援(II)】(同40-59人目)
▼要介護1・2:527単位/月(同6単位・1.2%増)▼要介護3・4・5:684単位/月(同7単位・1.0%増)

【居宅介護支援(III)】(同60人目以降)
▼要介護1・要介護2:316単位/月(同3単位・1.0%増)▼要介護3・4・5:410単位/月(同4単位・1.0%増)

 また、「複数のサービス事業所の紹介を求めることができる」などと利用者に説明する義務をケアマネに課したことなどを踏まえて、「特定の事業者のサービスに偏ったケアプランを作成する」事業所へのペナルティである【特定事業所集中減算】(基本報酬を月200単位減算)について、通所リハビリテーションや訪問看護を適用対象から除外します。改定後も減算が適用されるのは、▼訪問介護▼通所介護▼地域密着型通所介護▼福祉用具貸与―の4サービスのみです。

利用者入院時の情報提供はスピード、退院時の情報収集はカンファレンス参加を重視

 (2)の「利用者が入退院した際の医療機関などとの連携を促す加算の新設・再編」では、【入院時情報連携加算】や【退院・退所加算】が再編されます。

利用者の入院時、医療機関への早期(入院後3日以内)の情報提供が重視される

利用者の入院時、医療機関への早期(入院後3日以内)の情報提供が重視される

 利用者が急性増悪を起こすなどして入院した際に、利用者の情報を入院医療機関に提供すると算定できる【入院時情報連携加算】は現在、「情報提供方法」に応じた2区分の評価となっています(医療機関を訪問して情報提供した場合は月200単位、それ以外の方法の場合は月100単位)。2018年度介護報酬改定では次のように、「情報提供のスピード」に応じた評価へと再編されます。

▼入院後3日以内に情報提供した場合は【入院時情報連携加算(I)】(月200単位)
▼入院後7日以内に情報提供した場合は【入院時情報連携加算(II)】(月100単位)

 例えば、「利用者が入院して2日目に、FAXで情報提供した」ケースでは、現在100単位が加算されますが、改定後は200単位になります。逆に、「ケアマネが医療機関を訪問して情報提供したが、それは入院5日目であった」場合には、現在200単位加算されますが、100単位へと下がります。

退院・退所加算が5区分に再編され、「医療機関などが開くカンファレンスへの参加」が重視される

退院・退所加算が5区分に再編され、「医療機関などが開くカンファレンスへの参加」が重視される

 また、利用者が急性増悪を起こして入院するか、介護老人保健施設(老健)などに入所した後、在宅復帰するに当たっては、ケアマネが利用者の「退院・退所後の状態」を把握し、それに合った居宅サービスを用意する必要があります。この「利用者の情報収集」などが現在、【退院・退所加算】(300単位/回)で評価されています。

 2018年度介護報酬改定では、▼連携回数(利用者の状態を把握するために、医療機関などの職員と何回やり取りしたか)▼やり取りの方法(多職種が参加する「退院時カンファレンス」などに参加したか、もしくはそれ以外の方法(例えば面談)か)―の2つの視点に着目した5区分の加算へと再編されます。具体的には次のとおりです。

▼退院・退所加算(I)イ(450単位/回):▽連携回数1回▽カンファレンスへの参加なし
▼退院・退所加算(I)ロ(600単位/回);▽連携回数1回▽カンファレンスへの参加あり
▼退院・退所加算(II)イ(600単位/回):▽連携回数2回以上▽カンファレンスへの参加なし
▼退院・退所加算(II)ロ(750単位/回):▽連携回数2回▽カンファレンスへの参加あり(1回以上)
▼退院・退所加算(III)(900単位/回):▽連携回数3回以上▽カンファレンスへの参加あり(1回以上)

 例えば、「ケアマネが、医療機関開催の退院時カンファレンスに参加して利用者の情報を入手したが、そのとき以外は医療機関から情報提供を受けていない」ような場合、現在は300単位しか加算されませんが、改定後は【退院・退所加算(I)ロ】として600単位加算されます。

利用者退院時の連携回数「35回以上」などの事業所に新加算

新設する【特定事業所加算(IV)】により、医療機関などと密接に連携する事業所が高く評価される

新設する【特定事業所加算(IV)】により、医療機関などと密接に連携する事業所が高く評価される

 (2)の「利用者が入退院した際の医療機関などとの連携を促す加算」として、【特定事業所加算(IV)】(月125単位)が新設されます。これにより、質の高いケアマネジメントを提供する事業所の評価である【特定事業所加算】が、次の4区分へと改められます。

▼【特定事業所加算(I)】月500単位:単位数は変わらず、要件は後述のとおり厳格化
▼【特定事業所加算(II)】月400単位:単位数は変わらず、要件は後述のとおり厳格化
▼【特定事業所加算(III)】月300単位:単位数は変わらず、要件は後述のとおり厳格化
▼【特定事業所加算(IV)】月125単位:新設。(I)から(II)までのうち1つと併算定

 例えば、【特定事業所加算(I)】と【特定事業所加算(IV)】の要件をどちらも満たす事業所では、月625単位(500単位+125単位)が加算されます。

 新設される【特定事業所加算(IV)】の算定要件は、▼上述した【退院・退所加算】の算定要件となる、医療機関などとの連携回数が年35回以上▼【ターミナルケアマネジメント加算】(2018年度改定で新設。詳しくは後述)の算定回数が年5回以上―です。これら1年間の実績は、「前々年度3月から前年度2月まで」の期間で算出し、例えば「今年(2018年)3月から来年(2019年)2月まで」の期間に実績を満たした事業所では、2019年4月から1年間、【特定事業所加算(IV)】を算定できます。

 なお、【特定事業所加算(I)】、【特定事業所加算(II)】、【特定事業所加算(III)】の単位数は改定後維持されますが、算定要件は次の通り厳格化されます。

▼3区分とも「他の法人が運営するケアマネ事業所と共同で、事例検討会や研修会を実施する」が追加される
▼現在は【特定事業所加算(I)】のみの算定要件になっている「地域包括支援センターなどが実施する事例検討会などへの参加」が、【特定事業所加算(II)】と【特定事業所加算(III)】にも追加される

末期の悪性腫瘍利用者の状態変化に応じたケアプラン修正に新加算

 (3)の「利用者が末期の悪性腫瘍である場合のケアプラン修正方法の簡素化」は、利用者が末期の悪性腫瘍である場合、状態の急変に伴って、必要な訪問介護や訪問看護の内容も大きく変わることを踏まえたものです。現行制度では、ケアプランを「急変後の状態に適した内容」に変更する際に、訪問介護事業所や訪問看護ステーションの担当者を集めて「サービス担当者会議」を開くことが求められ、「会議開催を省略できないか」という要望が現場から上がっていました。

 そこで2018年度改定では、利用者が末期の悪性腫瘍で「1か月以内に急変する」と医師が判断した場合に会議開催を省略し、利用者の状態変化を踏まえてケアプランの内容を修正することが認められます。

利用者が末期の悪性腫瘍である場合に、状態変化に合わせて、居宅サービスの内容をタイミングよく修正しやすいように制度が改められる

利用者が末期の悪性腫瘍である場合に、状態変化に合わせて、居宅サービスの内容をタイミングよく修正しやすいように制度が改められる

 また、末期の悪性腫瘍である利用者を担当し、その状態変化を確認してケアプランの内容を修正する事業所の評価として、【ターミナルケアマネジメント加算】(月400単位)が新設されます。算定要件は次の4つです。

(1)末期の悪性腫瘍である利用者本人・家族の同意を得た上で、利用者宅を、通常より高い頻度で訪問する(死亡日と死亡日前14日以内に、2日以上在宅訪問していた実績が必要)
(2)医師の助言を受けつつ、利用者の状態などを把握し、必要に応じてケアプランの内容を修正する
(3)訪問時に得た利用者の情報(心身の状況など)を記録し、主治医やサービス事業者とも共有する
(4)利用者からの連絡を24時間受け付け、必要に応じてケアマネジメントを提供可能な体制である

 上述したとおり、【ターミナルケアマネジメント加算】を年5回以上算定した実績が【特定事業所加算(IV)】の算定要件となります。【特定事業所加算(I)】などを取得している事業所では、末期の悪性腫瘍である利用者に適切に対応できる体制を整えるべきと言えます。

ケアマネと連携し、2000点加算算定しやすく

 2018年度介護報酬改定での居宅介護支援の評価見直しによって、医療機関は「要介護者への退院支援に必要な情報」が入手しやすくなります。

 具体的には、(2)の【入院時情報連携加算】の見直しによって、ケアマネ側は「利用者の入院後3日以内(従来は7日以内)に利用者の情報を医療機関に提供しよう」と考えることになります。ただし、ケアマネが「利用者が入院した」ことを知らなければ、情報提供できません。医療機関側では高齢患者が入院した際、退院支援担当者らが患者本人や家族から、担当ケアマネを確認し、入院したことをケアマネに伝えることで、より密接な連携が可能になりそうです。

 また【退院・退所加算】の見直しによって、「医療機関が開催する退院時カンファレンス」へのケアマネ参加が増加します。医療機関にとっては、「要介護者の退院時カンファレンス」の機会を利用することで、多職種による退院前の患者指導を評価する診療報酬上の加算(【退院時共同指導料2】の加算、2000点)の算定要件(退院後の在宅療養を支えるケアマネら3者以上と共同して「退院後の療養に必要な説明や指導」を患者に行うこと)をクリアしやすくなります。つまり退院時の連携を強めることには、ケアマネ事業所にとっても医療機関にとっても経営的にメリットがあります(関連記事はこちら)。やはり医療機関では同時改定を機に、ケアマネとの連携強化を検討すべきだと言えます。

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