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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

介護サービス利用者の栄養管理を評価―第153回介護給付費分科会(4)

2017.12.6.(水)

 低栄養の入所者に重点的な栄養管理を行う介護保険施設を評価する。また、通所系サービスや居住系サービスの事業所が利用者の栄養状態をスクリーニングし、その結果を介護支援専門員(ケアマネ)に伝えることを評価する―。

 11月29日の社会保障審議会・介護給付費分科会では、厚生労働省がこうした方針も示しました(関連記事はこちらこちらこちら)。BMIや体重減少率などから「低栄養状態のリスクのレベル」が高いと判断された入所者は、入院や死亡のリスクも有意に高いことが分かっています。重点的な栄養管理を評価することで、入所者の栄養状態改善につなげる考えです。

11月29日に開催された、「第153回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

11月29日に開催された、「第153回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

栄養マネジメントの新評価は、定期的なミールラウンドなどが要件

 介護保険施設には、それぞれ【栄養マネジメント加算】(1日につき14単位)が設けられ、常勤管理栄養士による「栄養ケア・マネジメント」が評価されています。具体的には、▼低栄養状態のリスクを入所時に把握▼解決すべき課題を把握▼多職種が協働して栄養ケア計画を作成し、入所者・家族の同意を取得▼栄養ケア計画に基づく栄養管理を実施し、問題があれば計画を修正▼定期的に栄養状態をモニタリング―することが算定要件です。

 この加算について厚労省は、(1)常勤管理栄養士の兼務に関する規定を見直す(2)低栄養リスクが高い入所者への重点的な栄養管理を新たに評価する―見直し案を示しています。

 (1)の常勤管理栄養士の兼務に関する規定は現在、▼介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)と、同一敷地内の地域密着型介護老人福祉施設▼本体施設と、サテライト型施設―に限って認められています。

 しかし、例えば「特別養護老人ホーム(入所者120人)と地域密着型介護老人福祉施設(入所者29人)が併設されている」ケースでは常勤管理栄養士が1人でよいのに、「同規模の特別養護老人ホーム(入所者50人)が2施設併設されている」ケースでは兼務が認められず、計2人以上の常勤管理栄養士の配置が求められます。

 後者のケースで、合計の入所者数が少ないのに常勤管理栄養士2人以上の配置を求めるのは効率的でないと考えられることから、厚労省は、「当該介護保険施設と同一敷地内に併設する介護保険施設」はすべて、1施設まで兼務を認めてはどうかと提案しています。

 (2)の見直し案は、「栄養ケア・マネジメント」の中で、低栄養リスクが高いことが明らかになった入所者に対する重点的な栄養管理を、新たに評価するものです。具体的には、通常の「栄養ケア・マネジメント」に加えて、「定期的な食事の観察(ミールラウンド)」や、「栄養状態、嗜好等を踏まえた栄養・食事調整」なども算定要件になる見込みです。

 低栄養リスクが高い入所者への重点的な栄養管理を評価する方向性に対しては、複数の委員が賛意を示しましたが、常勤管理栄養士の兼務に関しては、「低栄養リスクが高い入所者らの管理に手が回るのか」と疑問視する声も上がっています。

施設・医療機関の“管管連携”を推進

 厚労省は、介護保険施設の入所者がいったん入院し、再入所した際に、施設の管理栄養士と病院などの管理栄養士が連携することも評価する方針を示しています。

 この評価の対象となるのは、「入所者が入院し、施設入所時とは大きく異なる栄養管理が必要となった場合」で、例えば、経管栄養や嚥下調整食を新規導入するケースが想定されます。

 現状では、栄養管理面の問題(高度な栄養管理に対応できない)が一因となって、施設が再入所の受け入れを断念するケースもあることから、厚労省は、▼施設の管理栄養士が、当該医療機関での栄養指導に同席▼当該医療機関の管理栄養士と相談の上、再入所後の栄養管理に関する計画の原案を作成―した場合、再入所時に評価するとしています。

療養食加算を「1食単位」に

 また厚労省は、【療養食加算】(医師の食事箋に基づく糖尿病食などの提供への評価)の報酬体系を、「1日単位」から「1食単位(1日3食まで)」に改めてはどうかと提案しています。

 診療報酬の同様の評価(特別食加算)は、2006年度改定で「1日350円」から「1食76円」(3食なら228円)に見直されました。介護報酬の【療養食加算】は現在、「1日18単位」(短期入所生活介護などは23単位)ですが、「1食6単位」よりも低く設定されるか注目すべきです。

 ところで、食費や居住費の具体的な金額は、利用者と施設が契約で決めることが原則ですが、低所得者に対しては、自己負担の上限額を設けた上で「基準費用額」(食費・居住費の「標準的な費用の額」)との差額を保険給付で補う仕組みになっています(補足給付)。

 食費の「基準費用額」に対しては、介護給付費分科会でこれまでに、「物価高騰により増額が必要だ」などと見直しを求める声が上がっていました。11月29日にも、「食事の質を上げる方向があるのに、この金額設定が適切か検証すべき」(石本淳也委員:日本介護福祉士会会長)、「食材の調達に苦労している」(瀬戸雅嗣委員:全国老人福祉施設協議会理事・統括幹事)といった意見が出ました。

 厚労省は、「基準費用額」を来年度(2018年度)の介護報酬改定では維持する方針を示していますが、今後の検討課題となりそうです。

低栄養の利用者をスクリーニングし、情報を医師までつなぐ

 厚労省は、通所系サービスなどでの栄養ケアに関する具体案も示しています。1つ目は、通所介護・通所リハビリテーションの【栄養改善加算】(1回につき150単位)の見直しで、外部の管理栄養士と連携して、▼栄養ケア計画の作成▼計画の進捗状況の定期的な評価―を行うことを新たに報酬上で評価する方針です。

 現行の加算では、「管理栄養士1人以上」の配置が算定要件ですが、管理栄養士を雇用できない事業所にも、上記の評価を通じて「一定の質の高い栄養管理」を行わせたいと厚労省は説明しています。

 2つ目は、利用者への定期的な「栄養スクリーニング」を推進するもので、栄養状態に係る情報を、ケアマネと文書で共有する事業所を報酬上で評価する考えです。「栄養スクリーニング」では例えば、BMI(18.5未満か)や体重(6か月で3%以上減ったか)、食事摂取量(75%以下か)を確認することが求められます。

 こちらは通所系や居住系のサービス事業所が対象で、具体的には、▼通所介護▼通所リハビリテーション▼地域密着型通所介護▼認知症対応型通所介護▼小規模多機能型居宅介護▼看護小規模多機能型居宅介護▼特定施設入居者生活介護▼認知症対応型共同生活介護▼地域密着型特定施設入居者生活介護―で算定が可能となる見込みです。低栄養の利用者の情報がケアマネを通じて医師に伝わり、適切なケアにつながると期待されます。

 そのほか厚労省は、施設サービスにおける口腔関係の加算の見直し案も示しています。【口腔衛生管理加算】(1か月につき110単位)と【口腔衛生管理体制加算】(同30単位)に関するもので、【口腔衛生管理加算】については、算定要件のうち「歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が入所者に対して口腔ケアを月4回以上行う」点を「月2回以上」に緩和してはどうかと提案。一方で歯科衛生士が、▼当該入所者の口腔ケアに関する具体的な技術的助言・指導を介護職員に行う▼必要に応じて、介護職員からの相談に対応する―ことを要件に加えることになります。

 また、「口腔ケアに係る技術的助言・指導を、介護職員が歯科医師らから月1回以上受けること」が要件である【口腔衛生管理体制加算】について厚労省は、▼認知症対応型共同生活介護(介護予防含む)▼特定施設入居者生活介護(介護予防含む)▼地域密着型特定施設入居者生活介護―にも設けてはどうかと指摘しています。

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