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外来診療 経営改善のポイント 看護必要度シミュレーションリリース

ケアマネは入院3日以内に情報提供を、集中減算は3サービスに限定―介護給付費分科会(3)

2017.11.28.(火)

 医療機関と居宅介護支援事業所(ケアマネ事業所)との連携を強化するため、介護支援専門員(ケアマネジャー、以下ケアマネ)からの「入院後3日以内の情報提供」を新たに評価する。入院時の情報提供は対面で行うか否かに関わらず一律に評価する代わりに、退院時の連携は「対面カンファレンスにケアマネが参加する」場合の評価をより手厚くする―。

 11月22日の社会保障審議会・介護給付費分科会では、居宅介護支援に関するこうした見直し案についても議論しました(関連記事はこちらこちら)。厚生労働省はそのほか、▼【特定事業所集中減算】の対象事業所を判定する際の居宅サービスを、訪問介護・通所介護・福祉用具貸与の3つに絞る▼【訪問介護(生活援助中心型)】の利用回数が著しく多い場合に、ケアプランを地域ケア会議などで検証する―といった見直しも提案しています。

11月22日に開催された、「第152回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

11月22日に開催された、「第152回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

「受け手に有益な情報」が伝わりやすい様式例も提示

 自宅などで療養する要介護者が、心身の状況や希望、置かれた環境に応じて適切な居宅サービスを利用できるように、ケアマネが居宅サービス計画(ケアプラン)を作成します。ケアプランを作成し、それに基づくサービスが実施されるように居宅サービス事業者と連絡調整を行ったりすることが、居宅介護支援の基本報酬(居宅介護支援費、月1回算定)で評価されています。

 在宅療養中に急性増悪を起こして入院した要介護者が、スムーズに在宅復帰するためには、病院とケアマネ事業所との連携が不可欠です。また、ケアマネは利用者の心身の状況などを把握しているので、その情報が病院側にしっかり伝われば、治療や退院に向けた調整がやりやすくなります。

 そうしたことを踏まえて居宅介護支援費には、▼【入院時情報連携加算】(入院した利用者の情報を、医療機関の職員に提供することを評価)▼【退院・退所加算】(病院などを退院・退所する利用者のケアプランを、病院などの職員と面談して作成し、居宅サービス利用に必要な調整を行うことを評価)―といった加算が設定され、医療機関との連携が促されています。

 11月22日の介護給付費分科会で厚生労働省は、医療機関との連携をさらに強力に推し進めるために、これらの加算を見直してはどうかと提案しました。

 まず前者の【入院時情報連携加算】については、「入院後3日以内」の情報提供を新たに評価する方向性を示しました。今は、「入院後7日以内」の情報提供が要件ですが、情報提供のスピードに応じて単位数を2区分に分けるイメージです(「3日以内の情報提供」と「4―7日の情報提供」)。

厚労省は、情報提供の方法ではなく時期によって評価に差を付けてはどうかと提案した

厚労省は、情報提供の方法ではなく時期によって評価に差を付けてはどうかと提案した

 なお、現在は情報提供の方法で単位数が分かれています(医療機関「訪問」: 200単位、ファクスなど「訪問以外」:100単位)が、見直し後には、情報提供の方法が「訪問」でも「訪問以外」でも一律にする方針が示されています。

 一方、後者の【退院・退所加算】(1回300単位、入院・入所期間中3回まで)について厚労省は、新規にケアプランを作成する利用者に算定する【初回加算】(1回300単位)よりも高く評価する方向性を提示(【初回加算】と【退院・退所加算】は併算定できない)。さらに、▼医療機関や介護老人保健施設(老健)などとの連携回数が多いほど高く評価する▼医療機関におけるカンファレンスに参加したら上乗せで評価する―としています。

 このうち、カンファレンスへの参加を上乗せで評価する厚労省の提案は、診療報酬の【退院時共同指導料2】(1回400点、退院後の療養に関する患者への説明や指導を、退院後の在宅療養を担う医療機関の医師らとのカンファレンスを開いて共同で行うことなどを評価)と、介護報酬の居宅介護支援への評価とを連動させるものです。

 具体的には、病院側が開いたカンファレンスにケアマネが参加して利用者の情報を収集した場合の評価を、単に病院などの職員と面談して情報収集した場合の評価より高くするようです。現在もカンファレンスに参加した場合に限って【退院・退所加算】を3回(通常は2回まで)算定できますが、カンファレンスへの参加がより手厚く評価されることになります(カンファレンスにケアマネなど3者以上が外部から参加すると、病院側が算定する診療報酬の【退院時共同指導料2】は2000点加算される)。

 厚労省は、老健からの退所に向けたカンファレンスにケアマネが参加する場合は、この上乗せの対象にしない方針ですが、東憲太郎委員(全国老人保健施設協会会長)は、「(ケアマネが)医療機関の退院時カンファレンスには行くが、老健のカンファレンスには行かないという事態を招かないか」と指摘しています。

 また厚労省は、【入院時情報提供連携加算】と【退院・退所加算】の様式例を示して、情報の受け手(入院時は医療機関、退院時はケアマネ事業所)にとって有用な情報が、伝わりやすくする方向性も示しています。

 このうち【入院時情報提供連携加算】の様式例には、患者の「住環境」や「入院時の要介護度」「在宅生活に必要な要件」などの記載欄を設けます。一方、【退院・退所加算】は様式例の項目を大幅に見直し、「退院後に必要な事項」を、看護やリハビリテーションの視点から、それぞれ記載できるようにします。

 様式例の見直し案について齋藤訓子委員(日本看護協会副会長)は、「多角的な状態把握のための様式例。(これを使えば)多職種の『目』が入るケアプランにつながりやすい」などと高く評価しました。一方で、独自の様式が定着している地域があることもあり、鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)や佐藤保委員(日本歯科医師会副会長)は、あくまで「例示」という位置付けにとどめるべきだと強調しています。

 医療・介護連携の強化策として厚労省はこのほか、(1)ケアマネが日頃から、利用者・家族に対して「入院した際、医療機関の職員に担当ケアマネの連絡先を伝えてほしい」と依頼する(2)訪問介護員から聞いたり、モニタリングの際に把握したりした利用者情報(口腔に関する問題や薬剤状況など)を、ケアマネから医師に伝える(3)訪問看護や通所リハビリテーションなどの医療サービスを利用者が希望して、ケアマネが医師らに意見を求めた場合には、作成したケアプランを医師らに交付する―ことを、運営基準で義務付ける方向性も示しています。

 (1)は、「入院先の病院職員が担当ケアマネにすぐ連絡でき、担当ケアマネが、患者(利用者)の情報をすぐ病院に伝えられる」という効果を期待したものです(病院側から連絡がなければ、利用者の入院にケアマネが気付かない)。委員からは、「ケアマネの名刺を健康保険証に挟んでおく」といった具体的な工夫が必要だという指摘もありました。

特定集中減算は3サービスのみに限定、訪問看護などは免除

 11月22日の介護給付費分科会で厚労省は、【特定事業所集中減算】(1か月につき200単位を減算)について、訪問看護や訪問・通所リハビリテーション、短期入所生活介護などの集中率が高い事業所に対する減算を免除する方針を示しています。

 現在のルールでは、訪問看護などを含む17種類の居宅サービス・地域密着型サービスについて、それぞれ集中率を算出し、80%を超えるサービスが1つでもあれば減算が適用されます。例えば、訪問介護を含むケアプラン100件中、「X法人の訪問介護事業所」を位置付けたケアプランが90件なら集中率は90%となります。判定は半年ごとで、減算対象の事業所では半年間、すべての居宅介護支援で減算が適用されます。

 「ケアマネは、利用者の立場に立って公正中立にケアプランを作成すべきで、ケアマネ事業所側の事情でケアプランに位置付ける事業所などを偏らせるべきでない」ことから設定されていますが、ケアマネ事業所にとっては厳しいペナルティーです。

 また、この減算に対しては、「むしろ一部のケアマネ事業所では弊害を生じさせる要因となっている」といった指摘もあります。例えば「本来なら、X事業所が利用者のニーズに合っているが、減算を避けるためにわざわざY事業所にする」といった弊害です。

 そうした状況を踏まえて厚労省が示した見直し案は、集中率を算定する居宅サービスを3種類(訪問介護・通所介護・福祉用具貸与)に限るというものです。鈴木委員らは賛成していますが、伊藤彰久委員(日本労働組合総連合会総合政策局生活福祉局長)は、対象の居宅サービスを絞ったとしても弊害が起こる可能性が残るとして、検証していく必要性を指摘しました。

 公正中立な居宅介護支援を確保する方策として厚労省は、▼ケアプランに位置付ける居宅サービス事業所として、複数事業所の紹介を求めることができること▼ケアプランに位置付けた事業所の選定理由の説明を求めることができること―を、ケアマネが利用者に伝えることを徹底させ、実施しないケアマネ事業所には【運営基準減算】(居宅介護支援費の半分を減算)を適用してはどうかとも提案しています。

生活援助の頻度高いケアプランを多職種で検証

 厚労省はさらに、【訪問介護(生活援助中心型)】の回数が「通常の利用状況と著しく異なる」場合に、ケアプランを検証する仕組みを導入する方針を示しています。著しく頻回の【訪問介護(生活援助中心型)】には、「利用者の状態に沿った効率的なサービス提供が行われていない可能性がある」といった指摘があり、財務省側が、「訪問介護費の算定回数に1日当たりの上限を設定してはどうか」と提案していました。

 厚労省案は、【訪問介護(生活援助中心型)】の月当たりの算定回数が、要介護度別の「全国平均利用回数」を「2標準偏差」を超えて多い場合に、ケアプランを市町村で検証するものです。検証は市町村が単独で行うほか、地域ケア会議を開催し、より適切な居宅サービスの有無を含めて多職種で話し合います。厚労省は、要介護度別の基準回数を来年(2018年)4月に示した上で、10月から検証をスタートさせたい考えです。

厚労省は、訪問介護の回数が著しく多い場合に、ケアプランを地域ケア会議などで検証してはどうかと提案した

厚労省は、訪問介護の回数が著しく多い場合に、ケアプランを地域ケア会議などで検証してはどうかと提案した

 ただし、「行き過ぎた指導が行われれば、要介護者が必要な回数の訪問介護を利用できなくなる」と懸念した田部井康夫委員(認知症の人と家族の会理事)が、「良いところが一つもないと思える対応案で、採用しない以外に選択の余地がない」などと厳しく批判しました。これに対して厚労省老健局老人保健課の鈴木健彦課長は、「多職種で検証してケアマネを支援しようという内容だ。場合によっては他のサービスもあるなど、(利用者にとってもサービスを)より良くする趣旨だ」と理解を求めています。

 また本多伸行委員(健康保険組合連合会理事)は、「内容が適切かチェックするのは保険者機能として当然だ」と厚労省の案に賛同した上で、「不適切なものがあれば、確実に是正される仕組みを構築してほしい」と要望しています。

末期がんの利用者のケアプランを変更するプロセスを簡素化

 そのほか厚労省は、(1)利用者が末期のがんと診断され、日常生活上の障害が1か月以内に出現すると医師が判断した場合の居宅介護支援のプロセスを簡素化させる(2)質の高いケアマネジメントを推進するため、研修を受けた「主任ケアマネ」であることをケアマネ事業所の管理者要件とする―といった見直し案も示しています。

 (1)は、末期がん患者では急激に状態が変化することから、短期間でのケアプラン変更が求められる実態を踏まえたものです。具体的には、医師から助言を得た上で「サービス担当者会議」で支援の方向性などを確認した場合に、その後の利用者の状態変化に応じたケアプランの変更時、「サービス担当者会議」の開催などの省略を認めるとしています。

厚労省は、末期がん患者のケアプラン変更プロセスを簡素化させてはどうかと提案した

厚労省は、末期がん患者のケアプラン変更プロセスを簡素化させてはどうかと提案した

 そうした患者のケアプラン変更の必要性を確認するためには、ケアマネが利用者を頻回にモニタリングする必要があることから、厚労省は「モニタリングで把握した利用者の心身の状況などの情報を記録し、医師や居宅サービス事業者に提供することを、新たな加算で評価してはどうか」とも提案しました。

 しかし、「ケアマネが末期の状態をモニタリングするのは難しい」(東委員)、「医師には、サービス提供者から具体的な情報が入る。ケアマネから情報が入っても重複する」(齋藤訓子委員)など、加算の新設に慎重な意見が出ています。

 一方、(2)はケアマネ事業所の管理者を「主任ケアマネ」に限定する案ですが、「2021年3月末まで通常のケアマネの管理者を認めてはどうか」とも提案しています。さらに、「主任ケアマネ」の常勤専従配置は現在、【特定事業所加算】(1か月につき300―500単位)で評価されていますが、「他法人が運営するケアマネ事業所の研修会などの支援」を算定要件に加える方向性も示しています。

厚労省は、特定事業所加算の算定要件の見直し案を示した

厚労省は、特定事業所加算の算定要件の見直し案を示した

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