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退院後2週間未満の訪問リハ開始が効果的だが、3割の要介護者では実現できず—介護給付費分科会(1)

2017.6.12.(月)

医療機関を退院してから2週間未満に介護保険の訪問リハビリテーションを開始すればADL向上の効果が高いが、利用開始までの期間を見ると3割強で退院後2週間以上が経過してからとなっている。早期の訪問リハビリを進めるためにどのような方策が考えられるか—。

7日に開催された、社会保障審議会の介護給付費分科会では、2018年度の介護報酬改定に向けて、このようなテーマについて議論を行いました。

訪問リハビリ利用者の3割超は、退院後2週間以上経過してからのスタート

訪問リハビリは、居宅で▼心身の機能の維持回復▼日常生活の自立支援―を目的として行われる理学療養や作業療法です。専ら「通院困難な要介護者・要支援者」が対象ですが、「通所リハビリだけでは、家屋内における自立が困難」な場合などには、通所リハビリと訪問リハビリを併用することも可能です。

リハビリ全般に共通することですが、「早期に集中的な介入を行うことで、機能回復などの効果が出る」ことが分かっています。厚生労働省老健局老人保健課の鈴木健彦課長は、医療機関を退院してから2週間未満に介護保険の訪問リハビリを開始した人と、2週間以上経ってから訪問リハビリを開始した人で、ADL向上の効果を比較すると「2週間以内に開始した人のほうが効果が高い」というデータを提示しました。介護保険のリハビリでも早期開始が重要という証左と言えるでしょう。

医療機関を退院してから2週間未満に訪問リハビリを実施することで、よりADL改善の効果が高まる

医療機関を退院してから2週間未満に訪問リハビリを実施することで、よりADL改善の効果が高まる

 
しかし、介護保険の訪問リハビリを開始するまでの実際の期間を見てみると、68%は2週間未満の開始ですが、▼32%の利用者では2週間以上経過してから▼23.5%の利用者では4週間以上経過してから—となっており、1割の利用者では12週間以上が経過してからやっと開始している、という状況です。
68%の訪問リハビリ利用者では、医療機関を退院してから2週間未満にリハを開始できているが、中には12週間以上経ってからやっとスタートするという利用者もいる

68%の訪問リハビリ利用者では、医療機関を退院してから2週間未満にリハを開始できているが、中には12週間以上経ってからやっとスタートするという利用者もいる

 
鈴木老人保健課長は、こうした状況を踏まえ「医療機関を退院してから速やかに訪問リハビリを開始するために、2018年度の介護報酬改定に向けてどのような取り組みが考えられるか」と論点を提示。委員からは「医療機関と訪問リハビリ事業所との連携が重要」との指摘が数多く出されました。

鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)は、「入院中に訪問・通所リハビリ職員が病院に出向き、直接情報交換を行うことが、早期リハビリ導入のために効果的」との研究結果に触れ、こうした情報交換を報酬上で評価すべきとの考えを示しています。現在、病院と介護サービス事業所が情報交換することを評価する介護報酬として、居宅介護支援費の【退院・退所加算】(ケアマネが病院などの職員と面談し、必要な情報提供を得てケアプランを調整することを評価)、訪問看護の【退院時共同指導加算】(訪問看護ステーションの看護師などが、病院の主治医などと共同して必要な指導を行うことなどを評価)があります。これらを訪問リハビリについても拡大することなども考えられそうです。

なお、この点に関連して「訪問リハビリ計画の作成に当たっては、別の医療機関(入院医療機関など)から情報提供を受けていても、訪問リハビリ事業所の医師が患者を診療しなければならない」との規定については、迅速な計画策定(迅速なサービス提供につながる)のために「特別な事情がなければ、別の医療機関からの情報提供に基づけばよいのではないか」(小林剛委員・全国健康保険協会理事長)などの緩和要請が出されています。

また武久洋三委員(日本慢性期医療協会会長)は、早期リハビリの前提として「要介護認定」がある点に触れ、「訪問リハビリを早期に開始できるよう、早期の情報連携を評価することを考えてはどうか。また入院と同時に要介護認定の申請を行い、ケアマネジャーにも連絡をする必要がある。退院が見えてから、退院してからの申請では遅すぎる」と強調しました。関連して松田晋哉委員(産業医科大学教授)は、要介護認定の際に基礎資料の1つとなる主治医意見書の記載内容について「より詳細な内容」(例えば今後予想される病態の変化や機能の手かなど)を行うよう見直すことで、ケアプランやリハビリ計画を細かく作成できると提案しています。

リハビリマネジメント加算II、訪問リハビリでの算定は2割に満たない

ところで2015年度の前回介護報酬改定では、リハビリについて「ともすれば漫然と機能訓練を継続しがちである」との問題点が明らかとなったことから、(1)リハビリマネジメント加算を組み替え「リハビリの管理」を強化・充実(2)リハビリ機能の特性を生かした「短期集中個別リハビリ実施加算」「認知症短期集中リハビリ加算」「生活行為向上リハビリ実施加算」の創設―など、大きな報酬体系の見直しが行われました(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

2015年度の前回介護報酬改定で大きく組み替えられた【リハビリマネジメント加算】の概要

2015年度の前回介護報酬改定で大きく組み替えられた【リハビリマネジメント加算】の概要

 
このうち(1)のリハビリマネジメント加算(II)(リハビリ会議を定期的に開催し、医師がリハビリ計画の説明・同意に関与することなどが要件)の算定状況を見ると、届け出事業所は全体の14.1%、実際に算定している利用者は6%程度にとどまっています。この低調な届け出・算定の背景には、▼医師の会議への参加が困難▼医師からの説明時間が確保できない▼毎月のリハビリ会議が負担―といった理由があります(関連記事はこちら)。委員からは、「多忙な医師に会議への直接参加を促すことは難しい」ことから、「ICTを活用した会議」などでも加算の要件を見たせるようにしてはどうかとの提案が出ています。これは、介護給付費分科会と中央社会保険医療協議会との意見交換の場でも多数だされた意見であり、今後、より具体的な検討が行われることでしょう(関連記事はこちらこちら)。
リハビリマネジメント加算IIを届け出ている訪問リハ事業所は14.1%にとどまり、実際に算定している利用者は6%程度という状況。算定できない理由として「医師とのコンタクトの難しさ」をあげる事業所が多い

リハビリマネジメント加算IIを届け出ている訪問リハ事業所は14.1%にとどまり、実際に算定している利用者は6%程度という状況。算定できない理由として「医師とのコンタクトの難しさ」をあげる事業所が多い

 
なお、リハビリ実施にむけて医師が理学療法士などに出す指示が具体的である場合には、ADL改善の効果が高いという調査結果もあります。医師の指示が「リハビリの有無」のみである場合と、「訓練中の留意事項」や「運動負荷量」などの具体的な内容がある場合とで、ADL(barthel index)の向上度合いを比較すると、後者で2倍以上の改善が見られています。委員からは「医師によるリハビリへの関与の質」を評価指標としてはどうかとの提案も出されています。
訪問リハビリの提供にあたり、医師がより積極的に関与すると、ADL改善効果が高まることが厚労省の調査で明らかになった

訪問リハビリの提供にあたり、医師がより積極的に関与すると、ADL改善効果が高まることが厚労省の調査で明らかになった

 
これらを総合すれば、より効果的な訪問リハビリを行うために、2018年度改定に向け医師に「より早期に、より具体的に関与することを求める」一方で、負担軽減のために「会議などの運営の効率化を図る」という2点の具体化に向けた検討を行うことになりそうです。

社会参加支援加算、出口となる介護サービスの見直しを求める声

2015年度改定では、リハビリの加算として【社会参加支援加算】が新設されました。漫然と訪問リハビリを提供するのではなく、社会参加を期待できる他のサービス(通所リハビリや通所介護など)への移行を目指し、一定の実績を持つ事業所を評価する加算で、これも上記のリハビリ報酬体系の一環です(関連記事はこちら)。

2015年度の前回介護報酬改定で新設された【社会参加支援加算】の概要

2015年度の前回介護報酬改定で新設された【社会参加支援加算】の概要

 
しかし、社会参加支援加算を届け出ている訪問リハビリ事業所は19.2%に、実際に算定している利用者は要介護度に関わらず16%程度にとどまっています。加算を届け出ない理由としては、「利用者のリハビリ目標が社会参加ではない」「利用者のADL、IADL向上が進まない」などが目立ちます。
社会参加支援加算を届け出る訪問リハ事業所は19.2%にとどまっており、加算の算定状況は16%程度である。社会参加支援加算を届け出ない理由として「利用者のゴールが異なる」などが目立つ

社会参加支援加算を届け出る訪問リハ事業所は19.2%にとどまっており、加算の算定状況は16%程度である。社会参加支援加算を届け出ない理由として「利用者のゴールが異なる」などが目立つ

 
この点について伊藤彰久委員(日本労働組合総連合会総合政策局生活福祉局長)は、「良い視点の加算であるが、羊頭狗肉の嫌いがある。出口となるサービスについて、より社会参加を意識したものを位置付けるべきではないか」と指摘。鈴木委員も同様に、出口となるサービスの種類を工夫すべきとの見解を示しています。

また東憲太郎委員(全国老人保健施設協会会長)は、この点に関連して「診療報酬においても、リハビリのゴールとして社会参加の考えを入れるべきではないか」と要望しました。医療保険のリハビリは専ら「治療」であり、介護保険のリハビリとは性格が若干異なりますが、いずれも「社会参加」などを目指すという目的の面では共通しており、2016年度の診療報酬改定では【目標設定等支援・管理料】の新設なども行われています(関連記事はこちら)。中医協で、こうした介護給付費分科会側の意見をどのように取り入れ、どういった議論がなされるので注目が集まります。

 
なおリハビリのゴールに関連して、鈴木老人保健課長は訪問リハビリの提供期間や利用者の転帰についても分析しています。それによると、要介護者・要支援者ともに「3か月未満」がもっとも多く(要介護者では25.7%、要支援者では28.3%)、終了後には▼通所リハビリ▼通所介護など▼医療機関(入院や外来リハビリ)―などへ移行しています。しかし、要介護者の20.5%、要支援者の17.6%は「2年以上」訪問リハビリを利用していることや、要介護3以上で訪問リハビリを利用している人の半数超は「目標達成後も訪問リハビリを継続したい」と考えていることなどが明らかになりました。リハビリ報酬体系見直し論議の発端となった「漫然としたリハビリが継続している」可能性が伺えます。

訪問リハビリの利用期間を見ると、4分の1は3か月未満だが、2年以上という人も5分の1程度いる

訪問リハビリの利用期間を見ると、4分の1は3か月未満だが、2年以上という人も5分の1程度いる

要介護3以上で訪問リハビリを利用する人の過半数は、「目標達成後も訪問リハビリを継続したい」と考えている

要介護3以上で訪問リハビリを利用する人の過半数は、「目標達成後も訪問リハビリを継続したい」と考えている

  
この点、東委員は「訪問リハの継続を求めているのは重度者である」と述べ、より詳細な実態分析を求めていますが、「適正化」を求める声も少なくありません。また鈴木委員は「サービス付き高齢者向け住宅などで、不適切な利用があるのなら是正する必要がある」と指摘しています。「訪問リハビリがなくなれば、また機能が低下して歩けなくなってしまう」などの不安が利用者にはあるのかもしれません。事業者やケアマネジャーが利用者の意向を汲みながら、適切なサービスへの移行や、その特性などを丁寧に説明することも必要と言えそうです。

 
このほか、鈴木老人保健課長は「円滑な医療・介護連携に向けた、医療保険・介護保険におけるリハビリテーションの計画書などのあり方」を論点に掲げています。介護給付費分科会と中医協との意見交換で出された意見を踏まえたものです(関連記事はこちらこちら)。

医療保険・介護保険ともに、リハビリの実施にあっての計画書作成などを大量に作成する必要があり、現場の負担になっていると指摘される

医療保険・介護保険ともに、リハビリの実施にあっての計画書作成などを大量に作成する必要があり、現場の負担になっていると指摘される

 
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