リハビリマネジメント加算II、最大のハードルは「医師のリハ会議への参加」―介護給付費分科会・研究委員会(2)
2017.3.14.(火)
2015年度の介護報酬改定で新設されたリハビリテーションマネジメント加算IIを届け出ている事業所は通所リハビリでは37.1%、訪問リハビリでは14.3%にとどまり、「医師のリハビリ会議への参加が困難」が加算を届け出ない大きな理由の1つとなっている―。
13日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会の「介護報酬改定検証・研究委員会」では、このような調査結果も報告されました。
また介護療養や医療療養を持つ病院では、半数超が「訪問看護を実施する意向なし」と考えており、実施している施設割合も8%超にとどまっていることなども明らかになりました。
漫然としたリハビリの継続となっていないか、次期改定でも重要論点に
お伝えしているとおり、研究委員会には厚生労働省から2015年度介護報酬改定の「効果検証・調査研究」調査結果(2016年度調査分)が報告されました(関連記事はこちら)。
このうち「通所・訪問リハビリテーションなどの中重度者などへのリハビリテーション内容」を見ると、2015年度改定で新設されたリハビリテーションマネジメント加算IIの届け出割合は、▼通所リハビリでは2015年度38.0%・2016年度37.1%▼訪問リハビリでは2016年度14.1%―となっていることが分かりました。
2015年度の介護報酬改定では、リハビリの報酬体系を大きく見直しており、その柱の1つとして「リハビリテーションマネジメント加算を組み替え、リハビリの管理を強化・充実する」ことがあげられます。漫然とリハビリを継続するのではなく、利用者の意向を踏まえた具体的な目標(例えば、自分で料理ができるようになるなど)を立て、目標達成のためのリハビリ計画を作成し、進捗状況を確認しながら計画を適宜見直していくことが求められています。
リハビリテーションマネジメント加算IIは、通所リハビリでは開始からの期間などに応じて1020単位または700単位と高い報酬が設定されましたが、▽リハビリ会議を開き、構成員である医師やリハビリ専門職などが情報を共有し、会議の内容を記録する▽リハビリ計画について、医師が利用者・家族に対して説明し、利用者の同意を得る▽3か月に1回以上(開始6か月以内は1か月に1回以上)、リハビリ会議を開き、利用者の状態の変化に応じて計画を見直す―など、厳しい要件が設けられています。
これらの要件のうち、どれがクリア困難かをリハビリ事業所に尋ねたところ、通所・訪問のいずれでも「医師のリハビリ会議への参加が困難」という点をあげた事業所が多くなっています。なぜ参加が困難なのかまでは、今回の調査結果からは明らかになっていませんが、次期改定において重要な論点(医師のリハビリ会議への参加要件を緩和すべきかどうか)の1つとなりそうです。
また、2015年度改定では「社会参加支援加算」も新設されました。これは、いわば「効果の高いリハビリを提供している事業所を評価する」加算で、効果の高さは「リハビリによって利用者のADL・IADLが向上し、社会参加を維持できる他のサービス(通所介護など)にどれだけ利用者が移行しているか」で判断されます。この加算を届け出ている事業所は、訪問リハビリでは19.2%、通所リハビリではわずか11.4%にとどまっています。届け出ない通所リハビリ事業所にその理由を尋ねたところ、「利用者・家族が通所リハビリの継続を希望している」が多くなっています。
一方、リハビリの長期目標を達成した後に、利用者がどのようなサービスに移行する予定なのかを尋ねたところ、「現在のサービスを継続する」と答えた事業所の割合が、訪問リハビリでは44.3%、通所リハビリでは72.3%、訪問看護では57.2%と最も多くなっています。利用者の意向とはいえ、「漫然とリハビリが継続されている」という課題が解決しつつあるのか、次期改定でも見極めていく必要がありそうです。
医療療養・介護療養を持つ病院、半数超が訪問看護実施の意向なし
次に「病院が行う中重度者に対する医療・介護サービス」の状況を見てみましょう。
2015年度の介護報酬改定では、重度者を受け入れる病院を評価するために、介護療養病床を▼機能強化型A▼機能強化型B▼従来型―の3類型に区分しました。病院について見てみると、施設数ベースでは▼機能強化型A:45.5%▼機能強化型B:9.3%▼従来型:43.0%、ベッド数ベースでは▼機能強化型A:57.0%▼機能強化型B:11.7%▼従来型:31.4%―となっており、規模の大きな病院で機能強化、つまり重度者の受け入れを積極的行っている状況が伺えます。
また、介護療養病床を持つ病院の入院患者について、「入院前の居場所」と「退院先」の関係を見ると、「本人の自宅→病院→本人の自宅」と在宅復帰できている割合が47.8%(医療療養では56.3%)なのに対し、「医療施設・介護保険施設→病院→本人の自宅」というケースは極めて少なくなる(介護療養ではごくわずか)ことが改めて明確になっています。
一方、2015年度改定では「病院・診療所からの訪問看護」について、基本報酬の引き上げを行いました。訪問看護に従事する看護師の増員を狙ったものです。この点、介護療養病床を持つ病院で訪問看護を実施している割合は18.2%、医療療養病床を持つ病院で訪問看護を実施している割合は18.1%にとどまり、いずれでも半数超は「訪問看護を実施する意向なし」と考えていることが分かりました。
さらに、病院・診療所からの訪問看護と訪問看護ステーションからの訪問看護を比較すると、▼緊急時訪問看護加算▼特別管理加算(真皮を超える褥瘡を持つなど、特別管理が必要な利用者を多く受け持つ事業所を評価)▼ターミナルケア加算―の届け出割合は、診療所<病院<ステーションの順で多く、訪問看護ステーションでいわば「機能強化に積極的」な状況もうかがえます。
なお、訪問看護ステーションは、病院・診療所からの訪問看護・医療機関併設の訪問看護ステーションに対して▼専門性の高い同行訪問の実施▼難しいケース・入院の頻度が高いケースの担当▼地域の訪問看護ネットワークの構築―などを期待しています。
医療と介護をつなぐ訪問看護は「地域包括ケアシステムの要」になると期待されています。その要を担う「訪問看護に携わる看護師」の育成に向けて、とくに病院の積極性に期待したいところです。
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