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GemMed塾 新制度シミュレーションリリース

特養と老健の7割、介護療養の8割で積極的な看取りを実施―2015年度介護報酬改定・結果検証2

2016.3.17.(木)

 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)と介護老人保健施設ではおよそ7割、介護療養型医療施設ではおよそ8割の施設では、看取り期に入った入所者に対して看取りが行われており、その場合、特養ホームと老健施設の8割で看取り計画が立てられている―。

 こうした状況が、16日の社会保障審議会・介護給付費分科会「介護報酬改定検証・研究委員会」に厚生労働省が提出した2015年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(2015年度調査)結果から明らかになりました。

3月16日に開催された、「第10回 社会保障審議会 介護給付費分科会 介護報酬改定検証・研究委員会」

3月16日に開催された、「第10回 社会保障審議会 介護給付費分科会 介護報酬改定検証・研究委員会」

特養と老健では老衰による死亡が大半だが、介護療養では肺炎による死亡も多い

 お伝えしたように、介護報酬についても2015年度報酬改定の効果・影響について調査が行われています(関連記事はこちら)。今回は、「介護保険施設等における利用者等の医療ニーズ」の状況に焦点を合わせてみましょう。

 まず介護保険3施設における定員100名当たりの死亡対象者数を見ると、特養ホームでは4.8名、老健施設では3.9名、介護療養では16.6名という状況です。ちなみに医療療養では20対1で29.6名、25対1で31.0人となっています。

 また退所者に占める死亡退所者の割合を見ると、老健施設では20%未満の施設が8割弱なのに対し、特養ホームでは80%以上の施設が5割弱となっていることが分かりました。ただし、特養ホームでは「病院に入院しても3か月以内に退院が見込める場合には退所と扱わない」旨が厚労省令(指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準)で定められているため(病院に入院して死亡した入所者も死亡退所者にカウントされる)、割合が高くなっている点も考慮する必要があります。

 なお、死因(主たるもの)について見ていると、特養ホームと老健施設では老衰が58.3%、47.2%と最も多くなっていますが、介護療養では肺炎(25.5%)と老衰(25.4%)が多くなっており、若干の違いがあります。

計画に沿った看取りの実施は、特養と老健の半数程度、介護療養の25%程度

 このように介護保険施設で人生の最期を迎える方も一定程度いるわけですが、各施設において看取りの状況はどのようになっているのでしょう。

 今般の調査結果からは、特養ホームの76.1%、老健施設の64.0%、介護療養の81.9%で「看取り期に入った入所者に対して看取りを行っている」実態が明らかになりました。前年度(2016年度)調査に比べて、看取り実施の割合が高まっています。

 また、看取りを実施している場合に「全員に看取り実施計画を策定している」施設の割合は、特養ホームで51.1%、老健施設で45.2%、介護療養で25.4%となっています。ただし在宅復帰機能強化型の介護療養では看取り計画を立てていない施設の割合は5.9%(介護療養全体では31.5%)に止まっています。

看護職員から見た「在宅生活がふさわしい利用者」、老健では55.2%

 次に、介護保険施設に勤務する看護職員が、「利用者に必要な医療」「利用者の必要な介護」「最も適切な生活・療養の場」をどう考えているのか、を見てみましょう。

 介護保険3施設別に、入所者のうち「在宅医療・外来医療で対応可能な人」がどの程度いるのかを見ると、特養ホームでは43.2%(在宅11.7%、外来31.5%)、老健施設では55.2%(在宅22.6%、外来32.6%)、介護療養では26.5%となっています。

 また入所者のうち「在宅の介護サービスで対応可能な人」がどれだけいるのかを見ると、特養ホームでは5.4%、老健施設では27.4%、介護療養では11.8%となっています。

 さらに、自宅での生活・療養がふさわしいと考えられる入所者の割合については、特養ホーム5.7%、老健施設23.5%、介護療養7.5%という状況です。

 こうした数字を見ると「老健施設には医療・介護の必要性が低く、自宅に戻れるにもかかわらず入所している人が多い」と考えてしまいますが、そもそも老健施設は在宅復帰を目指す施設であり、リハビリなどによって「在宅復帰が見えてきた」利用者が多いと考えるべきでしょう。老健施設が「本来の機能」を果たしていると言えます。

医療療養の医療区分1患者、在宅・外来で対応可能な人は5割程度

 また、介護保険3施設における医療区分1の入所者(診療報酬上の医療区分)の状況を見ると、「自宅での生活・療養がふさわしい」人(看護職員の判断)は、特養ホームで5.9%、老健施設で26.1%、介護療養で9.1%、医療療養で23.6%となっています。

 ここで、現在、各都道府県で策定が進められている「地域医療構想」では、「医療療養に入院する医療区分1の患者の7割は、在宅医療等で対応する」ことになります(厚労省の地域医療構想策定ガイドライン)。

 調査結果を眺めると、医療療養の入院患者にとって、最もふさわしい生活・療養の場は、自宅23.6%、特養ホーム16.0%、老健施設10.6%、医療療養24.1%、介護療養14.9%などとなっており、「医療療養でなければ対応できない患者」の割合は地域医療構想と合致していると見ることもできます。

 ただし、必要な医療については、入院40.4%、在宅37.4%、外来14.9%などとなっており、「7割を在宅医療等で対応する」ことが適切かどうか、改めて検証する必要もありそうです。

在宅強化型・加算型の老健、訪問指導や情報共有に積極的

 ところで、老健施設については2012年度の前回介護報酬改定で「在宅強化型」(基本報酬が高く設定されている)と「加算型」(在宅復帰・在宅療養支援機能加算を算定)が新設され、2015年度改定でも評価の充実が行われました(関連記事はこちら)。

 この在宅強化型・加算型と従来型を比べてみると、在宅強化型・加算型では、「入所前後訪問指導」「入退所前後以外における自宅などへの訪問」「入院・入所1週間以内の退所・退院調整」「在宅復帰を見据えた家族への指導・助言」「退所・退院計画の入所者・家族との共有」などを実施している割合が高いことが明確となりました。

 裏を返せば、利用者宅の訪問や利用者・家族との情報共有などが、在宅復帰にとって極めて有効であるとも考えられます。

 急性期入院医療でも平均在院日数の短縮と、そのための退院支援の充実が大きなテーマとなっており(関連記事はこちらこちら)、老健施設の取り組みも重要な参考情報となりそうです。

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