大幅減の介護療養、80床規模で年間1634万円減収も―検証・介護報酬改定2015(1)
2015.2.9.(月)
2015年度介護報酬改定が決着しました。メディ・ウォッチでは、個別サービスごとに少し詳しく改定内容を見ていきます。
第1回目は「介護療養型医療施設」(介護療養)です。介護療養は大幅な報酬減となったものの1つで、例えば、80床規模で、要件が最も緩い区分類型で算定を続けると、年間1634万円の減収インパクトとなります。
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【検証・介護報酬改定2015】
○介護老人保健施設(2/10掲載予定)
○訪問看護(2/12掲載予定)
その後も、個別サービスについて見ていきます。
介護療養型医療施設は、15年度改定で3類型に区分されました。
(1)療養機能強化型A
(2)療養機能強化型B
(3)通常型
いずれも基本サービス費は現状から引き下げられ、各種の加算を算定することによって、(1)の療養機能強化型Aでかろうじて現行の水準を維持できる格好です。
多床室(看護6対1、介護4対1)で要介護5の入院患者について、各種加算を算定したケースでは、次のような報酬水準となります。
【現行】1357単位
(基本サービス費1320+処遇改善加算15+サービス提供体制強化加算12+褥瘡対策指導管理5+感染対策指導管理5)
【療養機能強化型A】1356単位(現行よりマイナス1単位)
(基本サービス費1307+処遇改善加算27+サービス提供体制強化加算12+褥瘡対策指導管理5+感染対策指導管理5)
【療養機能強化型B】1335単位(現行よりマイナス22単位)
(基本サービス費1287+処遇改善加算26+サービス提供体制強化加算12+褥瘡対策指導管理5+感染対策指導管理5)
【通常型】1298単位(現行よりマイナス59単位)
基本サービス費1251+処遇改善加算25+サービス提供体制強化加算12+褥瘡対策指導管理5+感染対策指導管理5)
2013年度における介護療養型の入所者の平均的な要介護度を見ると、要介護1が0.7%、要介護2が1.9%、要介護3が6.7%、要介護4が30.5%、要介護5が60.1%となっています(介護給付費実態調査結果より)。これを踏まえると、80床の介護療養型で平均的な姿は、要介護1が1人、要介護2が2人、要介護3が5人、要介護4が24人、要介護5が48人となります。
現行の報酬体系で、多少室(看護6対1、介護4対)、稼働率100%という前提で、1日当たりの報酬(上記加算のみを算定)を計算してみましょう。
▽要介護1:{786(基本サービス費)+37(上記の加算の合計)}×1人=823
▽要介護2:{895(基本サービス費)+37(加算の合計)}×2人=1864
▽要介護3:{1130(基本サービス費)+37(加算の合計)}×5人=5835
▽要介護4:{1230(基本サービス費)+37(加算の合計)}×24人=3万408
▽要介護5:{1320(基本サービス費)+37(加算の合計)}×48人=6万5136
これらを合計し、1単位当たりの単価を10円とすると104万660円です。これを現行の1日当たりの平均収入と仮定します。
これが、通常型のままだと次のようになります。
▽要介護1:{745(基本サービス費)+47(加算の合計)}×1人=792
▽要介護2:{848(基本サービス費)+47(加算の合計)}×2人=1790
▽要介護3:{1071(基本サービス費)+47(加算の合計)}×5人=5590
▽要介護4:{1166(基本サービス費)+47(加算の合計)}×24人=2万9112
▽要介護5:{1251(基本サービス費)+47(加算の合計)}×48人=6万2304
同様に、1日当たりの平均収入を計算すると99万5880円となり、現行に比べて1日当たり4万4780円、1か月当たり134万3400円、1年間で1634万4700円の減収が見込まれます。
また、療養機能強化型Aを届け出た場合には、次のように計算できます。
▽要介護1:{778(基本サービス費)+49(加算の合計)}×1人=827
▽要介護2:{886(基本サービス費)+49(加算の合計)}×2人=1870
▽要介護3:{1119(基本サービス費)+49(加算の合計)}×5人=5840
▽要介護4:{1218(基本サービス費)+49(加算の合計)}×24人=3万408
▽要介護5:{1307(基本サービス費)+49(加算の合計)}×48人=6万5088
同様に、1日当たり平均収入は104万330円と計算できます。現行に比べて1日当たり330円、1か月当たり9900円、1年間で12万450円の減収となると見込まれます。
これら以外にも「経口維持加算」や「経口移行加算」などが見直されているので、新単位数への移行を前に十分な準備が必要です。
なお、処遇改善加算については便宜的に、すべての要介護度で同じ単位数としております。