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2018年度同時改定での「維持期リハの介護保険移行」見据え、患者像やリハ内容などを調査―介護給付費分科会・研究委員会

2016.5.24.(火)

 2015年度に行われた介護報酬改定の効果・影響を把握し、それを2018年度に予定される次期介護報酬改定に活かすために、2016年度に「中重度者などへのリハビリテーションの内容」や「病院・診療所が行う中重度者への医療・介護サービス」について調査分析を行う―。

 このような調査項目案が、24日に開かれた社会保障審議会・介護給付費分科会の「介護報酬改定検証・研究委員会」に厚生労働省から報告されました。

 研究委員会の意見、および近く開かれる介護給付費分科会の意見も踏まえて調査内容(調査票など)を固め、この10月に調査を実施し、年明け3月以降に評価・分析などを行う予定です。

5月24日に開催された、「第11回 社会保障審議会 介護給付費分科会 介護報酬改定検証・研究委員会」

5月24日に開催された、「第11回 社会保障審議会 介護給付費分科会 介護報酬改定検証・研究委員会」

2015年度の介護報酬改定、その効果を2015・16・17年度の3回に分けて調査

 介護報酬については、介護職員などの賃金水準を他産業のそれに合わせることや、介護現場の課題を解決し、あるべき介護サービス提供体制を構築することなどを目的として3年に一度改定されます。

 厚労省は改定によって介護現場にどのような効果・影響が出たのかを調査し(効果検証・調査研究調査)、その結果を次の改定に活かすことにしています。狙った効果が十分に出ていなければ「テコ入れ」を、予想と相反する状況になっていれば「軌道修正」を次期改定に向けて検討します。

 2015年度の介護報酬改定については、効果が現れるまでの時間などを考慮し、「2015年度」「2016年度」「2017年度」の3回に分けて効果検証・調査研究調査を行います。

 24日の研究委員会には、2016年度に実施する調査項目案を厚労省から提示されました。具体的には、次の7つです。

(1)通所・訪問リハビリテーションなどの中重度者などへのリハビリテーション内容など

(2)病院・診療所が行う中重度者に対する医療・介護サービス

(3)介護老人保健施設における施設の目的を踏まえたサービスの適正な提供体制など

(4)介護老人福祉施設における医療的ケアの現状

(5)居宅介護支援事業所および介護支援専門員の業務など

(6)認知症高齢者への介護保険サービス提供におけるケアマネジメントなど

(7)介護保険制度におけるサービスの質の評価

「介護保険リハで十分な高齢者」「医療保険リハが必要な高齢者」の明確化を目指す

 (1)のリハビリについては、2015年度の介護報酬改定で▽リハビリマネジメントの強化▽リハビリ機能の特性を生かしたプログラムの充実―を柱とする大幅な報酬体系の見直しが行われており、2015年度にも効果検証・調査研究調査が行われました。

 その後、2016年度の診療報酬改定では、要介護被保険者に対する維持期の外来リハビリについて介護保険給付への移行を促進するための「目標設定等支援・管理料」の設定や、「介護保険リハビリを実施しない場合の減算強化」などが行われています(関連記事はこちらこちら)。

 こうした2016年度診療報酬改定も踏まえ、2018年度の診療報酬・介護報酬同時改定を睨んだ調査が2016年度に行われます。厚労省はリハビリ専門職(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)が提供するサービス(通所介護、通所リハビリ、訪問リハビリ、訪問看護ステーションの理学療法士などの訪問)における機能と役割についても調査したい考えです。

 この調査項目について研究委員会では、「介護保険のリハビリで十分な高齢者」と「医療保険のリハビリが必要な高齢者」との峻別をより明確化することが重要という指摘が数多く出されています。

 川越雅弘委員(国立社会保障・人口問題研究所社会保障基礎理論研究部長)は、「訪問リハビリや通所リハビリでは3か月ごとにリハビリ計画を見直すことが求められている。これらを予め集積し、それを分析にして調査項目を立てることが効率的かつ効果的ではないか」と提案。

 堀田聰子委員(国際医療福祉大学大学院教授)は、2016年度調査の目的は診療報酬改定を踏まえた「深掘り」にある点を踏まえ、「医療機関を調査客体に加えるべき」と指摘しています。医療保険の維持期リハビリから介護保険リハビリへの移行が、逐次の診療報酬改定でテーマとなっていますが、思うように進んでいません。この点について、介護サービス事業所と医療機関とで同時に調査することで、より具体的な「移行策」を見出し、2018年度の同時改定で導入することが期待されます。

 なお、藤井賢一郎委員(上智大学准教授)もこの点を重視し、「事業所ごとだけではなく、利用者本人に着目して、例えば『回復期リハビリ』→『医療保険の維持期リハビリ』→『介護保険のリハビリ』という流れを見ていく」ことを提案しましたが、今般の調査(いわば定点の調査)では技術的に難しそうです。別途、厚生労働科学研究費などを基にした追跡調査をすることも検討すべきではないでしょうか。

介護療養の廃止方針踏まえ、「新たな移行先」に関する調査も

 (2)の「病院・診療所」調査では、なんといっても2017年3月で設置根拠となる経過措置が切れる「介護療養病床」と、現在検討中の「新たな移行先」に向けた動きが注目されます(関連記事はこちら)。

 このため、厚労省は介護療養病床の実態(経営状況、レントゲンなどの医療・経管栄養・喀痰吸引が必要な患者への医療・介護提供、入院患者の状態、住まい)や医療保険適用病床を有する医療機関の実態などのほか、自治体における今後の動向も調査対象に含めてはどうかと提案しています。

 ただし、「介護療養病床などからの新たな移行先」については、社会保障審議会に特別部会が設置されたものの、効果検証・調査研究調査が実施される今年(2016年)10月には結論が出ていない可能性があります(予定では2016年末までに結論)。今般の調査では、このような「限界」がある点も考慮しなければいけません。

 なお、今村知明委員(奈良県立医科大学教授)や松田晋也委員長(産業医科大学教授)は「地域医療構想」(2025年において地域に高度急性期・急性期・回復期・慢性期の病床がそれぞれどの程度必要になるのかなど将来の医療提供体制のあるべき姿)を踏まえた工夫が必要と指摘します。地域医療構想策定ガイドラインでは、「療養病床に入院する医療区分1の70%は在宅医療などに移行し、療養病床の入院率について地域差の縮減を目指す」こととされています。これらは当然、在宅介護サービスの需要量などにも影響してくるため、今般の調査でも勘案する必要があると指摘されているのです。

 

 このほか(3)の老健施設について「在宅復帰率の高い施設では、計画的な入所(ときどき入所、ほぼ在宅)が多いことが知られており、これをどう考えるかという視点も持つべき」(藤井委員)、(4)の老人福祉施設(特別養護老人ホーム)について「特養ホームでは『病院に入院しても3か月以内に退院が見込める場合には退所と扱わない』ために、看取りの割合が多いが、予定入院・緊急入院などさまざまなケースがあり、詳しく調べるべき」(藤井委員)などと言った提案もなされています。

 

 具体的な調査内容については、今般の研究員会の意見や介護給付費分科会の意見を踏まえて検討され、9月には決定される見込みです。

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