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2016年度診療報酬改定で新設されたリハビリの目標設定等支援・管理料、介護保険サイドからの調査も―介護給付費分科会

2016.6.1.(水)

 2015年度に行われた介護報酬改定の効果・影響に関する調査の中で、「医療保険の維持期リハビリから介護保険リハビリへの移行」「ケアマネジメントにおける特定事業所集中減算のあり方」「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)における医療提供の在り方」などの議論に資する項目を盛り込んでほしい。例えば、2016年度診療報酬改定で新設された目標設定等支援・管理料について、介護保険サイドからの調査も行うべきである―。

 1日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会では、介護報酬改定の効果・影響調査に対してこのような意見が数多く出されました。

 調査概要は概ね了承され、分科会の意見などを踏まえて調査項目を練り、この10月にも調査実施、年明け3月以降の調査結果速報が報告される見込みです。

6月1日に開催された、「第129回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

6月1日に開催された、「第129回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

中医協の「2016年度改定結果検証調査」も踏まえ、介護報酬改定の効果を調査

 介護報酬についても、診療報酬と同様に「改定の効果・影響を詳細に調べ、その結果を次回改定に反映させる」というプロセスがあります(介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査)。2015年度の前回介護報酬改定に関しては、影響が出やすい7項目について、すでに2015年度に調査が行われています(1日の分科会で最終報告が取りまとめられた)。

 1日の分科会では、厚生労働省老健局老人保健課の佐原康之課長から、2016年度に行う調査項目として次の7つが提案されました。5月24日に、分科会の下部組織である「介護報酬改定検証・研究委員会」に提案されたものと同じ内容です。

(1)通所・訪問リハビリテーションなどの中重度者などへのリハビリ内容など

(2)病院・診療所が行う中重度者に対する医療・介護サービス

(3)介護老人保健施設における施設の目的を踏まえたサービスの適正な提供体制など

(4)介護老人福祉施設における医療的ケアの現状

(5)居宅介護支援事業所および介護支援専門員の業務など

(6)認知症高齢者への介護保険サービス提供におけるケアマネジメントなど

(7)介護保険制度におけるサービスの質の評価

 佐原課長は、(1)のリハビリと(2)の中重度者への医療・介護サービスに関して、「中央社会保険医療協議会で、2016年度診療報酬改定の結果検証調査の中でも調べられる。それも踏まえて調査設計を行う」と説明しています。

 例えば(1)のリハビリについては、要介護者に対する維持期リハビリを介護保険のリハビリへ移行させるために、目標設定等支援・管理料が2016年度診療報酬改定で新設されました。これは、医療保険リハビリを提供する際に「目標」(患者が何を目指してリハビリを受けるのか)設定の支援や、介護保険のリハビリへの紹介などを評価するもので、同点数の算定から3か月以内は、1か月に5日を超えない範囲で介護保険リハビリの併給が可能となります(介護保険リハビリの内容を把握することが目的)。また、標準的算定日数の3分の1経過後に、この点数を算定せず(目標を定めず、介護保険リハビリの紹介などもせず)に疾患別リハを提供した場合には、疾患別リハビリ料が90%に減算されます(関連記事はこちらこちらこちら)。

「医療保険の維持期リハビリ」と「介護保険リハビリ」の患者満足度も調べては

 調査項目案について反対意見は出ておらず、原案通り了承されましたが、委員からは多くの注文が付きました。

 鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)は、(1)のリハビリ調査において、先述した目標設定等支援・管理料を「介護保険サイドの視点にも立って調査すべき』と指摘。また(2)の病院・診療所調査の中では「介護療養病床などから、今後議論される『新たな移行先』への転換意向や医療現場の意見なども調べてほしい」と要望。

 また鈴木委員は、2015年度に行われた調査結果を受けて、「通所介護と通所リハビリの一体化は難しいとしても、通所介護について「理学療法士などの専門職を配置した場合」と「配置のない場合」などで報酬体系を分けることも検討すべき」とも提案しています(関連記事はこちら)。

 一方、武久洋三委員(日本慢性期医療協会会長)は、「医療保険への維持期リハビリから介護保険リハビリへの移行を促進するためには、両リハビリのレベルが同一でなければいけない」点を指摘。その上で「医療保険の維持期リハビリから介護保険リハビリへ移行した高齢者を対象に、両リハビリの満足度などを調べてはどうか」と提案しています。

 さらに武久委員は「診療報酬では回復期リハビリ病棟にFIMを指標に用いたアウトカム評価が導入された。介護保険のリハビリについても何らかの形でアウトカム評価を行うべき」とも強調しています。

特養ホームでの医療、介護職員によるものも含めて実態を詳しく調査

 (4)の特養ホーム調査に関して、厚労省は「医療提供体制」の状況を詳しく調べる考えです。この点について鈴木委員は、▽医師の配置状況と、配置医が行っている業務の実態▽配置医の報酬(給与など)―などを調べるべきと指摘。また武久委員は、「特養ホームにおける配置医の規定は規制が厳しすぎ、非現実的である。この点の見直しに資するような調査を実施してほしい」と要望しました。

 ところで特養ホームについては、今回の調査で、一定の研修を受け喀痰吸引などを実施できる「認定特定行為業務従事者」の配置状況や、介護職員による医療行為の状況などが調べられる見込みです。この点について齋藤訓子委員(日本看護協会常任理事)や内田千恵子委員(日本介護福祉士会理事)から「介護職員の医療行為を拡大する狙いがあるのか」という旨の疑念が提示されています。

 前述のように特養ホームについては、「重度者が入所する一方で、医療職の配置が手薄である」という指摘もあり、今後、さまざまな角度からこのテーマが議論されることになりそうです。

「介護の質」と「ケアマネの特定事業所集中減算」はセットで議論せよとの意見も

 また(7)の「介護の質」に関する調査研究は、かねてから継続して実施されているものですが、2016年度には「軽度者も対象に含める」ことや「医療と介護との共通した評価指標の研究」なども行われる見込みです。

 なお、介護の質に関連して鈴木委員は、「質の評価を行えば、『質の高いサービス』を行っている事業所が明らかになる。するとこの事業所に利用者が集中するが、その場合、介護支援専門員の報酬が減算されてしまう(特定事業所集中減算)。これは不合理であり、『介護の質』と『特定事業所集中減算』は、今後セットで考える必要がある」と強調しています(関連記事はこちらこちらこちら)。

 さらに武久委員は、(5)のケアマネジメントについて「多忙なケアマネジャーが、業務の優先度をどう考えているのか」「諸事情を考慮して作成したケアプランを、利用者・家族から『訪問介護だけで良い』などとひっくり返されたケース」なども調べてはどうかとも提案しています(関連記事はこちら)。

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