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診療報酬改定セミナー2024 看護必要度シミュレーションリリース

2018年度介護報酬改定に向けキックオフ、夏までに第1ラウンドの議論終える—介護給付費分科会

2017.4.26.(水)

 2018年度の介護報酬改定に向け、社会保障審議会・介護給付費分科会が26日にキックオフの議論を行いました。

 厚労省老健局老人保健課の鈴木健彦課長は、▼各サービスの主な論点と関係者ヒアリングを夏頃までに行う(第1ラウンド)▼秋から12月にかけて各サービスの具体的な方向性を詰める(第2ランド)▼12月中旬に、報酬・基準に関する基本的な考え方を整理し、とりまとめる▼年末の予算編成(改定率決定)を踏まえて、年明け1-2月に介護報酬改定案の諮問・答申を行う—というスケジュールを明らかにしました。

4月26日に開催された、「第137回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

4月26日に開催された、「第137回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

ケアマネ運営基準や科学的介護、医療・介護連携など、多岐にわたる論点

 報酬改定に向けた各介護サービスの論点は、これまでに社会保障審議会の「介護保険部会」「療養病棟の在り方等に関する特別部会」、経済財政諮問会議、未来投資会議などで指摘・議論された事項をベースに、これから厚労省内で詰めることになります。

 すでに指摘・議論された介護報酬関連事項を眺めると、次のようなものが目立ちます。

(1)通所リハビリや通所介護、認知症対応型津署介護などの居宅サービスについて、共通機能と特徴的な機能を明確化し、一体的・総合的な機能分担・評価体系となるよう検討する

(2)適切なケアマネジメント推進に向けた、ケアマネ事業所管理者の役割の明確化、特定事業所集中減算の見直しなど「居宅介護支援事業所の運営基準」などの見直しを検討する

(3)自立支援・重症化予防推進する観点から、「通所リハビリにおけるリハビリ専門職の配置促進、短時間サービス提供の充実」「退院後早期のリハビリ介入の促進」「職種間・介護事業所間の連携強化」などを図る

(4)中重度者の在宅生活を支えるため、小規模多機能型居宅介護や看護小規模多機能型居宅介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護における人員要件や利用者定員の見直しを検討する(機能強化や効率化などを図る観点)

(5)特別養護老人ホーム内での医療ニーズや看取りにより一層対応できる仕組みを構築する

(6)共生型サービス(障害者施設などでも要介護高齢者を、介護保険サービスでも障害者を受け入れる新サービス)の指定基準などを検討する

(7)介護ロボットやICT化を進める事業所に対する報酬や人員・設備基準の見直しを検討する

(8)軽度者への生活援助サービスにおける人員基準の緩和を検討する

(9)介護医療院(現在、国会審議中の新介護保険施設)の報酬や施設基準などを検討する(関連記事はこちら

(10)介護療養病床から介護医療院などへの転換支援策を検討する

(11)介護職員の処遇改善について、2017年度における処遇改善加算見直しの状況などを踏まえて、引き続き検討する

(12)科学的介護の実現に向けたデータベース構築や、自立支援に向けたインセンティブを検討する(関連記事はこちら

 このうち(6)に関連し、鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)らを中心に「地域共生社会」と「地域包括ケア」との関係に関する質問が数多く出ました。この点、厚労省老健局総務課の日原知己課長は、「高齢者が重度の要介護状態となっても住み慣れた地域での生活を継続できるよう、介護・医療などのサービスを包括的に提供する『地域包括ケア』の考えを、小児や障害者にも拡大していくのが『地域共生社会』である」旨を説明。また田中滋分科会長(慶應義塾大学名誉教授)は「『地域共生社会』は理念であり、『地域包括ケア』はシステム・仕組みである」との説明を行っています。

 今後、具体的な施設基準などを議論する中で、関係性がより明確になっていくと思われます。

 

 また鈴木委員は、一部のサービス付き高齢者向け住宅など向けに不適切な居宅介護サービス提供が行われている点を指摘。次期改定でメスを入れ、適正化しなければ「悪貨が良貨を駆逐してしまう」と指摘しました。次期改定に向けた論点の1つとなりそうです。

介護保険法改正し利用者・被保険者の負担は引き上げ、介護報酬をどう考えるか

 ところで報酬改定論議では、「質の良いサービス提供を求めるために、いかに報酬を手厚くするか」といった点がもっともクローズアップされます。しかし、手厚い報酬を実現するためには「財源」が必要となります。

 費用負担者の立場で出席している本多伸行委員(健康保険組合連合会理事)は、現在、国会で審議中の介護保険法等改正案では▼一部利用者への3割負担導入▼2号保険料のうち被用者保険分の計算への総報酬割の段階的導入―などが盛り込まれ、利用者・被保険者への負担増が行われている点を意識しなければいけないと強調します。

 公的介護サービスの利用者は制度創設から16年間で3.3倍に増加し、65歳以上の第1号被保険者の保険料は2020年度には6771円(創設時の2.3倍)、2015年度には8165円(同2.8倍)に増加すると見込まれます。このように膨張し続ける介護費を賄うために、本多委員の指摘した「利用者・被保険者の負担増」を求めることになったわけです。

 これはとりもなおさず「介護保険制度の維持」や「より公平な負担」を実現するための見直しであり、「介護費の適正化」もこの延長線上に位置付けることができるでしょう。「利用者や被保険者などの負担を重くし、一方で、介護サービス提供者の収入を上げるのではバランスが取れない」と指摘する識者も少なくありません。

 一方で、優れたサービスは相応の報酬で評価されるべきであり、2018年度の次期介護報酬改定は、「介護費の適正化」と「優れたサービスへの重点的な評価」(つまりメリハリの効いた評価)が重要な視点となるでしょう。

 

 また、2018年度は診療報酬と介護報酬の同時改定年であり、2025年に向けて大きな舵取りができる実質的な最後のチャンスとなります。このため、すでに中央社会保険医療協議会と介護給付費分科会の間で、訪問看護や看取り、リハビリなどについて意見交換が行われています(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。武久洋三委員(日本慢性期医療協会)は「特別養護老人ホームでの看取り」など、より具体的な論点を示しており、第1ラウンドから積極的かつ具体的な議論が予想されます。

一部介護事業者・有識者が提唱する新型多機能、鈴木委員は猛反発

 ところで、一部の介護事業所や有識者で構成される「地域包括ケア推進研究会」では、昨年(2016年)、小規模多機能型と定期巡回のサービスを柔軟に組み合わせた「地域居住総合支援拠点(仮称)」という新サービス形態を提言しています。要介護3以上を対象として、現在の小規模多機能型よりも多くの利用者に▼通い▼住まい▼訪問—サービス(新型多機能サービス)を提供する仕組みを中心に、地域の居宅サービス事業所が参加し、複合的なサービ提供を可能とすることを目指しています。

 しかし、鈴木委員はこの構想について、「私が得た情報によれば小規模多機能型や定期巡回サービスに求められる『地域密着』という理念に合わないのではないか。大規模社会福祉法人や大手営利企業が、『介護の地域独占』を目指しているように思われる。介護サービスの多様性を妨げ、健全な競争による質の向上・効率化という方向にも反すると考えられ、認めることはできない」と強く批判しました。

 新型サービスを介護保険給付に位置付けるためには、介護保険法の改正が必要となるため、2018年度の報酬改定に向けては、この新型多機能などの議論はなされません(法改正で新型サービスが創設された後に、報酬論議が行われる)。しかし将来的には、こうした新型サービスのメリット・デメリットなどを考慮した丁寧な議論が行われることになりそうです。

  
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