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介護職員の処遇改善、加算では根本解決にならず本体報酬での対応が必要―介護給付費分科会

2017.4.4.(火)

 介護職員の処遇改善について、現在の加算では根本的な対応ができない。介護報酬本体で対応し、給与表の改訂などにつなげていく必要がある―。

 3月31日に開催された社会保障審議会・介護給付費分科会では、こういった意見が複数出されました。2018年度の介護報酬改定に向け、最重要論点の1つになりそうです。

3月31日に開催された、「第136回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

3月31日に開催された、「第136回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

処遇改善加算、事務部門が感じる負担の具体的内容把握も必要

 厚生労働省老健局老人保健課の鈴木健彦課長は、介護給付費分科会に2016年度の「介護従事者処遇状況等調査」結果を報告。そこからは、2016年9月時点で旧「介護職員処遇改善加算I」を届け出ている事業所・施設が70.6%に上る(加算全体でみると90.0%)▼処遇改善加算を届け出ている事業所・施設全体でみると、常勤・月給の介護職員について平均9530円の給与増が行われている―ことなど▼が分かりました。

介護施設・事業所の70.6%が介護職員処遇改善加算Iを、16.4%が加算IIを取得するなどし、全体の9割が処遇改善加算を取得している

介護施設・事業所の70.6%が介護職員処遇改善加算Iを、16.4%が加算IIを取得するなどし、全体の9割が処遇改善加算を取得している

 

 ところで給与増の方法を見ると、もっとも多いのは「定期昇給」の69.7%、ほか「手当の引き上げや新設」29.9%、「賞与などの引き上げや新設」14.8%などとなっており、「給与表の改訂による賃金引上げ」も16.8%あります。

2015年9月から16年9月にかけて、定期昇給による給与増を行った介護施設・事業所がもっとも多く69.7%にのぼっている。またベアアップ(給与表改定による賃金引上げ)も16.4%ある

2015年9月から16年9月にかけて、定期昇給による給与増を行った介護施設・事業所がもっとも多く69.7%にのぼっている。またベアアップ(給与表改定による賃金引上げ)も16.4%ある

 

 この点について鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)は、「根本的な処遇改善をするためには給与表改訂が不可欠だが、加算はいつなくなるか分からず、介護事業所・施設は不安に感じており実施できていない。根本的な処遇改善のためには介護報酬本体での対応が必要である」と強く要望。また鈴木委員は「日本の将来において最も重要な少子化対策のために、給与増のみならず『仕事と子育ての両立』に資する対策も、処遇改善と認めるべき」とも提案しています。

 また伊藤彰久委員(日本労働組合総連合会総合政策局生活福祉局長)は、キャリアパス要件Iを満たせない理由の中で「任用要件・賃金体系の内容について就業規則などの書面で整備し、すべての介護職員に周知することが難しい」という回答が29.4%ある点について、「どのような事業所がこういう回答をしているのか。小規模事業所に集中しているのか」を調べる必要があると指摘。さらに、具体的にどのような点が困難なのか(就業規則を定めることが困難なのか、周知が困難なのか、など)も調査すべきと提案しています。

老健施設の稼働率、特養ホームでの看取りなども次期改定の論点に

 31日の分科会で、鈴木老人保健課長は2015年度介護報酬改定の「効果検証・調査研究」調査結果(2016年度調査分)についても報告しました。例えば、▼在在宅復帰率の高い介護老人保健施設では、看取りの割合も高いリハビリテーションマネジメント加算のハードルとして「医師のリハビリ会議への参加が困難」といった点があげられる―ことなどが明らかになっています。

在宅復帰率の高い施設では、看取りにも積極的であることが分かった

在宅復帰率の高い施設では、看取りにも積極的であることが分かった

リハビリマネジメント加算IIを届け出るにあたってのハードルとして「医師のリハビリ会議への参加が困難」があげられる

リハビリマネジメント加算IIを届け出るにあたってのハードルとして「医師のリハビリ会議への参加が困難」があげられる

  

 一方で介護老健施設では、在宅復帰率の高い施設ほど「稼働率」が低いことも明らかになっています。鈴木委員は「在宅復帰率を高めれば稼働が下がり、収入が低下してしまう。このため強化型への移行や加算届け出を躊躇する施設もある。改善する必要があるのではないか」と指摘しています。もっとも、厚労省老健局老人保健課の担当者は「「在宅復帰に力を入れて間もない施設もある。以前から在宅復帰に力を入れ、信頼を勝ち得ている施設では、すぐに次の入所が決まっているようだ」とコメントしており、より詳細な分析が待たれます。

在宅復帰率の高い施設では、病床稼働率が低くなる傾向にあることが明確に表れている

在宅復帰率の高い施設では、病床稼働率が低くなる傾向にあることが明確に表れている

 

 また鈴木委員は、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)の施設内死亡の64.7%が「老衰」で亡くなっている点などについて「老衰について看取りが可能な体制を構築していく必要がある。翻って配置医は健康管理などを主な役割と考えているが、時代に合わなくなっている。配置医の役割と処遇の見直し、近隣医療機関の医師と連携した看取り方針の策定などを検討していく必要がある」と強く要望しています(関連記事はこちら)。

 

 ところで訪問看護に関する調査結果を見ると、22.0%のステーションでは「リハビリ専門職のみが訪問を行い、看護師による訪問は基本的に行っていない」と回答しています。この点ついて齋藤訓子委員(日本看護協会常任理事)は「モラルを疑う。訪問看護ステーションに求められる本来の姿とかけ離れており、注意喚起が必要である」と非難しました(関連記事はこちら)。

リハ職による訪問を実施している訪問看護ステーションのうち、22%では看護師による訪問が行われていない

リハ職による訪問を実施している訪問看護ステーションのうち、22%では看護師による訪問が行われていない

介護職と医療職とで言葉の認識にズレ、具体的な数字を用いた情報共有を

 なお、入院医療機関とケアマネジャーとの間での情報共有が必ずしも十分に進んでいない点について鷲見よしみ委員(日本介護支援専門員協会会長)は「入院医療機関における『退院準備』に必要な期間と、在宅サービスにおける『受け入れ準備』に必要な期間との認識にズレがあるのかもしれない。予定入院では、入院時からケアマネと連携する必要がある」と指摘しています。

2015年度介護報酬改定の検証調査では、ケアマネが医療機関からの情報収集に苦労している状況が明らかになっている

2015年度介護報酬改定の検証調査では、ケアマネが医療機関からの情報収集に苦労している状況が明らかになっている

 

 この点、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)マネジャーの湯原淳平も同様な指摘を、今年1月21日に開催したプレミアム新春セミナーで行っています。高度急性期・急性期病院と回復期病院、慢性期病院、介護施設・事業所では、同じ「少し」という言葉を使っても、イメージする実際の日数は相当異なっています。今後、医療・介護連携の重要性がますます高まる中では、具体的な数字(●日程度など)を用いたコミュニケーションが必要となってくるでしょう。

  
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