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介護職員処遇改善加算の新区分、キャリアパス要件IIIの内容や手続きを詳説―厚労省

2017.3.13.(月)

 2017年度の臨時介護報酬改定で創設された介護職員処遇改善加算の新区分(新加算I)では、キャリアパス要件IIIとして(1)経験に応じた昇給の仕組み(2)資格などに応じた昇給の仕組み(3)一定の基準に基づき定期亭に昇給を判定する仕組み―のいずれかを事業所内で構築し、それを就業規則などに整備し、全介護職員に周知することが必要である。

 厚生労働省は9日に、通知「介護職員処遇改善加算に関する基本的考え方並びに 事務処理手順及び様式例の提示について」を発出し、このような考え方を改めて明確にしました。

 また賃金改善の方法について、従前の▼実施時期▼1人当たりの賃金改善見込み額▼項目―のほか、「対象職員」に関する具体的な記載も必要となります。

キャリアパス要件III、「介護福祉士取得」がキャリアのゴールとならないように注意

 安倍晋三内閣が昨年(2016年)6月に閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」などで打ち出した方針に則り、介護職員処遇改善加算に新たな区分が創設されました(新区分が加算Iとなり、他の区分は準にI→II、II→III、III→IV、IV→Vとなる見込み)(関連記事はこちらこちらこちら)。

介護職員処遇改善加算の概要

介護職員処遇改善加算の概要

 新加算Iを取得するためには、次の要件をすべて満たすことが求められます。

▼「月額3万7000円相当」の処遇改善を行う

▼キャリアパス要件I(既存)を満たす:▽介護職員の任用の際における職位・職責・職務内容などに応じた任用などの要件を定める▽職位・職責・職務内容などに応じた賃金体系を定める▽これらについて就業規則などの明確な根拠規定を書面で整備し、全介護職員に周知する―のすべてに適合する

▼キャリアパス要件II(既存)を満たす:▽資質向上の目標および、「資質向上計画に沿った研修・技術指導などを行い、介護職員の能力評価を行う」計画または、「資格取得支援」(研修受講のための勤務シフトの調整、休暇の付与、費用援助など)計画を策定し、これに係る研修の実施・研修機会の確保を行う▽これについて全介護職員に周知する―のすべてに適合する

▼キャリアパス要件III(新設)を満たす:後述

▼職場環境要件(既存)を満たす:2015年4月から届出月の前月までに実施した処遇改善(賃金改善を除く)内容を全介護職員に周知する

 今般の通知では、キャリアパス要件IIIの具体的な内容を次のように明らかにしました。これまでに厚労省老健局老人保健課の鈴木健彦課長が示した内容を明文化したものと言えます。

●介護職員について、次の(1)から(3)のいずれかに該当する昇給する、もしくは昇給を判定する仕組みを設けている。

(1)経験に応じて昇給する仕組み:▽勤続年数▽経験年数―などに応じて昇給する仕組み

(2)資格などに応じて昇給する仕組み:▽介護福祉士▽実務者研修修了者―などの取得に応じて昇給する仕組み(ただし、介護福祉士資格を有して当該事業所や法人で就業する者についても昇給が図られる仕組みであることが必要)

(3)一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み:▽実技試験▽人事評価―などの結果に基づき昇給する仕組み(ただし、客観的な評価基準や昇給条件が明文化されていることが必要)

 またこれらの内容について、就業規則などの明確な根拠規定を書面で整備し、全介護職 員に周知していることも求められます。

 このうち(2)の「介護福祉士資格を有して当該事業所や法人で就業する者についても昇給が図られる仕組み」とは、「介護福祉士資格を保有する新人職員については、その上に別の資格をターゲットとするキャリアを設けたり、(1)や(3)と組み合わせるなどする」ことを意味します。

 

 また下位加算の取得要件は、次のように整理されており、従前からの変更はありません。

▼加算II(従前の加算I):キャリアパス要件Ⅰ、キャリアパス要件Ⅱ、職場環境等要件の全てを満たす

▼加算III(従前の加算II):キャリアパス要件Ⅰまたはキャリアパス要件Ⅱのどちらかを満 たすことに加え、職場環境等要件(2008年10月から届出月の前月までに実施した賃金改善を除く処遇改善の内容を全介護職員に周知する)を満たす

▼加算IV(従前の加算III):キャリアパス要件Ⅰ、キャリアパス要件Ⅱ、職場環境等要件(同) のいずれかの要件を満たす

▼加算V(従前の加算IV):キャリアパス要件Ⅰ、キャリアパス要件Ⅱ、職場環境等要件のいずれの要件も満たさない

 なお、2017年度当初から処遇改善加算を取得しようと考える事業所は、この4月15日(2017年4月15日)までに計画書と添付書類を届ければ、4月当初に遡って加算を算定することが可能です(関連記事はこちら)。

介護職員処遇改善加算は、サービス種類ごとに加算率が異なる(介護従事者の割合を勘案)

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処遇改善加算と職場定着支援助成金、併用可能なケースもある

 今般の通知では、新加算I創設のほかにも、処遇改善加算の届け出などについていくつかの見直しを行っています。

 まず介護職員処遇改善計画書に記載する事項のうち、地銀銀改善を行う方法についてです。従前から▼加算の見込み額▼賃金改善の見込み額▼賃金改善実施期間▼賃金改善を行う項目(基本給、手当、賞与、一時金など)▼実施時期▼1人当たり賃金改善見込み額―を計画書に記載することが必要でした。2017年度からは、これらに加え「対象職員」を記載することになります。

 処遇改善加算の内容を審議する社会保障審議会・介護給付費分科会では、処遇改善加算を届け出ない大きな理由の1つとして、「処遇改善の対象とならない他職種との兼ね合い」が指摘されています。事業所において、賃金改善が介護職員にとどまっているのか、他職種にも及んでいるのか(加算の対象にはなりません)が、今後、より明らかになっていくと考えられます。

 

 また、厚労省は都道府県などに、「加算を算定している事業所などが加算の取得要件を満たしているかを確認する」ことを求めています。例えば、介護職員処遇改善計画書について「処遇改善加算の見込額よりも、賃金改善の見込額が上回っているか」、処遇改善実績報告書について、「処遇改善加算総額よりも、賃金改善所要額が上回っている」などを確認する必要があります。

 さらに、加算取得をしない事業所が一定程度存在していることを踏まえ、厚労省は都道府県などに対して、「リーフレットの活用などにより、事業者へ加算を周知し、加算の申請が適切に行われるよう配慮してほしい」と要望。あわせて、処遇改善の目的は「介護職員の確保および職場定着」であることに鑑み、「職場定着支援助成金(個別企業助成コース)介護労働者雇用管理制度助成」(介護労働者のために賃金制度を整備し、離職率の低下に取り組む事業主に対する助成)について、加算と併せて活用できるケースがあることなどを、都道府県から事業所に助言するよう求めています。

 
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