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介護従事者の処遇改善に向け、来年度(2017年度)に臨時の介護報酬改定―介護保険部会(2)

2016.9.8.(木)

 「ニッポン一億総活躍プラン」に盛り込まれた「介護人材の処遇について、月額1万円相当の改善」を実現するために、来年度(2017年度)に臨時の介護報酬改定を行う―。

 7日に開かれた社会保障審議会の介護保険部会で、厚生労働省老健局老人保健課の鈴木健彦課長は、このような方針を明示しました。

 詳細については社会保障審議会の介護給付費分科会で詰めることになりますが、費用負担側からは「報酬改定を行うなら効率化もセットで行う必要がある」という意見も出ており、どのような改定内容になるのか今後の議論が注目されます。

9月7日に開催された、「第63回 社会保障審議会 介護保険部会」

9月7日に開催された、「第63回 社会保障審議会 介護保険部会」

処遇改善のための臨時改定、具体的には介護給付費分科会で検討

 安倍晋三内閣が6月2日に閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」では、介護離職ゼロを打ち出し、その一環として「介護人材の処遇について、2017年度からキャリアアップの仕組みを構築し、月額平均1万円相当の改善を行う」方針を打ち出しました。

 この点について厚労省はこれまで具体的な手法を明確にしていませんでした(介護報酬改定を行うのか、別の補助金などを創設するのかなど)が、7日の介護保険部会で鈴木老人保健課長は「介護報酬の中で行う」考えを明言。来年度(2017年度)に臨時の介護報酬改定が行われることになります(関連記事はこちら)。

 ただし、「介護職員処遇改善加算の見直しを行うのか」など、具体的な手法は今後の介護給付費分科会で議論することになります。この点について、費用負担者である佐野雅宏委員(健康保険組合連合会副会長)は、「報酬改定を行うのであれば、効率化とセットで行う必要がある」と指摘しており、「処遇改善に関する事項だけにとどまるのか」「他の報酬項目のついても一定の見直しを行うのか」など、今後の給付費分科会の議論に注目が集まります。

介護ロボットなど導入する事業所では、人員配置基準などを緩和してはどうか

 7日の介護保険部会では、(1)介護人材の確保(2)認知症対策―も議題となりました。

(1)の人材確保については、(a)ロボットやICTを活用する事業所における「介護報酬上の人員・設備基準の緩和」(b)書類の作成・提出義務軽減(c)各事業所における介護手順・基準の明確化―などを進めてはどうかと厚労省が提案しました(関連記事はこちら)。

(a)は、ロボットやICTによって介護従事者の負担が軽減されることを見据え、「人員配置基準などを一定程度緩和できるのではないか」という内容で、具体的には介護給付費分科会で検討する方針です。

介護ロボットの開発支援に向けた厚労省、経済産業省の動き

介護ロボットの開発支援に向けた厚労省、経済産業省の動き

 この提案のうち「ロボット・ICTの導入推進」に反論は出ていません。ただし、ダイレクトに人員配置基準緩和と結びつけている点には賛成意見も出ているものの(井上隆委員:日本経済団体連合会常務理事や佐野委員ら)、「拙速ではないか」との指摘も出ています。後者の1人である齋藤訓子委員(日本看護協会常任理事)は「ヒトが担わなければ行けない業務、ロボットでも可能な業務などに類型化し、例えば看護配置を緩和できるかどうかを調査研究することから始めるべき」と指摘。伊藤彰久委員(日本労働組合総連合会総合政策局生活福祉局長)も「安全性の検証から始めてはどうか」と述べています。

 またロボット・ICTの導入には相当の初期費用がかかることから、補助を求める意見も多くの委員から出されています。

 なお東憲太郎委員(全国老人保健施設協会会長)は、介護従事者の負担を軽減し、介護業務の魅力を高めることが新規人材の確保にとって重要とし、「介護助手」(例えば元気な高齢者にボランティアを求める)を導入し、介護福祉士は「専門職でなければできない業務に専念する」ことを提案しています。医療では、すでに医師の事務作業を補助する人材を配置した場合の報酬(医師事務作業補助体制加算)などを導入し、医療現場で高い評価を受けているといいます。深刻な介護人材不足を考えたとき、業務分担を推進する東委員の提案は、介護給付費分科会などで積極的に検討する必要があると言えます。

 また(c)の提案について厚労省老健局振興課の三浦明課長は、介護事業所・施設では中堅どころの職員から新人に向けた介護技術の伝授など引き継ぎが十分に行われておらず、自身の技術に不安を覚える職員も少なからずいることから、「各施設・事業所で蓄積された経験則を明確化する」ようなイメージを説明しました。例えば、A施設において長年の介護業務の中で得られたコツなどを「マニュアル」のように整備することができれば、新人職員の教育が相当円滑になると期待できます。

 この点について栃本一三郎委員(上智大学総合人間科学部教授)は、「ドイツでは臨床的に『効果がある』と判定された介護手法・技術をスタンダードとして定めている」ことを紹介。将来的に、我が国でもこうした研究が進むことが期待されます。

認知症対策、医療・介護連携を強化するため、都道府県が市町村を支援

 (2)の認知症施策については、厚労省老健局総務課認知症施策推進室長の宮腰奏子室長から、次のような論点が提示されました。

▽介護保険法などに新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)の基本的な考え方(普及・啓発、介護者支援、本人視点の重視など)を盛り込む

▽認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護などを提供するため、介護保険事業(支援)計画などに「その時の容態にもっともふさわしい場所で適切なサービス提供を行う循環型の仕組み」構築を盛り込む。とくに医療連携のため、都道府県による市町村への支援を強化する

▽認知症の人の「介護者」への支援を充実する

▽認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりを推進する

▽若年性認知症対策を強化する

 認知症に於いては早期発見・早期治療が重要とされ、認知症初期集中支援チーム(2018年度までに全市町村に設置)や認知症疾患医療センターの整備などが進められています。この点について、花俣ふみ代委員(認知症の人と家族の会常任理事)は「早期発見をした後のサポートが不十分であり、その点への対策も強化すべき」と指摘。また鈴木隆雄委員(桜美林大学大学院自然科学系老年学研究科教授)は「予防を推進する視点が欠けている。ハイリスク者を抽出できるシステムの構築が必要である」と提案しました。

 また武久洋三委員(日本慢性期医療協会会長)は、合併症を持つ認知症高齢者に適切に対応するために、「一般病床・療養病床の医師」と「精神科の医師」が共同して診療した場合の評価(診療報酬での対応など)が必要と述べています。

 
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