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要介護認定の「更新」有効期間、上限を現在の24か月から36か月に延長―介護保険部会(1)

2016.9.7.(水)

 介護保険の要介護認定事務を簡素化するために、更新認定有効期間の上限を現在の24か月から36か月に伸ばすとともに、状態が安定している高齢者については2次判定の手続きを簡素化する―。

 こういった方針が7日に開かれた社会保障審議会の介護保険部会で概ね了承されました(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

 上限延長などの実施時期はこれから議論されますが、厚生労働省老健局老人保健課の鈴木健彦課長は「できるだけ早く実施したい」とコメントしています。

9月7日に開催された、「第63回 社会保障審議会 介護保険部会」

9月7日に開催された、「第63回 社会保障審議会 介護保険部会」

「新規・区分変更」と「更新」とのバランスをとる

 介護保険では、要介護・要支援状態と判定されなければ給付を受けることはできません。介護費の膨張を避け、真に必要な人に公的介護サービスが行き届くようにするためです。

 しかし、この認定事務が非常に煩雑で市町村(保険者)の負担になっているとの指摘があり、厚労省は認定の有効期間延長などを順次行っています。現在、「新規認定」については12か月(原則は6か月)、「区分変更認定」についても12か月(原則は6か月)、更新認定については24か月(原則は12か月)まで有効期間を延長することが可能です。

 厚労省は今般、さらなる事務の簡素化を行い、市町村の事務負担を軽減する必要があると考え、要介護認定について次の2つの見直しを提案しました。

(1)更新認定の有効期間の上限を、現在の「24か月」から「36か月」に引き上げる

(2)『状態安定者』については、2次判定の手続きを簡素化することを可能とする

 (1)は、「新規・区分変更認定」と「更新認定」とのバランスをとるものと考えることができます。新規・区分変更認定では、有効期間上限の12か月を経過した時点で4割強(新規では42.3%、区分変更では47.3%)の人で要介護度が変わりません。これに対して、更新認定では有効期間上限の24か月を経過した時点で6割の人で要介護度が変わっていないのです。このため、更新認定の有効期間をこれまで以上に延ばすことができるのではないかと考え、「要介護度が変わらない人の割合」新規・区分変更認定と同程度の4割強程度になる「36か月」(40.6%の人で要介護度が変わらない)に延長してはどうかと提案したものです。

 この提案に対して明確な反対意見は出ておらず、鈴木老人保健課長は「介護保険部会として概ね了承された」との受け止めをしています。

 ただし佐野雅宏委員(健康保険組合連合会副会長)らは「要介護認定の精度向上とセットで行う必要があるのではないか」と注文。東憲太郎委員(全国老人保健施設協会会長)は「期間を延長すると、要介護度が悪化した場合には区分変更申請を行えばよいので問題はないが、改善した場合に区分変更申請をしてくる人がいるだろうか」と課題も提示しました。

 こうした点を踏まえて栃本一三郎委員(上智大学総合人間科学部教授)は「ケアマネジャーが利用者の状態チェックをきちんと行うことが必要である。それを前提として認定期間の延長は進めるべき」と提案しています。

状態安定者では、2次判定の手続きを簡素化

 (2)は、認定事務そのものを簡素化する提案です。厚労省の分析によれば、ある年に一次判定(コンピュータチェック、これの申請者を100とする)で要介護X(Xは1-5)とされた人のうち、83.3%の人は2次判定(認定審査会でのチェック)でも要介護Xとなります(1次から2次で変更なし)。その要介護Xの人が、翌年の更新において、1次判定で要介護Xと判定される割合は45.5%(正確には最初の100のうちの45.5%)、さらに2次判定で要介護Xと判定される割合は43.7%(これも同様)となります。つまり、一定程度(ここでは43.7%)の人は、状態が安定し、要介護度が長期間変わらないと考えられるのです。

 こうした点を踏まえて厚労省は、状態安定者の2次判定手続きの簡素化を提案しています。「状態安定者」をどのように定義するかは、これから要介護認定の実態を研究する中で検討されます。また、鈴木老人保健課長は「法律上、1次判定と2次判定を経て要介護・要支援状態にあるかを判定することになっており(介護保険法第27条など)、2次判定を省略することはできない。2次判定の手続きの中で簡素化できる部分がないかを検討していく」と述べています。

 また見直しの実施時期について鈴木老人保健課長は、「できだけ早めに実施したい」「(1)と(2)は同時に行う」ともコメントしています。

部会では「主治医意見書が遅い」との指摘も

 ところで2次判定においては、1次判定結果(コンピュータチェック)とともに、主治医の意見書が基礎資料となります。

 この点について陶山浩三委員(UAゼンセン日本介護クラフトユニオン会長)や桝田和平委員(全国老人福祉施設協議会介護保険事業等経営委員会委員長)ら、多くの委員から「主治医意見書が遅い」との指摘が出されました。主治医意見書の到着が遅いため、2次判定が行えず、結果として要介護認定の期間が伸びてしまうケースが少なくないというものです。

 要介護認定結果が出ていなくとも、暫定ケアプランという形で介護保険サービスを受けることは可能ですが、例えば軽度者に対しては、事業所側が暫定ケアプランでのサービス提供を躊躇する傾向にあるといいます。例えば「要介護1」なのか、「要支援2」なのかで区分支給限度基準額はもちろん、受けられるサービスの内容が異なるためです。この点について、医師である武久洋三委員(日本慢性期医療協会会長)や鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)は「困った問題である」と陳謝した上で、「ICTの活用による主治医意見書作成の簡素化」や「かかりつけ医の活用(大学病院の医師では書き慣れていない人も少なくない)」などを行うよう求めています。

 また要介護認定については「地域差」があることも知られており、多くの委員から「格差の是正が必要」との指摘も出されています。

 
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