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GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

特養での医療ニーズ対応を強化すべく、配置医の夜間診療などを高く評価―介護給付費分科会(1)

2017.11.15.(水)

 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム、特養)の配置医師による早朝・夜間や深夜の診療を、2018年度介護報酬改定で新たに評価する。また特養に限らず、介護保健施設などで入所者に身体拘束を行った場合の減算をより厳しく見直し、「身体拘束等の適正化のための対策を検討する委員会」を定期的に開催しない場合などにも減算する―。

 11月15日の社会保障審議会・介護給付費分科会の会合で、厚生労働省はこうした案を示しました。そのほか、小規模な特養の基本報酬の引き下げなども提案しました。

 この日は特養のほか、▼短期入所生活介護(ショートステイ)▼特定施設入居者生活介護▼認知症対応型共同生活介護▼認知症対応型通所介護―の見直し案についても議論しました。そちらは改めてお伝えします。

11月15日に開催された、「第151回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

11月15日に開催された、「第151回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

入所者の医療ニーズへの「的確な対応」促す

 特養は、重度の要介護高齢者が入所する生活施設で、介護老人保健施設(老健)や介護療養型医療施設(介護療養病床)と合わせて介護保険施設と位置付けられています。要介護者の中でも、居宅での生活が困難な人を支える施設とされ、2015年4月以降は「要介護3」以上の要介護者以外は原則入所できません。

 今年(2017年)4月時点で全国に9726施設あり、57.7万人が利用しており、入所者の要介護度(2015年10月時点)は89.5%が「要介護3」以上です。

 そのため特養では、重症者の積極的な受け入れや、施設内での看取り期(死亡30日前から死亡日まで)の対応の充実が、介護報酬の加算などで後押しされてきました。ただ、人員基準(介護報酬を算定するために最低限満たす基準)では、医師の常勤配置が求められていません。このため、入所者の夜間の緊急時には、連絡を受けた配置医師が診察(自施設を訪問)している施設がある一方で、配置医師に連絡を取らず、救急車を呼ぶことを原則にしている施設もあるのが実情です。

 こうした状況を踏まえて厚労省は11月15日の介護給付費分科会で、入所者の医療ニーズに「より的確に対応できる」特養を増やすための5つの案を示しました。

(1)配置医師が施設の求めに応じて、早朝・夜間または深夜に施設を訪問し、入所者の診療を行うことを新たに評価する
(2)医療提供体制を整備した上で、実際に施設内で看取った場合、現行の看取り介護加算よりも高く評価する
(3)常勤医師配置加算の要件を見直す
(4)夜間の看護職員の配置などを、現行の夜勤職員配置加算よりも高く評価する
(5)入所者の急変時などの対応方針を定めておくことを、すべての特養に義務付ける

配置医師への新評価は事前の「取り決め」が前提

 このうち(1)は、配置医師による夜間などの診療を評価する提案です。ただし、▼入所者の病状を配置医師に伝える方法や、診察を依頼するタイミングなどの「具体的な取り決め」をしておく▼医師を複数名配置するか、配置医師と協力病院等の医師が連携して、施設の求めに24時間対応できる体制を確保しておく▼「看護配置25対1以上」などの施設基準を満たして看護体制加算(II)を算定している―といった要件を満たす場合に限り、評価するとしています。

 また(2)の施設内看取りの手厚い評価は、(1)の要件を満たす施設に限り、看取り介護加算(入所者の看取りに向けた体制整備などへの評価)の単位数を通常より高くするものです(現在、施設内で看取った日に算定できる加算は1280単位)。厚労省は、死亡日の前日・前々日に680単位ずつ算定できることも紹介しており、(1)の要件を満たす施設では、前日・前々日に算定できる加算の単位数も通常より高く設定されるかもしれません。

 (3)の常勤医師配置加算(1日につき25単位)の見直し案は、「ユニット型施設」と「従来型施設」を同一建物内に併設するケースで、それぞれの施設がこの加算を算定しやすくするものです。

 ユニット型と従来型の両方でこの加算を取りたい場合、今のルールでは、「常勤専従の医師」をそれぞれに1人以上(計2人以上)配置しなければなりません。厚労省は、同一建物内の施設が一体的に運営されていて、両方の施設の入所者の健康管理などが適切に行えるのであれば、「全体として、常勤専従医師1人以上の配置」でそれぞれ加算を算定できるように、要件を緩和してはどうかと提案しています。

 (4)の夜勤職員配置加算(定員30人以上の施設なら、定員数などに応じて1日につき13-27単位)は現在、介護職員か看護職員の夜間配置を評価しています。厚労省は、現行要件を満たし、さらに「たん吸引」などを実施できる「認定特定行為業務従事者」か「看護職員」を配置している施設を、より高く評価するとしています。夜勤職員配置加算は短期入所生活介護(ショートステイ)にもある評価で、厚労省はショートステイにも同様の評価を新設したい考えです。

身体抑制の適正化目指して研修実施や対策の検討求める

 11月15日の介護給付費分科会で厚労省は、入所者への身体拘束廃止に向けて、施設側にさらなる取り組みを促す見直し案も示しています。

 特養などの入所者に対して、身体拘束などの行動を制限する行為を行うことは、「当該入所者または他の入所者等の生命または身体を保護するために緊急やむを得ない場合」を除いて禁止されています。やむを得ず身体拘束などを実施した場合には、その態様や時間、入所者の心身の状況、やむを得ない理由を記録することが求められており、その記録を怠った特養や老健では、身体拘束廃止未実施減算として、入所者全員の基本報酬から毎日5単位ずつが減算されます(記録を行わなかった月の翌月から、改善が認められた月まで)。

 厚労省の見直し案は、この減算をより厳しくするものです。具体的には、記録を怠った場合だけでなく、▼身体拘束などの適正化のための対策を検討する委員会を、少なくとも3か月ごとに開き、その結果を介護職員やその他の従事者に周知徹底させる▼身体拘束などの適正化のための指針を整備する▼介護職員その他の従事者に対して、身体拘束などの適正化のための研修を定期的に行う―のいずれかが欠けた場合、この減算が適用されることになりそうです。

 さらに、減算幅を1日5単位から、基本サービス費の一定割合へと見直します。「何%」減算するかは未定ですが、今以上に厳しくなることは間違いありません。

 その上で厚労省は、この減算を特養や老健だけでなく、認知症対応型共同生活介護や、特定施設入居者生活介護、そして来年(2018年)4月に創設される介護医療院の基本報酬にも適用させる方針を示しています。

 こうした方向性に対して、介護給付費分科会の委員から反対はありませんでした。特に、身体拘束廃止に向けた改善の必要性は複数の委員が指摘しており、「身体拘束だけでなく、虐待も委員会を開いて検証することが求められる時代だ」(東憲太郎委員:全国老人保健施設協会会長)、「拘束廃止は重要だが、一方で転倒や転落リスクが高まる。そういうリスクの評価はしなくていいのか」(鈴木邦彦委員:日本医師会常任理事)といった声も上がりました。

入所者の一時的な在宅復帰時、居宅サービスを施設から提供

 11月15日の介護給付費分科会で厚労省は、(1)特養の利用者が外泊した際に在宅サービスを利用しやすいように評価を新設する(2)小規模特養の基本報酬を引き下げ、通常の特養と同じにする(3)外部のリハビリテーション専門職と連携した自立支援・重度化防止の取り組みを評価する(4)障害者が入所者数の5割以上を占め、常勤の「障害者生活支援員」を2人以上配置する施設を、より手厚く評価する(5)「ユニット型準個室」という名称を「ユニット型居室」に改め、入所者の誤認を防ぐ(実際には天井や壁に隙間が空いていることもある)―といった見直し案も示しています。

 このうち(1)の外泊時に関する評価の新設は、入所者が一時的に自宅に帰ることを認め、自宅療養中に特養から在宅サービスを提供する場合に、基本サービス費の代わりに「一定の単位数」を算定できるようにするものです。

 状態が安定した入所者が、一時的に自宅へ帰るケースでは、訪問介護などの居宅サービスを受けられない決まりになっています。そこで厚労省は、入所者の自宅を特養の介護職員らが訪問し、必要なサービスを提供するのを介護報酬で新たに評価することで、一時的な在宅療養の期間中にも必要なサービスを届けたい考えです。特養だけでなく、老健にも同様の評価を設けるとしています。ただし、この評価を受けられるのは1か月のうち6日までで、外泊の「初日」と「最終日」は算定対象外です。

 なお、実際に入所者の自宅に訪ねるのは、施設が委託した「外部」の訪問介護事業所の職員でも構いません。その場合には、介護報酬を特養などの施設側が算定し、委託した業務にふさわしい費用を外部事業者に支払うことが想定されます(外部事業者は介護報酬を請求しない)。

小規模特養の基本報酬を通常規模と同水準に見直し

 (2)の小規模な特養(定員30人)の基本サービス費を引き下げる案は、来年度(2018年度)以降に新設される施設について、通常規模の特養(定員31人以上)と同額に見直すものです。

 例えば入所者が「要介護3」の場合、1日当たりの基本サービス費は、通常規模なら682単位、小規模なら830単位と差があります。今年度(2017年度)の介護事業経営実態調査では、通常規模の特養の収支差率(高いほど利益を出しやすい)が1.6%だったのに対し、小規模の特養は4.2%と高水準でした。

 厚労省の提案は、この調査結果を踏まえたもので、既存の小規模な施設や、「経過的地域密着型介護福祉施設」(2005年度以前に開設した定員26-29人の特養)の報酬水準も、一定の経過期間を置いた上で、基本サービス費を通常規模の特養とそろえるとしています。

 通常規模の特養の収支差率(1.6%)は、昨年度(2016年度)の状況を調べたもので、15年度と比べて0.9ポイント悪化していました。11月15日の会合では、瀬戸雅嗣委員(全国老人福祉施設協議会理事・統括幹事)がこの結果に言及し、「このままでは特養が崩壊する」として、特養全体の基本サービス費の引き上げを強く求めました。また、既存の小規模の特養の基本サービス費を通常規模とそろえる方向性に理解を示したものの、過疎地域にある施設への配慮や、「最低6年」の経過措置を要望しました。

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