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定期巡回型サービス提供の“不適切事例”に対策―第154回介護給付費分科会(2)

2017.12.4.(月)

 定期巡回・随時対応型訪問介護看護(定期巡回・随時対応サービス)事業所が、「地域の利用者」にもサービスを提供しなければならないことを明確にする―。

 12月1日の社会保障審議会・介護給付費分科会で厚生労働省は、こうした方針も示しました。「同一敷地内の集合住宅の居住者」のみにサービスを提供している事業者もいるためで、「利用者の意にかかわらず、『同一敷地内等の居宅サービス事業所』のみをケアプランに位置付けてはならない」旨も明確にすることで、“不適切なサービス提供”を防ぐ考えを示しています。

 定期巡回・随時対応サービスに関する規定の明確化を含めた「運営基準の改正案」は同日、おおむね了承されています。また厚労省は「運営基準の改正案」とは別に、医療機関などとの連携に積極的な居宅介護支援事業所(ケアマネ事業所)を手厚く評価する案も示しています。

12月1日に開催された、「第154回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

12月1日に開催された、「第154回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

サービス利用が入居条件のサ高住などは「是正すべき」

 定期巡回・随時対応サービスは、訪問介護員等による「定期巡回サービス」(1日複数回の訪問ケア)と「随時対応サービス」(利用者の求めに応じた随時の訪問ケア)、訪問看護サービスを併せて提供する地域密着型サービスで、医療・介護ニーズが高い重度者の在宅療養を支える役割が期待されています。

 来年度(2018年度)の介護報酬改定に向けて、介護保険サービスごとの指定基準見直しの方向性を整理した「運営基準の改正案」には、定期巡回・随時対応サービスに関して、【1】地域へのサービス提供の推進【2】オペレーターに係る基準の見直し【3】介護・医療連携推進会議の開催頻度の緩和(年4回→年2回)―の3つが盛り込まれました。

 このうち【1】の「地域へのサービス提供の推進」は、定期巡回・随時対応サービスを「地域の利用者に対しても提供しなければならない」ことを明確化するもので、一部の事業所が、同一敷地内・隣接敷地内にある集合住宅の居住者だけにサービスを提供している実態を踏まえた対応です。

 定期巡回・随時対応サービス事業所の実態調査では、全利用者が併設の集合住宅(「サービス付き高齢者向け住宅:サ高住」など)に住んでいる事業所が2割超(21.5%)を占めることが分かっています。鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)は、こうしたサービス提供の実態に一定の理解を示した上で、定期巡回・随時対応サービスの利用をサ高住などの入居条件にする一部の事業所は“不適切事例”に当たると指摘し、是正すべきだと訴えています。

 こうした“不適切事例”には介護支援専門員(ケアマネ)も関与することから、厚労省老健局振興課の込山愛郎課長は、「特定のサービスの利用がサ高住等への入居条件になっているような、『利用者の意思にかかわらないサービス利用が前提になっているケアプラン』が不適切だということを解釈通知などで示したい」と述べています。

 ちなみに、定期巡回・随時対応サービスの「地域の利用者への提供」は、「正当な理由」があれば免除されます。具体的には、▼事業所のマンパワーの関係で、利用者を増やしたら一人一人に十分なサービスを提供できなくなる▼利用申込者が事業所のサービス実施地域外に住んでいる―といった場合です。

ICT利用などを条件に、日中のオペレーター配置基準も緩和

 一方、【2】のオペレーターに係る基準の見直しは、現時点では夜間・早朝(午後6時から午前8時まで)にしか認められていない人員基準緩和を、日中(午前8時から午後6時まで)にも適用させるものです。

 具体的には、▼利用者へのサービス提供に支障がない場合に限り、「随時訪問サービスを行う訪問介護員」か「同一敷地内にある事業所の職員」が、利用者のコールを受け付ける「オペレーター」を兼務できる▼複数の事業所間で「オペレーター」を集約できる―といったものです。

 「利用者へのサービス提供に支障がない場合」について、厚労省老健局老人保健課の鈴木健彦課長は、例えば、「情報通信技術(ICT)等の活用により、事業所外においても利用者情報の確認ができるとともに、適切なコール対応ができない場合に備えて電話の転送機器等を活用することにより、利用者からのコールに即時に対応できる」といった体制が整った状態を想定しており、今後、通知で明確にすると説明しました。

 これに対して伊藤彰久委員(日本労働組合総連合会総合政策局生活福祉局長)は、「他事業所に転送する」「オペレーターの資格がない人がまず電話を受け、資格者が折り返す」といった運用はふさわしくないと主張しています。

 オペレーターの資格について現在は、サービス提供責任者として3年以上経験がある人と規定しています(別に看護師や介護福祉士などのオペレーターもいる場合に限る)。この点、「運営基準の改正案」では、サービス提供責任者として必要な経験年数を「1年以上」に短縮するとしています(「初任者研修課程」などの修了者は引き続き「3年以上」)。

 「運営基準の改正案」ではこのほか、(a)利用者に「複数のサービス事業所を紹介するよう求める」権利があることの説明を、ケアマネに義務付ける(b)「機能や価格帯が異なる複数の商品」などの利用者への紹介を、福祉用具専門相談員に義務付ける―としています。これらは、適切な居宅サービス利用を推進するものですが、伊藤委員は、ケアマネに対しても、複数事業所の紹介を義務付けるべきだと主張しました。

 ただし、福祉用具専門相談員が複数の商品の情報を用意することに比べて、ケアマネにかかる負荷が大きいと考えられることから、厚労省は、ケアマネに対する「紹介の義務付け」には慎重な姿勢を示しています。

 また、介護医療院で実施できる居宅サービスとして厚労省はこれまでに、▼訪問看護▼訪問リハビリテーション▼通所リハビリテーション▼短期入所療養介護―の4種類にしてはどうかと提案していましたが、「運営基準の改正案」では、訪問看護の提供は認めない(残りの3種類のみを認める)方針を示しています(関連記事はこちら)。

 4種類を認める従来の厚労省案は、いずれも介護療養型医療施設で提供可能だったことを踏まえたものでしたが、このうち訪問看護については、実際に提供している介護療養型医療施設が少ない(病院・診療所とも1割前後)だったことなどから、齋藤訓子委員(日本看護協会副会長)らが慎重な姿勢を示していました。

利用者の退院時やターミナル期に医療機関と連携するケアマネ事業所を高く評価

 12月1日の介護給付費分科会で厚労省は、医療機関等との連携に積極的に取り組むケアマネ事業所を評価する方針も示しました。具体的には、(1)【退院・退所加算】の算定回数が一定以上(2)「ターミナルケアマネジメント加算」(仮称)の算定回数が一定以上(3)全3区分の【特定事業所加算】のいずれかを算定―のすべてを満たす事業所を、2019年度から、より高く評価するものです。

 このうち(2)の「ターミナルケアマネジメント加算」(仮称)は、がん患者のターミナル期の状態変化に合わせて、ケアプランを頻回に修正するケアマネへの評価で、厚労省が2018年度改定での新設を検討しています。

厚労省は、ターミナル期のがん患者に対応するケアマネの取り組みを、新たな加算で評価する方針を示している

厚労省は、ターミナル期のがん患者に対応するケアマネの取り組みを、新たな加算で評価する方針を示している

 この加算の具体的な算定要件として厚労省は、▼24時間連絡が取れる体制を確保した上で、必要な場合に居宅介護支援を行える体制を整備する▼利用者・家族の同意を得た上で「死亡日および死亡日前14日以内」に2日以上、在宅を訪問し、医師らの助言を得つつ、利用者の状態・サービス変更の必要性等を把握して利用者を支援する▼訪問時に把握した利用者の情報を記録し、医師やケアプランに位置付けた居宅サービス事業者に提供する―ことを挙げています。

 利用者のターミナル期のケアマネの対応については、11月22日の介護給付費分科会でも議論しており、医師らへの情報提供などを「評価してはどうか」という厚労省の提案に対して、齋藤訓子委員らが慎重な姿勢を示していました。

 齋藤訓子委員は12月1日の介護給付費分科会でも、「訪問介護が利用されているケースでは(あえてケアマネが訪問して情報収集するのは)非効率な部分もあるし、(いろいろな職種が同様の情報をそれぞれ収集するとしたら)利用者の負担になると懸念する」などと指摘しています。

 一方、鈴木委員は「医師や看護師が専門性を発揮するためにも、ケアマネのサポートが有用ではないか」などと前向きな姿勢を表明しています。

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