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区分支給限度基準額の管理、集合住宅減算を適用せずに計算―第153回介護給付費分科会(3)

2017.12.5.(火)

 区分支給限度基準額を管理する際には、訪問系サービスの単位数に、集合住宅減算を適用させない。また、医師が患者と直接対面せずに、情報通信技術(ICT)を利用して死亡診断書を交付する際の訪問看護師による情報提供を介護報酬でも評価する―。

 11月29日の社会保障審議会・介護給付費分科会では、厚生労働省がこうした方針も示しました(関連記事はこちらこちら)。集合住宅減算の取り扱いの見直しは、「集合住宅居住者では、利用できる介護保険の居宅サービス量が多い」状態の解消が目的です。

 また、ICTを活用して、医師が非対面で死亡診断書を交付する新しい仕組みは、厚労省がガイドラインを発出するなどして整備中です。この仕組みでは、患者の元を訪れた看護師が、画像データなどを医師に送る役割を担います。情報提供などを行う訪問看護師への評価については、中央社会保険医療協議会でも議論されています。

11月29日に開催された、「第153回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

11月29日に開催された、「第153回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

「基準額の中で受けられる訪問回数」の不公平を解消

 在宅療養中の要介護者が1か月間に利用する居宅サービスのうち、どの部分までを保険給付の対象にするか(どの部分から全額自己負担にするか)は、区分支給限度基準額によって判定されます。この基準額は、要介護度が高い(介護の必要性が高い)利用者ほど高く設定されています。基準額を超えてもサービスを利用することはできますが、全額が自費になります。

 区分支給限度基準額に達したか判定する際には通常、基本報酬に加算(基本報酬の上乗せ)や減算(ペナルティーなど)を反映させた金額が用いられます。この点、訪問介護など訪問系サービスの集合住宅減算を反映させた金額での判定は、「訪問1回当たりの単価が下がる分、保険給付の対象範囲内で、頻回に訪問サービスを受けられる」ことになり、会計検査院が、集合住宅に住まない他の利用者と比べて不公平だと指摘していました

集合住宅減算が保険給付の公平性を損ねているとして、会計検査院が制度の見直しを求めていた。

集合住宅減算が保険給付の公平性を損ねているとして、会計検査院が制度の見直しを求めていた。

 これを踏まえて厚労省は、集合住宅減算を「区分支給限度基準額の対象外に位置付けてはどうか」と提案しています。この取り扱いの対象となるサービスは、▼訪問介護▼訪問入浴介護▼訪問看護▼訪問リハビリテーション▼夜間対応型訪問介護▼定期巡回・随時対応型訪問介護看護―で、委員から反対意見は出ていません。

 ちなみに、区分支給限度基準額に達したかどうかの判定に当たって、カウントしないことになっている加算や療養費が既にあります。性質に応じて、(1)交通の便が悪い地域でサービスを提供する事業所の経営安定等が目的の加算:特別地域加算など(2)介護職員の処遇改善に資する加算:介護職員処遇改善加算など(3)医療ニーズへの対応に関する加算や療養費:ターミナルケア加算など(4)在宅生活の継続を支援するための加算:総合マネジメント体制強化加算など(5)事業開始後の一定期間の経営安定を目的とする加算:事業開始時支援加算―の5つに分類できます。

 厚労省は、こうした加算の取り扱いを、来年度(2018年度)の介護報酬改定後も維持する方針です。ちなみに、このうち「特別地域加算」や「中山間地域等の小規模事業所加算」は現在、訪問介護や訪問看護に設定されていますが、厚労省は、訪問リハビリテーションにも同様の加算を設ける方針で、これらも区分支給限度基準額の対象外に位置付けられます。

区分支給限度基準額の対象から外す加算の取り扱いは原則維持されるが、赤字の部分が見直される

区分支給限度基準額の対象から外す加算の取り扱いは原則維持されるが、赤字の部分が見直される

「遠隔死亡診断」のための情報提供を介護報酬でも評価

 11月29日の介護給付費分科会で厚労省は、訪問看護と認知症対応型共同生活介護(グループホーム)に関する「追加の対応案」も示しています(これまでに示された対応案については、訪問看護はこちら、グループホームはこちら)。

 訪問看護に関する追加の対応案は、ICTを活用した看取りに関するものです。ICTを活用した看取りに関しては、厚労省が9月に「情報通信機器(ICT)を利用した死亡診断等ガイドライン」を発出。在宅での看取りを希望する患者が亡くなり、医師が立ち会えない場合に、ICTを利用して医師が死亡診断書を交付する「遠隔死亡診断」の要件などを示しています。

 このガイドラインが示す流れでは、訪問看護師が、▼遺体の情報(写真など)を医師に提供する▼死亡診断書を代筆し、医師から預かった印鑑を押印して遺族に手渡す―ことになっています。対応案は、このうち情報提供を、介護報酬で評価するというものです。

医師の遠隔死亡診断には、訪問看護師との連携が欠かせない

医師の遠隔死亡診断には、訪問看護師との連携が欠かせない

 ちなみに中央社会保険医療協議会では、「遠隔死亡診断」で医師と連携する訪問看護師への評価を、医療保険の訪問看護療養費の加算で行う方向で議論が進んでいます。ただし、評価するのは「遠隔死亡診断」が「医療資源の少ない地域」で行われた場合に限るとしています。介護報酬でも、評価の対象地域が同じように限定されるかもしれません。

 一方、グループホームに関しては、利用者の身体状況などのアセスメントを、外部のリハビリテーション専門職らと共同で行った上で、生活機能の向上を目指す計画を作成することなどを、新たに評価してはどうかと提案しています。

 これは、訪問介護の【生活機能向上連携加算】(1か月につき100単位)を参考にしたもので、厚労省はこれまでに、小規模多機能型居宅介護にも同様の加算を新設する方針を示しています。

機能訓練指導員の対象資格に鍼灸師を追加

 11月29日の介護給付費分科会で厚労省は、機能訓練指導員の対象者に鍼灸師(「はり師」と「きゅう師」)を加える方針も示しました。ただし、「一定の実務経験を有すること」が条件で、具体的には、オン・ザ・ジョブ・トレーニングとして「理学療法士等の機能訓練指導員を配置した事務所で6か月以上勤務し、機能訓練指導に従事した経験」を求めます。

 通所介護や短期入所生活介護(ショートステイ)、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)などでは、機能訓練指導員の配置が指定基準になっていて、厚い配置などには加算もあります(【個別機能訓練加算】など)。厚労省は、そうしたサービスの事業所が、機能訓練指導員を確保しやすくすることが目的だと説明しています。

 しかし、「はり師」や「きゅう師」が機能訓練を行っている事業所は現状、通所介護では1.6%程度しかなく、人材確保につながるか疑問視する委員もいました。また、機能訓練の質を確保する観点から、より厳しい「研修要件」などを設けるべきという指摘も上がっています。

はり師やきゅう師が機能訓練を行っている事業所も一部ある

はり師やきゅう師が機能訓練を行っている事業所も一部ある

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