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認知症グループホームに看護師配置を促し、医療体制を強化―介護給付費分科会(3)

2017.11.20.(月)

 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)では、利用者の医療ニーズが増加して退居せざるを得ないケースがある。喀痰吸引などが必要な利用者が入居し続けられるように、「看護師を常勤換算で1人以上配置する」といった要件を満たす事業所を、より手厚く評価してはどうか―。

 11月15日の社会保障審議会・介護給付費分科会で厚生労働省は、こうした見直しも提案しました(関連記事はこちらこちら)。これに賛成する委員がいる一方で、「グループホームの利用者に一定以上の医療ニーズが生じたら介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)に移るといった『介護サービスの棲み分け』が必要だ」と指摘する委員もいました。

 さらに、▼認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)について、「基本報酬のサービス提供時間区分を『1時間単位』に改める」といった通所介護と同様の見直しを行う▼重度の認知症の利用者を受け入れる短期入所生活介護(ショートステイ)などの事業所を、特別養護老人ホームなどと同様に加算で評価する―といった案についても話し合いました。

11月15日に開催された、「第151回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

11月15日に開催された、「第151回 社会保障審議会 介護給付費分科会」

グループホームへの看護師配置の評価に委員から賛否

 グループホームは、認知症の人が共同生活する住居で、日常生活上の世話や機能訓練が提供されます。家庭的な環境で地域住民と交流しながら、利用者が自立した日常生活を営めるようにすることを目的として運営されており、「認知症ケアの拠点」としての役割が期待されています。

 地域密着型サービスの1つで、当該市町村の住民以外は基本的に利用できません。事業所数・利用者数ともに増加傾向にあり、昨年(2016年)4月時点で全国に1万3015事業所あり、19.1万人が利用しています。

 そうしたグループホームでは、利用者の要介護度が徐々に高くなっています。要介護3以上の利用者割合は、2006年度の45%から、昨年度(2016年度)には57%となり、12ポイント上昇(単純計算で、1年間に1.2ポイントずつ上昇)。グループホームからの退居理由は、「医療ニーズの増加」(34.5%)が最も多く、厚労省は、利用者の医療ニーズに対する体制を強化する必要があると考えています。

グループホームからの退居理由は、「医療ニーズの増加」が最も多い

グループホームからの退居理由は、「医療ニーズの増加」が最も多い

 11月15日の介護給付費分科会では、現行の【医療連携体制加算】(1日につき39単位)の要件(事業所内看護師や連携先病院などの看護師と、24時間連絡できる体制を確保することなど)を満たすことに加え、「看護師を常勤換算で1人以上配置」「たんの吸引などの医療的ケアを提供している実績」も満たす場合に、より高く評価してはどうかと厚労省が提案しました。

 【医療連携体制加算】を算定する事業所の中でも、常勤看護師を配置している事業所は、対応を外部の看護師に任せている事業所と比べて「服薬支援」や「喀痰吸引」などにより積極的に対応しているというデータもあります。これを踏まえて齋藤訓子委員(日本看護協会副会長)は、グループホーム利用者の医療ニーズが広がりを見せる中、常勤看護師を既に配置している事業所への手厚い評価が必要だと主張しました。

 その一方で、鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)は、介護サービスの役割分担が重要だと指摘し、「(グループホームで)どこまで医療ニーズに対応すべきだと考えているのか。特別養護老人ホームと同じか」と質問。グループホームへの看護師の配置を評価する厚労省の方針に慎重な姿勢を示しました。

 グループホームで対応すべき医療ニーズの範囲については、厚労省老健局総務課認知症施策推進室の田中規倫室長が、「グループホームには配置医師もおらず、看護師配置も基準に位置付けられていない。対応できるニーズに差はある」としながらも、利用者像の変化などを踏まえ、ある程度まで対応すべきだという考えを示しました。

 これを聞いた鈴木委員は、「(特別養護老人ホームと)同じにしてしまったらグループホームの存在意義がなくなり、(規模が大きい)特別養護老人ホームにした方が(経営が)やりやすい。重度になったら特養に移るのも選択肢だ。何もかも同じだと考えるべきではない」と主張しています。

 なお、鈴木委員は、介護分野での看護職員の確保が難しくなっているとして、看護師の配置に対する介護報酬の評価全般を「准看護師でも認めるということで、統一してほしい。これは強い要望だ」と訴えました。

一時的な入院による減収を、ある程度補てん

 グループホームについて厚労省は、(1)3か月以内の入院後、また入居すると見込まれる利用者に、一定程度の基本報酬を算定できるようにする(2)1か月以上入院した後に再入居する際、【初期加算】(1日につき30単位、入居日から30日以内)の算定を認める(3)短期利用認知症対応型共同生活介護の定員の要件を、他の利用者の処遇に支障を生じさせない範囲で緩める―といった見直し案も示しました。

 グループホームに入居する利用者は、BPSD(粗暴行動などの認知症の周辺症状)の悪化や転倒による骨折、肺炎などで一時的に入院することもあります。そうした利用者が退院後に再入居できるように、空床を確保しておかなければならないとすると、例えば「入院期間が予定より長くなれば、収入が想定以上に減る」という課題もあります。(1)と(2)は、そうした事業所の減収を補てんするものだと言えます。

 このうち(1)は、退院後の再入居の受け入れ体制を事業所側が整えていることを条件に、一定の基本報酬の算定を認めるものです。特別養護老人ホームには既に、入院中や外泊中に1日246単位を月6日まで算定できる仕組みがあり、グループホームにも同様の仕組みが設けられる見通しです。

 一方、(2)の【初期加算】は現在、3か月空けない再入居では算定ができません(認知症高齢者の日常生活自立度がランクIIIかIV、Mなら1か月空ければ算定可)。1か月以上入院した利用者に限って、【初期加算】の算定を認める厚労省の提案には、「早期退院の促進」という狙いもありそうです。

 (3)の短期利用認知症対応型共同生活介護は、グループホームを短期間(30日以内)利用するサービスですが、利用者を受け入れられるのは現在、「事業所の共同生活住居の定員の範囲内」で、「空いている居室を利用する場合」に限られています。厚労省は、この規制を緩め、短期間の利用が緊急に必要だとケアマネジャーが認めれば、事業所ごとに1人まで、定員を超えた受け入れを認める方針を示しています。

 ただし条件として、▼居室が個室である▼短期利用の利用者も含めて、人員基準を満たす―などを求めることで、他の利用者の処遇に支障が生じるのを防ぐようです。

 これらの案に強い反対意見は出ませんでした。鈴木委員は短期間のグループホーム利用について、隣接の市町村の住民の受け入れを認めるなど、より踏み込んだ要件緩和を求めています。

認知症デイ、通常のデイと併せて基本報酬1時間刻みに

 11月15日の介護給付費分科会では、認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)の報酬見直しについても話し合いました。

 認知症デイサービスは、グループホームと同じ地域密着型サービスで、認知症の利用者を事業所に集めて日常生活上の世話や機能訓練を行います。昨年(2016年)4月時点の事業所数は3722か所、利用者数は5.8万人で、事業所数も利用者数も2013年度から横ばいです。要介護3以上の利用者割合は徐々に減っていて、昨年度(16年度)は51%でした。

 この認知症デイサービスについて厚労省は、通所介護と同様の見直し案を示しています(関連記事はこちら)。具体的には、(1)事業所外のリハビリテーション専門職の協力を得て、利用者の個別機能訓練計画の作成や、訓練の内容の見直しを行うことを新たに評価する(2)基本報酬を「1時間単位」で設定する(今は「2時間単位」)(3)利用者へのサービス提供に支障がなく、「共用を認めない」と明示されていない場合には、併設する他の介護サービスとの間で設備の共用を認める―です。

 さらに、地域密着型の特別養護老人ホーム(ユニット型)で行う認知症デイサービス(共用型認知症対応型通所介護)の利用定員を、「1施設当たり3人以下」から「ユニットの入居者と合わせて12人以下」へと見直す案も示しています。

厚労省は、地域密着型の特別養護老人ホーム(ユニット型)が共用型認知症対応型通所介護を行う場合の利用定員の規定を見直す案を示した

厚労省は、地域密着型の特別養護老人ホーム(ユニット型)が共用型認知症対応型通所介護を行う場合の利用定員の規定を見直す案を示した

認知症に関する加算の対象サービスを拡大

 介護サービス事業所・施設が「認知症の利用者」を積極的に受け入れることを狙い、介護報酬では各種の「加算」が設けられています。厚労省は、このうち若年性認知症の人の受け入れや、認知症の専門的なケアを評価する加算の対象サービスを広げたい考えです。

「○」のサービスには既に加算がある。厚労省は、「(追加案)」の部分に加算を新設する方針だ

「○」のサービスには既に加算がある。厚労省は、「(追加案)」の部分に加算を新設する方針だ

 具体的には、小規模多機能型居宅介護(小多機)や看護小規模多機能型居宅介護(看多機)、特定施設入居者生活介護に、若年性認知症の利用者の受け入れを評価する加算を設ける方針です。

 同様の評価として現在、通所介護の【若年性認知症利用者受入加算】(1日につき60単位)や、特別養護老人ホームの【若年性認知症入所者受入加算】(同120単位)などがあります。それらの加算の算定要件は、▼若年性認知症の利用者ごとに個別の担当者を定める▼当該利用者の特性やニーズに応じたサービスを提供する―で、小多機などの新加算の算定要件も同じになりそうです。

 さらに、短期入所生活介護や短期入所療養介護に、▼認知症高齢者の日常生活自立度のランクIII以上の利用者割合が50%以上▼「認知症介護実践リーダー研修」の修了者を一定数以上配置―などを満たすと算定できる加算を創設するとしています。特別養護老人ホームの【認知症専門ケア加算】(1日につき3単位と4単位の2区分)の“ショートステイ版”を設けるイメージです。

 こうした案に強く反対する委員はいませんでしたが、本多伸行委員(健康保険組合連合会理事)は、逆に「算定回数が少なければ加算を廃止することも必要」と主張しています。

 なお厚労省は、認知症の要介護者の受け皿になると想定される介護医療院にも、若年性認知症や高度の認知症の利用者の受け入れを評価する加算と、BPSDが悪化した利用者の緊急受け入れを評価する加算を設ける方向性を示しました。介護医療院の具体的な報酬体系は、11月22日の介護給付費分科会で話し合われる見通しです。

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