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GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

【18年度介護報酬改定答申・速報5】老健の報酬体系再編、在宅復帰機能「超強化型」を創設

2018.2.1.(木)

 メディ・ウォッチでは、ついに明らかになった2018年度介護報酬改定案をサービス類型ごとに紹介しています(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。本稿では、介護老人保健施設(老健)を取り上げます。

1月26日に開催された「第158回 社会保障審議会 介護給付費分科会」で、2018年度介護報酬改定案が了承された

1月26日に開催された「第158回 社会保障審議会 介護給付費分科会」で、2018年度介護報酬改定案が了承された

 老健については、主に次の3つの見直しが行われます。1つずつ眺めていきましょう。

(a)在宅復帰機能をさらに重視し、報酬を3区分から5区分に再編する
(b)入所者への感染症治療などを適切に行うため【所定疾患施設療養費】を2区分にする
(c)医薬品の適正使用を目指した「かかりつけ医との連携」への評価【かかりつけ医連携薬剤調整加算】を新設する

「超強化型」から「その他型」まで5区分に再編

 (a)で老健施設の報酬水準は現在、「入所者を在宅復帰させる機能」に応じて、次の3区分で設定されています。

【1】在宅強化型:在宅復帰率などが基準を満たす
【2】加算型:在宅強化型の基準に満たないが、在宅復帰率などが一定の基準を満たす
【3】従来型:在宅復帰率などが低い

 1日当たり単位数(要介護3、多床室の場合)は、▼在宅強化型:948単位▼加算型:904単位(従来型の基本報酬+【在宅復帰・在宅療養支援機能加算】)▼従来型:877単位―です。

 昨年(2017年)6月に公布された改正介護保険法(2018年4月施行)で、老健の役割が「要介護者の在宅復帰を目指す」ことであることが明確化されたため、2018年度改定では、▼老健職員が入所者宅などを訪問し、入所者家族らを指導して算定する【退所前訪問指導加算】(460単位/回)や【退所後訪問指導加算】(同)を基本報酬に包括化する▼基本報酬を3区分に再編し、さらに在宅復帰機能を評価する【在宅復帰・在宅療養支援機能加算】を2区分に再編することで、報酬水準(基本報酬と加算の組み合わせ)を5区分に増やす―といった見直しが行われます。見直し後の報酬水準は次のとおりです

(1)超強化型:▽「在宅復帰・在宅療養支援等指標」(最高90点、詳しくは後述)が70点以上▽報酬水準が最も高い(要介護3・多床室の場合1000単位/日)
(2)在宅強化型:▽「在宅復帰・在宅療養支援等指標」が60-69点▽報酬水準は(1)の「超強化型」の次に高い(同954単位/日)
(3)加算型:▽「在宅復帰・在宅療養支援等指標」が40-59点▽報酬水準は(2)の「在宅強化型」の次に高い(同914単位/日)
(4)基本型:▽「在宅復帰・在宅療養支援等指標」が20-39点▽報酬水準は(3)の「加算型」の次に高い(同880単位/日)
(5)その他型:▽「在宅復帰・在宅療養支援等指標」が19点以下▽報酬水準は(4)の「基本型」の次に高い(同862単位/日)

「在宅復帰・在宅療養支援等指標」に応じた5区分の報酬体系となる

「在宅復帰・在宅療養支援等指標」に応じた5区分の報酬体系となる

最高90点の「在宅復帰・在宅療養支援等指標」で老健の機能を評価

 在宅復帰機能を評価する「在宅復帰・在宅療養支援等指標」は、現在の「在宅強化型」の要件をベースに新たに創設される指標で、以下の10項目(配点は5―20点)の点数を足し合わせて点数を算出します。重度の要介護者を多く受け入れ、手厚い体制で支援し、在宅復帰実績の高い施設ほど高く評価されます。

▼在宅復帰率:在宅復帰した退所者の割合(配点20点)
▽50%超→20点▽30%超50%以下→10点▽30%以下→0点

▼ベッド回転率:30.4を平均在所日数で割った数(配点20点)
▽0.1以上→20点▽0.05以上0.1未満→10点▽0.05未満→0点

▼入所前後訪問指導割合:入所30日前から入所7日後までの間に、退所後の療養場所(入所者宅など)を訪問し、それを踏まえた「退所までの計画」(施設サービス計画)などを策定した入所者の割合(配点10点)
▽30%以上→10点▽10%以上30%未満→5点▽10%未満→0点

▼退所前後訪問指導割合:退所30日前から退所30日後までの間に、退所後の療養場所(入所者宅など)を訪問し、退所者家族らを指導した退所者の割合(配点10点)
▽30%以上→10点▽10%以上30%未満→5点▽10%未満→0点

▼居宅サービスの実施数:▽訪問リハビリテーション▽通所リハビリテーション▽短期入所療養介護のうち、老健や併設する病院などで実施しているサービス数(配点5点)
▽3つすべて→5点▽いずれか2つ→3点▽いずれか1つ→2点▽いずれも実施していない→0点

▼リハ専門職の配置割合:リハビリテーションを担当する理学療法士等の人数(常勤換算)を入所者数で割った数(配点5点)
▽0.05以上→5点▽0.03以上0.05未満→3点▽0.03未満→0点

▼支援相談員の配置割合:支援相談員の人数(常勤換算)を入所者数で割った数(配点5点)
▽0.03以上→5点▽0.02以上0.03未満→3点▽0.02未満→0点

▼要介護4・5の割合:要介護4・5の入所者の割合(配点5点)
▽50%以上→5点▽35%以上50%未満→3点▽35%未満→0点

▼喀痰吸引の実施割合:過去3か月間に喀痰吸引が実施された入所者の割合(配点5点)
▽10%以上→5点▽5%以上10%未満→3点▽5%未満→0点

▼経管栄養の実施割合:過去3か月間に経管栄養が実施された入所者の割合(配点5点)
▽10%以上→5点▽5%以上10%未満→3点▽5%未満→0点

 ただし、「在宅復帰・在宅療養支援等指標」が20点以上でも、▼入所者に対して計画的なリハビリテーションを実施する▼退所時に退所者家族らに退所後の療養上の指導を行う▼退所後、在宅での療養生活が1か月間(要介護4・5の場合2週間)続く見込みであることを確認し、記録に残す―ことのいずれかを満たせない場合には、「在宅復帰機能が十分でない」と判断され、低い「その他型」の基本報酬を算定しなければならない点には留意が必要です。

 ほか、「超強化型」と「在宅強化型」には、「リハビリテーションを少なくとも週3回以上実施する」との要件も設けられます。

 老健では、これら新たな要件への該当状況を確認し、「2018年4月から、自施設がどの区分に分類されるか」「どの指標を満たせば、上位区分に移ることができるか」を確認すべきでしょう。

新規入所者数を増やせるかがポイント

 「在宅復帰・在宅療養支援等指標」を引き上げるためには、配点が高い「在宅復帰率」や「ベッド回転率」を高めることが重視されます。しかし、同時に新規入所者数を増やすことができなければ、ベッドの利用率は低下してしまいます。

 新規入所者数を増やす方策として、病院からの受け入れ人数を増やすことが考えられます。この点、現在は「在宅強化型」や「加算型」の老健が、病院の7対1病棟や地域包括ケア病棟を持つ病院から、転院先として重宝されています(それぞれの入院料の在宅復帰率要件が満たしやすくなる)が、2018年度診療報酬改定後には、▼7対1病棟からの退院後、老健に入所した患者はすべて「在宅復帰した」と見なす▼地域包括ケア病棟からの退院後、老健に入所した患者はすべて「在宅復帰しなかった」と見なす―というルールに変更される見通しです(関連記事はこちら)。

 このため、地域包括ケア病棟からの入所者が多い老健では特に、「病院以外からの入所者をいかに増やすか」を検討すべきだと言えます。

肺炎など治療するための医療機関との連携を新たに評価、老健医師の研修受講が要件

所定疾患施設療養費が2区分へと再編される

所定疾患施設療養費が2区分へと再編される

 (b)の【所定疾患施設療養費】(305単位/日)は、入所者が肺炎や尿路感染症を発症した際の投薬や検査に対する評価です。老健には1人以上の常勤医師が配置されているため、「一定程度の医療を施設内で行う」ことが評価されていますが、エックス線装置などが老健にないため「肺炎などを適切に診断できているか」という指摘も上がっています。

 そこで2018年度介護報酬改定では、「老健では実施できない専門的な検査を医療機関で行う場合の評価」として新たに【所定疾患施設療養費(II)】が設けられ、肺炎などの適切な診断・治療を促します。一方、現行の【所定疾患施設療養費】は【所定疾患施設療養費(I)】となり、算定要件は変わりませんが、単位数が下がります。具体的には次のとおりです。

▼所定疾患施設療養費(I):235単位/日
▽「診断」「診断日」「実施した投薬、検査、注射、処置の内容」などを診療録に記載する
▽【所定疾患施設療養費】を算定して実施した投薬などの状況を翌年度に公表する

▼所定疾患施設療養費(II):475単位/日
▽老健の医師が感染症対策に関する研修を受講している
▽「診断」「診断の根拠」「診断日」「実施した投薬、検査、注射、処置の内容」などを、連携医療機関で行った検査などを含めて、診療録に記載する
▽【所定疾患施設療養費】を算定して実施した投薬などの状況を翌年度に公表する

かかりつけ医と連携した減薬に新評価

かかりつけ医と連携して減薬に取り組むことが新たに評価される

かかりつけ医と連携して減薬に取り組むことが新たに評価される

 多剤投薬には健康への影響や、飲み忘れのリスクのような弊害があると指摘され、診療報酬では、「多剤投薬の是正」に向けた取り組みが評価されています。2018年度介護報酬改定では、(c)の「かかりつけ医との連携」として、老健の医師がかかりつけ医と連携しつつ、入所者の内服薬の種類を減らすことへの評価として、【かかりつけ医連携薬剤調整加算】(125単位/回)が新設されます。算定要件などは次のとおりです。

【算定対象となる入所者】
入所前、6種類以上の内服薬が処方されている

【算定要件】
▽入所者の減薬について、老健の医師がかかりつけ医と総合的に検討し、合意する
▽かかりつけ医との合意に基づいて、入所中に内服薬を1種類以上減らす
▽内服薬が入所時と比べて1種類以上少ない状態で退所する
▽入所中の減薬について、かかりつけ医に報告し、報告内容を診療録に記載する

 現状では入所中の減薬について、かかりつけ医と連携して取り組んでいる老健は少なく、「かかりつけ医に処方経緯を必ず確認している」割合は21.2%にとどまります(関連記事はこちら)。

現状では、入所者が内服する薬の種類を減少させるために、老健医師とかかりつけ医とが十分に連携しているとは言えない

現状では、入所者が内服する薬の種類を減少させるために、老健医師とかかりつけ医とが十分に連携しているとは言えない

 この点、2018年度診療報酬改定では、診療報酬の【地域包括診療加算】などに【薬剤適正使用連携加算】が新設され、診療所などかかりつけ医療機関から老健などへの情報提供(処方内容や薬歴など)が評価される見通しです(関連記事はこちら)。老健とかかりつけ医療機関が連携を強めて減薬に取り組めば、老健が【かかりつけ医連携薬剤調整加算】、診療所などが【薬剤適正使用連携加算】を算定でき、さらに利用者の健康被害なども抑制できる「三方良し」の状況が実現されます。

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