Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

介護医療院、利用者の個別ニーズに合わせたサービス提供が極めて重要―日本介護医療院協会

2018.4.3.(火)

 2018年度の介護報酬改定で▼医療▼介護▼住まい―の3機能を併せ持つ「介護医療院」が新設され、介護療養型医療施設や医療法上の看護配置基準を満たさない医療療養(25対1医療療養に近い)からの転換が期待される。転換施設は、▼医療▼介護―はこれまでにも提供してきており、問題ないと思われるが、新たなサービスである「住まい」機能を充実させていく必要がある―。

 日本介護医療院協会が4月2日に開催した設立記念シンポジウムでこういった議論が行われました。

4月2日、日本介護医療院設立記念シンポジウムが開催された

4月2日、日本介護医療院設立記念シンポジウムが開催された

介護医療院へ移行した場合の加算、「早期かつ一斉転換」がポイントに

 2018年度診療報酬・介護報酬改定の詳細が固まり、介護療養や医療法上の看護配置を満たさない医療療養について、他機能の病床への転換を促進していく方向が明示されています。その選択肢の一つとして、▼医療▼介護▼住まい―の3機能を併せ持つ新たな介護保険施設「介護医療院」があります。

こうした動きを受け、「日本介護医療院協会」(会長:江澤和彦・医療法人和香会倉敷スイートタウン理事長)が発足。4月2日には▼厚生労働省の鈴木康裕医務技監▼日本医師会の鈴木邦彦常任理事▼衆議院の安藤高夫議員▼日本慢性期医療協会の武久洋三会長—を招いた設立記念シンポジウムが行われました。

厚労省の鈴木医務技監は、我が国の医療提供体制を俯瞰すると「医師、看護師数は人口1000人当たりで見ると『欧米諸国と遜色がない』ものの、人口1000人当たりの病床数が多いために、『病床100床当たりの医師数、看護師数』が少なく(薄く)なっている」点を指摘。その上で「私見である」と強調した上で、「手厚い医療、看護を提供するために、救急医療提供体制等に十分配慮した上で、一定の集約化が避けられないのではないか」との考えを示しています。

その場合、「複数医療機関の再編・統合」などのほか、例えば「一部の病棟に医師・看護師等を集約化して高機能化し、他の病棟を住まい機能などに転換する」方策も考えられます。鈴木医務技監は、この「住まい機能」の1つとして「介護医療院」に注目し、「医療機関における新たな『住まい機能モデル』になるのではないか」と見通しました。

さらに、今般の診療報酬・介護報酬改定に盛り込まれた【移行定着支援加算】(介護療養などから介護医療院に転換した場合、1年間、1日につき93単位を算定可能)に触れ、▼早期に▼転換予定病棟を一斉に―転換したほうが、より多くの加算を算定できることを強調しています(関連記事はこちら)。

【移行定着支援加算】は、介護医療院への転換から1年間算定できますが、例えば「介護療養を2病棟(A病棟、B病棟)もつ病院があったとして、A病棟は2018年度に、B病棟は2019年度に介護医療院に転換した場合、A病棟は2018年度の1年間、【移行定着支援加算】を算定できるものの、B病棟では2019年度に加算を算定することはできない」仕組みとなっているのです。また加算の算定期限は「2021年3月末まで」とされているため、介護医療院への転換を予定している場合には、▼早期に▼転換予定病棟を一斉に―転換するべきなのです。

厚生労働省の鈴木康裕医務技監(写真、向かって左)と、日本医師会の鈴木邦彦常任理事(写真、向かって右)

厚生労働省の鈴木康裕医務技監(写真、向かって左)と、日本医師会の鈴木邦彦常任理事(写真、向かって右)

介護医療院、介護療養からの転換策として「初の成功事例になる」

 また、介護医療院創設論議をしてきた「療養病床の在り方等に関する検討会」「社会保障審議会・療養病床の在り方等に関する特別部会」の委員・構成員であり、介護医療院の報酬論議をした社会保障審議会・介護給付費分科会の委員でもある、日医の鈴木常任理事は、介護医療院創設の経緯を振り返ったうえで、「介護療養からの転換支援策の中で、初めての成功事例になるのではないか」と期待を寄せました。かつて「介護療養から介護老人保健施設への転換」が促進されましたが、十分に進まなかったことを踏まえた指摘と言えます。

 また鈴木医務技監と同様に【移行定着支援金】に注目し、やはり▼早期に▼転換予定病棟を一斉に―転換することが得策であるとコメント。ただし「一部には『介護療養からの手切れ金』との噂もある」とコメントし、会場からの笑いを誘う一幕もありました。

 なお、鈴木・日医常任理事は、「介護医療院を含めて、超高齢社会に適した日本型医療システムを構築する必要があり、医療機関・介護施設が中心となった地域活性化を進める必要がある」と、より大きな視点で介護医療院を考えていくことが重要と強調しています。

新たな「住まい」機能、個別ニーズを把握し、そこに合わせることが重要

 一方、武久・日慢協会長は、今後の超高齢社会において「慢性期病院は、療養病床だけでは生き残れない。外来医療、デイケア、訪問診療・介護などの多機能を持ち、地域のさまざまなニーズに応えていく必要がある」と強調。さらに、「介護施設や介護保険サービスを提供せず、『医療提供だけを行う』と考えている病院」にとって、極めて厳しい時代になると見通し、▼自前での介護サービス提供(介護医療院の設置もここに含まれる)▼地域の介護施設との協力―体制を早急に整える必要があると訴えています。

 ところで、介護療養などが介護医療院に転換した場合、これまでに▼医療▼介護―サービスは提供しているものの、新たな「住まい」サービスの提供に戸惑うのでないでしょうか。この点について、江澤・日本介護医療院協会会長は、「プライバシーの確保」「個別ケア(利用者の意思・趣向・習慣の尊重)」などが重要になると強調。例えば、前者の「プライバシーの確保」では、単に間仕切りを設けるというハード面の手当てにとどまらず、ソフト面でのプライバシー確保を各施設の状況に応じて工夫していくことが重要です。

また後者の「個別ケア」については、利用者の生活習慣に配慮し、まず「食事の時間を一律にしない(起床時間などは利用者でまちまち)」「好きなテレビ番組を見られるようにする」「レクリエーションについても、世代の変化を考慮する(例えば、演歌からビートルズへ)」「入浴の回数をできるだけ多くできるような工夫を行う」などを行ってはどうかと例示しています。

日本介護医療院協会の江澤和彦会長

日本介護医療院協会の江澤和彦会長

 
「住まい」機能の充実に向けて、「個別」利用者のニーズをできるだけ汲み取り、限界がある中で、どう実現するかを職員全員で考えていくことが、「選ばれる介護医療院」になる第一歩と言えそうです。

 
なお、安藤・衆議院議員は、今後の政策課題として▼施設における医療・介護の質向上▼▼継続性のある制度設計・運用▼マンパワーと財源の確保▼適切な加算の設定▼実態に即したハード・ソフトの検討(例えば都会における施設設置基準の緩和など)—を国政の場で議論していく点を強調しています。

日本慢性期医療協会の武久洋三会長(写真、向かって左)と、衆議院の安藤高夫議員(写真、向かって右)

日本慢性期医療協会の武久洋三会長(写真、向かって左)と、衆議院の安藤高夫議員(写真、向かって右)

 
診療報酬改定セミナー2024MW_GHC_logo

 

【関連記事】

25対1医療療養の5割超が20対1医療療養へ、介護療養の5割弱が介護医療院Iの1へ―日慢協調査
【2018年度診療報酬改定答申・速報6】がん治療と仕事の両立目指し、治療医と産業医の連携を診療報酬で評価
【2018年度診療報酬改定答申・速報5】在総管と施設総管、通院困難患者への医学管理を上乗せ評価
【2018年度診療報酬改定答申・速報4】医療従事者の負担軽減に向け、医師事務作業補助体制加算を50点引き上げ
【2018年度診療報酬改定答申・速報3】かかりつけ機能持つ医療機関、初診時に80点を加算
【2018年度診療報酬改定答申・速報2】入院サポートセンター等による支援、200点の【入院時支援加算】で評価
【2018年度診療報酬改定答申・速報1】7対1と10対1の中間の入院料、1561点と1491点に設定

療養病棟入院料も再編、20対1看護、医療区分2・3割合50%がベースに―中医協総会 第377回(2)
7対1から療養までの入院料を再編・統合、2018年度は歴史的大改定―中医協総会 第376回(1)
療養病棟入院基本料、2018年度改定で「療養1」に一本化—中医協総会(1)
医療療養2、介護医療院などへの移行に必要な「経過措置」を検討—中医協総会
2018年度改定に向け入院医療の議論も始まる、機能分化に資する入院医療の評価を検討―中医協総会(1)

【18年度介護報酬改定答申・速報8】グループホーム入居者の「入院・再入居」を円滑に
【18年度介護報酬改定答申・速報7】医療ニーズに対応できる特定施設を手厚く評価
【18年度介護報酬改定答申・速報6】特養配置医が活躍し、看取りまで対応できる体制に
【18年度介護報酬改定答申・速報5】老健の報酬体系再編、在宅復帰機能「超強化型」を創設
【18年度介護報酬改定答申・速報4】ケアマネに新加算設け、医療機関との連携を促進
【18年度介護報酬改定答申・速報3】介護医療院への早期転換を「1日93単位の加算」で促進
【18年度介護報酬改定答申・速報2】看護体制強化加算に上位区分―介護給付費分科会
【18年度介護報酬改定答申・速報1】長時間の通所リハなど、基本報酬引き下げ―介護給付費分科会
医療機関併設型の小規模な介護医療院、人員基準を緩く―介護給付費分科会 第157回(1)

【2018年度介護報酬改定総点検3】病院に「嬉しい影響」、平均在院日数短縮や退院調整に貢献
【2018年度介護報酬改定総点検2】重度化防止に取り組む事業者にとってはプラス改定
【2018年度介護報酬改定総点検1】介護医療院を新設、療養病床には早期転換のインセンティブ

介護医療院の方向性固まる、「1年限りの加算」で転換促す―介護給付費分科会(1)
介護医療院、報酬設定論議始まる!医療療養からの転換を危惧する声も—介護給付費分科会(1)

慢性期病院、介護療養から新類型への転換やリハ機能充実で大幅収益改善も―日慢協・武久会長

回復期リハ病棟1の「実績指数37」要件、摂食や排泄リハ推進のメッセージ―日慢協・武久会長
回復期リハ病棟のリハ専門職を急性期病棟に派遣し、早期リハを目指せ―日慢協・武久会長
療養病棟の死亡退院率を「半減させよ」―日慢協・武久会長
療養病床の入院患者に居住費相当の自己負担を求めるのは「理由なき差別」―日慢協・武久会長
入院時食事療養費の細分化や委託費高騰などで、給食部門の収支は極めて厳しい—入院医療分科会(2)
地域包括ケアを支援する病院の評価新設、資源不足地域での要件緩和を―地域医療守る病院協議会
一般・療養の区分を廃止し、連続的な診療報酬上の評価を―日慢協・武久会長
特養ホームでの適切な医療提供や、医療機関からの訪問看護の評価充実を―日慢協
人工呼吸器装着患者などに高度な慢性期医療を担う「慢性期治療病棟」を2018年度改定で創設せよ—日慢協
病棟看護師の大半は薬剤師などの病棟配置に期待、入院基本料での評価が必要—日慢協・武久会長
薬剤師など多職種の病棟配置、看護師と併せて入院基本料の中で評価せよ―日慢協・武久会長
急性期病院における栄養・水分補給の充実で、回復期・慢性期の入院期間短縮を—日慢協・武久会長
2018年度の同時改定でリハビリ革命を、急性期早期リハは報酬を2倍に引き上げよ―日慢協・武久会長
軽度な後期高齢入院患者は療養病棟などへ転院し、年間3兆円超の医療費縮減を行うべき―日慢協・武久会長
介護療養からの新たな転換先、現在の介護療養よりも収益性は向上する可能性―日慢協試算
リハビリ能力の低い急性期病院、入院から20日までに後方病院に患者を送るべき―日慢協・武久会長