療養病床は今や「長期入院が必要な重症患者の治療病床」、介護施設と同列の扱いは見直しを―日慢協・武久会長
2021.11.12.(金)
療養病床(医療療養)は、かつては「社会的入院を受け入れる病床」の印象が強かったと思われるが、昨今の診療報酬改定等を踏まえて「長期入院が必要な重症患者を受け入れ、治療を行う在宅復帰を促す病床」に変容した―。
にもかかわらず、介護保険施設と同様に「患者の居住費負担」があるなど不合理な取り扱いがなされている―。
療養病棟の実態を踏まえて名称を「慢性期重症治療病床」に改め、医療区分3の中でもとりわけ死期が喫緊に迫るような重症患者への対応を評価する【超重症患者治療加算】を新設し、適切な経済的評価を行うべきである―。
日本慢性期医療協会の武久洋三会長が11月11日に定例記者会見を行い、こうした考えを述べました。
現在の療養病床は「長期入院が必要な重症患者の治療病床」であること認識せよ
療養病床が主に取得する【療養病棟入院基本料】の施設基準を見ると、基本料1では医療区分2・3患者割合が80%以上、基本料2でも同じく50%以上とされ、状態の不安定な、いわば重症の患者を多数受け入れる施設であることが分かります。また各種の調査では、基準値をはるかに上回る重症の患者を受け入れている実態も明らかとなっています。武久会長は「従前の『社会的入院患者を受け入れる病床』とは状況が全く異なる」と訴えています。
しかし療養病床では、一般病床と異なり、65歳以上の入院患者では「居住費」(光熱水費)を負担することが求められます(難病患者を除く)。かつては、「医療区分1の65歳以上入院患者」についてのみ居住費が徴収されていましたが、骨太方針2015(経済財政運営と改革の基本方針2015)などで「介護保険施設との公平性・整合性をとる」との方針がうちだされ、2018年度から「療養病床に入院する65歳以上の全患者(難病患者を除く)から居住費を徴収する」こととなったものです(関連記事は(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
この点について武久会長は、「療養病床の性質が従前とは全く変わっているにも関わらず、制度的な取り扱いは従前の『介護保険施設と同じ住まい』のままである。実態を全く考慮していない」旨を指摘し憤慨。療養病床の実態に鑑みて、次のような制度的対応を行うことを求めています。
▼療養病床の名称を、実態を踏まえて「慢性期重症治療病床」に変更せよ
▼医療区部3の中でも死期が喫緊に迫るような重症患者への対応を評価する【超重症患者治療加算】を新設せよ
後者は、「死期の迫る重症患者を多く受けながら、半数の患者は自宅復帰等に結び付けている」実態を踏まえた提言内容と言えます。こうした医療提供を実施しているにもかかわらず、中央社会保険医療協議会やその下部組織で「死亡退院率が50%で、高すぎるのではないか」などとの批判があることについて、「遺憾である」と武久会長は指摘(関連記事はこちら)。あわせて「病院は治療の場である。療養する施設でも、看取りを行う施設でもない。療養病床は、もはや終末期処理病床ではない」と強く訴え、現下の療養病床の実態を踏まえた取り扱い・評価を行うよう強く求めています。
急性期病棟の施設基準に、介護スタッフ・リハビリ専門職の配置基準を設けよ
併せて、「急性期病床における介護・リハビリスタッフの配置不足が、低栄養・脱水を招き、最終的に慢性期の重症患者を作り出している面」もあると、改めて▼介護配置基準▼リハビリ専門職配置基準—を急性期病棟の施設基準に設定することを提言しました(看護配置基準と同じように、例えば患者●人に対して介護スタッフ・リハビリ専門職をそれぞれ1人以上配置するなどの基準を設ける)。この介護スタッフ・リハビリ専門職配置により、「看護職員が看護業務に専念できる」環境が整うとともに、病院の工夫で「患者の状態にマッチした多様なリハビリの実施」「リハビリスタッフ等による夜勤」なども可能になり、慢性の重症患者発生を予防できると武久会長は期待を寄せています。
武久会長は「2年に一度の診療報酬改定では膨大な項目の見直しを検討しなければならず、介護・リハビリスタッフ配置の基準にまで厚生労働省保険局医療課の手が回らないのは致し方ない。例えば内閣総理大臣等による英断に期待している」とコメントしています。
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