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多臓器病変患者に適切な医療を行うため、医師臨床研修・新専門医研修を再編し「総合診療医」養成を―日慢協・武久会長

2021.4.12.(月)

高齢化が進展する中で「多臓器病変のある患者」が増加している。こうした患者には「総合的な診療能力を持つ医師」が対応しなければならないが、現状では養成がなされていない。医師免許取得後4年間は「総合診療機能を学ぶ」研修期間に位置づけ、それを経て初めて「臓器別の専門医研修」を受けるという仕組みに改める必要がある―。

日本慢性期医療協会の武久洋三会長は、4月8日の開催した定例のオンライン記者会見でこういった考えを示しました。今後、厚生労働省や文部科学省などの担当部局に「医師臨床研修・新専門医研修制度の見直し」に向けた働きかけを行う考えです。

医師免許取得後4年間は「総合診療機能を学ぶ」研修期間に位置づけよ

2004年度から新たな医師臨床研修制度がスタートしました。臨床医になるためには医師免許取得後「少なくとも2年間の臨床研修を受ける」ことが必須化されています。、「一般的な診療に置いて頻繁にかかわる負傷・疾病に適切に対応できるよう、基本的な診療能力を身に着ける」ことが目的で、多くの診療科で研修を受けるプログラムが構築されています。

また、2018年度からは新たな専門医制度がスタートしています。「基本診療領域の傷病などについて、すべて理解し、きちんと患者に説明できる医師」の養成を目指し、医師臨床研修を修了した医師を対象に3年以上の研修を行うものです。

いずれも「優れた医師を要請する」ための仕組みですが、武久会長は「高齢化が進み、急性期病院ですら入院患者の75%以上が『65歳以上の高齢者』という時代である。にもかかわず、現在の医師臨床研修・専門医研修は『臓器別の専門医』養成を主眼としている」と指摘。多くの臓器に病変を抱える高齢者について、全身を総合的に診療できる医師の養成が喫緊の課題であると強調しました。

日慢協の調査を踏まえて、武久会長はかねてから「急性期病院から慢性期病院(日慢協会員病院)に転院する患者の多くが▼脱水▼低栄養▼電解質以上▼貧血▼高血糖―などの問題を抱え、またリハビリテーションが十分に行われないために「拘縮」等が生じており、自宅復帰までに多大な労力と時間がかかっている」と指摘しています(関連記事はこちらこちらこちら)。この背景にも、急性期病院に「高齢者の特性を理解し、総合的な診療を行える医師」が少ないことがあると見ているようです。

新専門医制度の中にも、基本領域の1つとして「総合診療専門医」が設けられていますが、2021年度の専攻医(新専門医資格取得を目指す研修医)ではわずか「2.2%」に過ぎません。

そこで武久会長は、医師免許取得から4年間を「総合神慮機能を学ぶための研修期間」に位置づけ、その4年間の研修を経て初めて「臓器別の専門医研修」を受ける仕組みに変革すべきと提案しました。

前者の4年間の研修を受けた医師は「総合診療医」として、▼専門分野にとらわれない幅広い知識▼リハビリ・看護・介護・栄養など職種横断的な知識—を持ち「多職種からなるチーム医療」を実践するリーダー的役割を地域で果たすことは期待されます。具体的には、総合診療医は「治療」を行うのみならず、看護・介護をはじめとする多職種とともに「栄養管理」「リハビリ」「患者の全身状態の管理」までも行うことが求められます。

こうした「総合診療医の養成」とともに、▼病院の機能分化▼介護保険のLIFEデータベースと、医療保険のDPCとの一体化—を進めることで、急性期から慢性期、在宅医療、介護にいたるまで「首尾一貫したシームレスな医療・介護提供」が可能になると武久会長は見通します。

こうした仕組みを設けるには、法律改正(医療法、医師法など)が必要になってきます。武久会長は、今後、厚労省や文科省などの担当部局に働きかけを行っていく考えも明らかにしています。



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