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慢性期DPCの試案を年内に作成、2018年度改定での導入目指す―日慢協の武久会長、池端副会長

2016.5.13.(金)

 慢性期のDPC制度試案をこの9-10月にも作成して、病院経営に与える影響を試算した上で、年内にも厚生労働省に提出。2018年度の診療報酬改定での導入を目指したい―。

 日本慢性期医療協会の武久洋三会長と池端幸彦副会長は12日の定例記者会見で、このような構想を発表しました(関連記事はこちら)。

 武久会長は、「慢性期においても医療内容をガラス張りにし、きちんとした医療を行っている病院が評価されるべき」と強調しています。

5月12日の定例記者会見に臨んだ、日本慢性期医療協会の武久洋三会長

5月12日の定例記者会見に臨んだ、日本慢性期医療協会の武久洋三会長

慢性期入院医療もガラス張りにし、きちんと医療提供している病院を評価すべき

 療養病棟入院基本料は、現在、医療区分(1-3)とADL区分(1-3)のマトリックス(表)に基づく9つの包括診療報酬として設定されています。

 最も点数の高い医療区分3には「スモン病」や「24時間持続点滴を実施」「一定量以上の酸素療法」を実施している患者、医療区分2には「筋ジストロフィー患者」や「透析」「一定の頻回な血糖検査」を行っている患者が該当。最も点数の低い医療区分1は「医療区分2、3以外の患者」と定義されています。

 医療区分の内容は適宜見直され、直近の2016年度改定では「酸素療法」「頻回の血糖検査」「うつ症状の治療」などについてよりきめ細かな基準が導入されるなど、現場の実態に合わせるべく修正が行われています(関連記事はこちらこちら)。

 しかし武久会長は、現在の報酬体系には▽最も点数の低い医療区分1にも重症患者がいる▽処置の有無などで医療区分が決まる部分があり、不要な処置を誘発している可能性がある―といった根本的な問題点があることを指摘。

 こうした問題点の解決に向けて、傷病名と治療行為に応じた包括点数を設定する「慢性期DPC」を作成していく方針を日慢協として固めました。

 武久会長は、「慢性期DPCへの移行によって不適切な処置は減る。慢性期医療もガラス張りなる(DPCデータとして診療行為などを厚労省に提出する)のは良いことである。制度の隙間を付くような病院経営は好ましくない」と述べ、きちんとした医療を提供している病院がより高く評価される報酬体系への移行が必要と強調しています。

急性期のDPCをベースに、「死亡退院が多い」など慢性期の特徴踏まえた制度を検討

 慢性期DPCの制度設計イメージについて、武久会長は円滑な移行を考慮し、「現在の急性期入院医療対象のDPCをベースにし、そこに慢性期入院医療に特有の事項を加味していくことになるのではないか」との見解を示しています。

 慢性期と急性期の大きな違いとして、武久会長と池端副会長(慢性期DPC制度の担当副会長)は、次のような点を指摘します。

▽慢性期では高齢の入院患者が多いので、副傷病名のバリエーションを増やす必要がある(4つ程度は必要)

▽慢性期では手術はほとんどしておらず、処置の実施が多いので、手術・処置の区分は独自に設定する必要がある

▽慢性期では死亡退院が多く(40%以上、一方、7対1病棟では死亡退院は2%程度)、その際に提供している医療(苦痛の除去など)を適切に評価する必要がある

5月12日の定例記者会見に臨んだ、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長

5月12日の定例記者会見に臨んだ、日本慢性期医療協会の池端幸彦副会長

9-10月に試案作成し、病院への影響を調査。年末には厚労省に提出する考え

 詳細な制度設計はこれからですが、武久会長は「1日当たりの請求金額が現在の報酬体系よりも高くなったのでは、厚労省や財務省に受け入れてもらえない」と指摘。1日当たり請求金額が現在と同じ、あるいはわずか下がる程度の点数設定を考えていることが分かります。

 ただし、病院によってはブレが出ることが予想されるために、実際に試算する考えも表明。次のような具体的なスケジュール感を明らかにしています。

▽この9-10月に試案を作成

  ↓

▽会員病院を対象に病院経営に及ぼす影響を調査(慢性期DPCによる入院収入と、現在の医療区分に基づく報酬体系下での入院収入との比較など)

  ↓

▽本年末(2016年末)に厚労省に試案を提出

 その後、中央社会保険医療協議会や下部組織である入院医療分科会などでの議論を経て、2018年度の次期診療報酬改定での導入を目指す考えです。

将来的には「急性期→慢性期→在宅医療」で一環した報酬体系も視野に

 ところで武久会長は、急性期のDPCにおける入院期間III(診断群分類ごとの平均在院日数を超えてからの期間)が「30日の倍数」で設定する仕組みとなった点に着目。日慢協の会員病院(療養病棟)では、1か月以上の入院患者が5割程度(裏を返せば5割は1か月以内に退院している)であることや、療養病棟でも肺炎などの急性期患者を一定程度受け入れていることから、「急性期DPCから慢性期DPC」という連続的な報酬体系も将来的な構想として武久会長の頭の中にはあるようです。

 また、池端副会長は、2016年度改定で「在宅医療の報酬体系に『重症度』が導入された点」にも着目。「急性期」から「慢性期」、さらに「在宅医療」まで一定程度、連続した報酬体系とすることも視野に入れていることを暗に述べています(関連記事はこちら)。

 なお、日慢協では2010年に医療区分・ADL区分から脱却し、13対1・15対1を含めた新たな報酬体系を目指した「慢性期病態別診療報酬試案」を作成・公表しています。今回の慢性期DPC構想は、この試案をベースにし、より実態に合った報酬体系を目指すものと言えます。

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