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地域包括ケア病棟の手術・麻酔を包括外(出来高算定)に、点数据え置き―中医協総会

2016.1.27.(水)

 地域包括ケア病棟では、比較的軽度な急性期患者の受け入れ体制を充実させるため、手術と麻酔を包括評価の外に出し、出来高算定とすることを認める。その際、現在の包括点数は据え置く―。こういった提案が、27日の中央社会保険医療協議会・総会に示された短冊から明らかになりました。

 診療側委員は、「軽度な手術は地域包括ケア病棟で、高度な手術は7対1などで実施することになり機能分化が進む」と評価していますが、支払側委員は苦い表情です。

1月27日に開催された、「第325回 中央社会保険医療協議会 総会」

1月27日に開催された、「第325回 中央社会保険医療協議会 総会」

手術・麻酔の出来高算定で機能分化進む、と診療側

 地域包括ケア病棟においては、「手術と麻酔を出来高とすべきか否か」という点が、大きな争点になっていました。通常の「診療側vs支払側」という論争よりも、「診療側vs診療側」の論争が大きかったことが特徴的です(関連記事はこちらこちら)。

 この点について、27日の短冊では「出来高評価とする」方向が示されています。

 ところで包括範囲が一部分を除くのであれば、その分、包括点数を引き下げることが筋と言えそうです。しかし、短冊からは「包括点数は据え置く」ことが分かります。

 これに対し支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)も、「手術・麻酔の出来高化は時期尚早である。仮に出来高とするのなら包括点数は引き下げるべき」と主張。

 しかし診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)や猪口雄二委員(全日本病院協会副会長)は、「手間のかかる高度な手術は急性期で、一般の比較的軽度な手術は地域包括ケアでという機能分化が進む」「現在の包括点数そのものが不十分である(点数引き下げは好ましくない)」と述べ、理解を求めました。出来高・包括点数据え置きの方向で改定内容が詰められる見込みです。

 

 また短冊では、次のような病院において「地域包括ケア病棟は1病棟に限定する」方針も示されました。今年(2016年)1月1日時点で既に複数の地域包括ケア病棟を届け出ている場合はこの限定から除外されますが、それ以後に複数病棟を届け出ることはできなくなります。この点、診療側の万代恭嗣委員(日本病院会常任理事)は「駆け込みの転換は許すべきでないという厚労省の考えは理解できるが、転換に向けて準備を進めている病院もあると思う。弾力的な運用をしてほしい」と要望しています。

▽許可病床数500床以上の病院

▽救命救急入院料、特定集中治療室管理料(ICU)、ハイケアユニット入院医療管理料(HCU)、脳卒中ケアユニット入院医療管理料(SCU)、小児特定集中治療室管理料を届け出ている病院

 なお、既報のとおり「病棟群単位の入院基本料」は、7対1と10対1の間で患者の転棟ができない旨が規定されています。つまり患者の容態が安定し、看護必要度が低くなってきたので7対1から10対1に転棟してもらおう、ということができないのです。一方、7対1から地域包括への転棟は可能ですが、上記のとおりICUなどを保有する病院では1病棟しか設置できなくなります。施設基準をクリアすることが難しい7対1にとっては、進むべき選択肢がかなり狭められた形と言えそうです。

療養病棟、一般病棟などから転棟した患者の在宅復帰をより高く評価

 療養病棟をはじめとする慢性期医療に関しては、これまでの議論を踏まえて次のような見直しが行われます(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

(1)療養病棟入院基本料2(25対1など)でも、医療区分2・3の患者割合基準を設ける(数値は未定)

(2)医療区分のうち「酸素療法」「頻回の血糖検査」「うつ症状の治療」について、きめ細かな状況を考慮する

(3)在宅復帰機能強化加算を見直す

(4)障害者施設、特殊疾患病棟に入院する脳卒中患者(医療区分1と2のみ)について、評価を見直す

(2)のうち酸素療法については、現在、一律に医療区分3に該当しますが、患者の状態に応じて細分化します。まず「常時、毎分3リットル以上を必要とする状態」あるいは「流量が3リットル未満でも、心不全(NYHA重症度のIII度・IV度)、点滴治療(肺炎などの急性増悪による)を実施している場合」には、現行どおり医療区分3となりますが、そうでなければ医療区分2となります。

 また頻回の血糖検査では「インスリン製剤・ソマトメジンC製剤を1日1回以上注射」するケースに限定(検査日から一定期間該当)して、うつ状態では「精神保健指定医がうつ症状に対する医薬品を投与している」ケースに限定して、医療区分2と評価されます。

医療区分2・3に該当する「酸素療法」「頻回な血糖測定」「うつ状態」について、きめ細かな状況を勘案する

医療区分2・3に該当する「酸素療法」「頻回な血糖測定」「うつ状態」について、きめ細かな状況を勘案する

 

 (3)の在宅復帰機能強化加算については、「他院からの転棟患者」の在宅復帰をより高く評価するために、次のような見直しが行われます。

▽在宅復帰率(50%以上)を計算するに当たり、退院からの転棟患者には入院期間の制限を設けず、自院からの転棟患者は「入院期間が1か月以上」という制限を設ける

▽これまでの病床回転率の考え方を大きく転換し、「一般病棟・地域包括ケア病棟から転棟して在宅復帰した患者が、全入院患者の一定割合以上」と見直す

現在の在宅復帰機能強化加算の算定要件

現在の在宅復帰機能強化加算の算定要件

療養病棟入院基本料1の「在宅復帰機能強化加算」について、「他院の急性期病棟などからの転棟患者の在宅復帰」をより高く評価する

療養病棟入院基本料1の「在宅復帰機能強化加算」について、「他院の急性期病棟などからの転棟患者の在宅復帰」をより高く評価する

 

 (4)の障害者施設・特殊疾患病棟に入院する脳卒中患者については、新たに「医療区分2に該当する患者の点数」と「医療区分1に該当する患者の点数」がそれぞれ設定されます。この場合、障害者施設(原則、出来高)、特殊疾患病棟(包括範囲が小さい)に入院していても、療養病棟入院基本料と包括範囲が同じく設定されます。点数については、療養病棟の点数が参考にされますが、具体的な水準は今後さらに調整されます。

 ただし中医協では、「障害者施設などに入院する脳卒中患者には状態の不安定な患者も少なくない」との指摘があったことから、短冊では、医療区分3に該当する場合は現行どおり「障害者施設等入院基本料、特殊疾患病棟入院料、特殊疾患病棟入院医療管理料に規定する点数」を算定することが明確にされました。

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