療養病棟の報酬、DPC分類導入し、入院期間3の点数を勘案して設定せよ―日慢協の武久会長
2015.8.7.(金)
療養病棟入院基本料の医療区分を廃止し、DPCの診断群分類と報酬を導入すべきである。また、認知症を看護必要度の中で評価する必要がある―。このような提言を、日本慢性期医療協会の武久洋三会長が6日の定例記者会見で発表しました。
またこうした提言内容が実現するまでの間、「認知症を医療区分2と3で評価する」ことも提案しています。
療養病棟入院基本料は現在、患者の医療区分(1-3)とADL区分(1-3)によって9つに設定されています。医療区分3は「スモン、24時間の持続点滴、中心静脈栄養など」、医療区分2は「筋ジストロフィー、多発性硬化症、透析、頻回の血糖検査など」、医療区分1は「医療区分2と3以外」となっています。
この点について武久会長は「医療区分は、(難病以外は)傷病ではなく、行われている処置の内容に基づいて設定されている」と指摘。2014年度の前回診療報酬改定でDPCデータの提出が全病棟に認められたことを踏まえて、「医療区分を廃止し、DPCの診断群分類を導入してはどうか」と提案しました。
ここで医療区分は主に処置による分類であるのに対し、DPCは傷病名をベースとした分類である点が気になりますが、武久会長は、次のように「医療区分の状態をDPCの疾患名に置き換える」ことは十分可能と説明しました。
▽医療区分の「24時間持続して点滴を実施している状態」は、DPCの「栄養障害(その他)、体液量減少症、胃の悪性腫瘍、脳梗塞、誤嚥性肺炎、敗血症」に該当
▽医療区分の「尿路感染症に対する治療を実施している状態」は、DPCの「腎臓または尿路の感染症、腎・泌尿器の疾患(その他)、上部尿路疾患」に該当
▽医療区分の「酸素療法を実施している状態」は、「誤嚥性肺炎、運動ニューロン疾患等、慢性閉塞性肺疾患」に該当
さらに報酬水準については、DPCの入院期間3(平均在院日数を超え、平均在院日数+2SDまでの期間)の点数を参考に設定することを提案しました。武久会長によると、呼吸不全(その他)のDPC入院期間3の点数は1687点であるのに対し、気管切開に対する療養病棟入院基本料1の点数は1629点、パーキンソン病の点数はDPC入院期間3では1575点なのに対し、療養病棟入院基本料1では1633点で、現在でも「似通った」点数設定になるといいます。
武久会長は「療養病棟でもDPCデータ提出が認められており、これを報酬設定に活用することに何ら不合理はない」と強調しています。
また武久会長は、認知症の有無が看護提供に大きな影響を及ぼすと強調、さらに「一般病棟はもちろん、療養病棟でも認知症は十分に評価されていない」と述べて、急性期から慢性期を通じた認知症患者における医療・看護必要度を評価軸の1つとして導入すべきと訴えました。
この点については厚生労働省の「入院医療等の調査・評価分科会」でも勘案されており、重症度、医療・看護必要度のB項目に「診療・療養上の指示が通じる」「危険行動」の2項目を追加する(ICU、HCU、一般病棟でB項目の設定を統一する)方向が固まりつつあります。
しかし武久会長は、「B項目はもっぱら患者のADLを評価するもので、認知症の評価はなじまないものではないか」と指摘。一方、「A項目は医療的な処置を評価するもので、やはり認知症の評価は毛色が異なる」とも述べており、急性期から慢性期を通じた看護必要度の中で何らかの評価(例えば新たなC項目としての設定)をすべきとの考えを示しています。
ただし、これまでに示された「療養病棟におけるDPCの診断群分類の導入」や「急性期から慢性期までの一貫した認知症患者の評価導入」には一定の時間がかかるとし、それまでの間「医療区分の中で、次のように認知症を評価する」よう求めました。
▽認知症高齢者の日常生活自立度IV(日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする)とM(著しい精神症状や問題行動あるいは重篤な身体疾患が見られ、専門医療を必要とする)は医療区分3
▽自立度III(日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さがときどき見られ、介護を必要とする)は医療区分2
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