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GemMed塾 看護モニタリング

医療・介護分野は深刻な人材不足、「医療・介護」の魅力の強力発信とともに、「紹介手数料適正化」も考えてほしい—日慢協・橋本会長

2023.12.15.(金)

医療・介護分野の人手不足は深刻であり、医療・介護サイドが「自施設の魅力の発信・広報を強化」する、ハローワークに「医療介護専門部署」を設置する、医療・介護業界が一体となり求職者に訴求するなどの取り組みを進める必要がある—。

また、有料人材紹介会社に「紹介料を適切な水準に抑える」ことをお願いしたい—。

日本慢性期医療協会の橋本康子会長と池端幸彦副会長が12月14日に定例記者会見を行い、こうした点を訴えました。

12月14日の定例記者会見に臨んだ、日本慢性期医療協会の橋本康子会長

紹介手数料が病院・介護事業所経営を大きく圧迫している

医療・介護人材の確保は「医療・介護提供体制の根幹」となりますが、例えば「生産年齢人口の減少」や「他産業の賃上げ」により困難な状況に直面しています。実際に本年(2023年)6月時点の有効求人倍率を見ると、全産業平均では1.19倍(1.19人の必要求人に対し、応募は1人というイメージ、数字が大きいほど人材不足であることを意味する)であるのに対し、介護職は4.02倍、医師・歯科医師・薬剤師等は2.22倍、看護職は1.99倍と高くなっています。

医療・介護分野の人手不足は深刻である(日慢協会見1 231214)



ところで医療・介護サービス提供にはケアの質・安全確保のために厳しい「人員配置基準」が設けられています。例えば、医療法では一般病院について「医師は患者16人に対し1人以上、看護師は患者3人に対し1人以上(診療報酬の基準に換算する場合は5倍(つまり看護配置で言えば15対1以上)する」などという標準人員が定められており、これを満たさない場合(いわゆる標欠医療機関)では指導等の対象になるとともに、診療報酬の減額が行われます。また、診療報酬上は医療法標準よりも厳しい人員配置基準(例えば急性期一般入院料1では7対1(医療法の基準に換算すると1.4対1)看護配置など)が設けられ、基準を満たさない場合には「低い区分の、低い報酬を算定」しなければならなくなります。

このため医療従事者が離職した場合には、すぐさま「新しい人材の確保」をしなければ、「低い区分の、低い報酬を算定」しなければならないケースが起こりえます。

この人材確保のルートとしては、「直接雇用」(病院の求人に対し、医療従事者自らが応募してくるケース)や「ハローワーク利用」などのほか、「有料人材派遣会社の利用」が最近では多くなってきています。厚生労働省の調査では「医療・介護分野全体での、ハローワーク・有料人材派遣会社の比率は4対6と、有料人材派遣会社の方が多い」状況です(職種による差があるが、医師や看護師、医療技術者で顕著に有料人材派遣会社経由が多い)。

医療・介護分野でも「人材紹介会社」利用が増加している(日慢協会見2 231214)



また日慢協の調査では、2022年度には「会員病院の77%が有料人材派遣会社を活用」しており、「2022年度入職者の4分の1は有料人材派遣会社経由である」ことが分かりました。

日慢協会員病院の「人材紹介会社」利用状況(日慢協会見3 231214)



ただし橋本会長は「紹介手数料が高額で、病院経営を圧迫している」と訴えます。例えば、日慢協調査では「年間、1病院当たり平均で812万円、最高では5000万円超の紹介手数料が発生」しており、また厚労省の調べでは2021年度における医療・介護分野の紹介手数料は1215億円(医療・介護費総額の0.2%に相当)にも上っています(上図参照)。橋本会長は「2022年度の診療報酬改定は本体+0.43であったが、その半分は有料人材派遣会社に流れてしまっている」とコメントしています。

日慢協会員病院の「紹介手数料」負担(日慢協会見4 231214)



こうした中で日慢協会員からは「紹介料について『上限』を設ける、『定額』とするなどの対応を図れないか」との声も出ています。紹介料を抑えることができれば、その分を医療スタッフの賃金に充てることができ、結果、離職防止につながることも期待できるためです。

しかし、自由競争である紹介料について、国が上限を設けたり、一律の定額を規定することなどは、独占禁止法に抵触する恐れがあり、極めて困難と考えられます(「目安」を示すことも極めて困難)。



そこで橋本会長は、▼医療・介護サイドが自施設の魅力を発信・広報することに注力する▼ハローワークに「医療介護専門部署の設置」を行う▼医療・介護業界が一体となり、求職者に訴求する—ことの重要性を強調しました。

また、医薬品や医療材料などは「卸業者を交渉して納入価格を抑える」「より低価格で納入する卸業者から購入する」などの対応が一定程度可能ですが、医療・介護人材に関しては、上述のように「人手不足が深刻」であるため、こうした対応が困難です。しかし、橋本会長は「紹介手数料も、元を辿れば『社会保険料・税金・患者負担』であり、有料人材派遣会社には、紹介手数料を適切な水準に抑えることをお願いしたい」とも訴えています。

医療・介護業界が一体となって人材確保に向けた取り組みを強化する必要がある(日慢協会見5 231214)



なお、介護報酬改定・介護保険制度改革の中で大きな懸案事項の1つとなっている「介護医療院や老人保健施設(療養型・その他型)の多床室について、入所者に室料負担を求めるべきか否か」)という点について、橋本会長・池端副会長は「多床室の療養環境は必ずしも良いとは言えない。介護医療院では病院から転換したところも少なくなく、『自宅と同様の生活の場』と考えることはできない。室料負担導入は避けるべきである」旨を改めて強調しています。



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