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介護福祉士も加えた「寝たきり防止チーム」を病院内に設置し、専門的視点でADL改善に日常的に取り組むことが重要—日慢協・橋本会長

2023.9.20.(水)

高齢者が入院することで寝たきりになってしまう「医原性寝たきり」の防止が急務であり、医療機関に医師・看護師・リハビリ専門職・管理栄養士・薬剤師、さらに「介護福祉士」も交えた「寝たきり防止チーム」を設置し、ADLリハビリ・リハビリ介護を積極的に提供していく必要がある—。

日本慢性期医療協会の橋本康子会長が9月14日に定例記者会見を行い、こうした提案を行いました。

介護福祉士も交えた「寝たきり防止チーム」を医療機関に設置せよ(日慢協会見1 230914)

専門知識を持つ介護福祉士が、適切なADLリハビリ・リハビリ介護を提供せよ

日慢協ではかねてから「寝たきり防止のために、身体機能が落ち切るまえに適切なリハビリ・栄養管理を行う」ことが極めて重要であると提唱しています。

2025年度から40年度にかけて、急速に現役世代人口が減少し、「医療・介護職員の確保」が極めて難しくなっていきます。そうした中では「要介護高齢者、とりわけ寝たきりの要介護高齢者を減らす」ことが極めて重要となり、橋本会長は「1%、つまり100人に1人、寝たきりを防止できれば、現在の介護職員数で将来の医療・介護ニーズを賄うことができる計算となる。『100人に2人、3人』と寝たきり防止人数を増やしていけば、減少していく現役世代人口でも、将来の医療・介護ニーズを十分に賄うことができ、将来に光が見えてくる」と訴えています。

寝たきり高齢者を1%減らせば、今の介護提供体制でも対応可能である(日慢協1 230720)



また、寝たきり防止のための方策として、これまでに▼急性期段階で適切なリハビリ・介護を行う個室設置の柔軟化によりADL改善→寝たきり防止を図る十分な栄養補給により、寝たきりからの改善、リハビリ効果の上昇を目指す退院・退所直後の「訪問リハビリ」を積極的に行う—ことなどをこれまでに提言。

さらに9月14日の定例記者会見では「介護福祉士も加えた寝たきり防止チームを医療機関に配備する」ことを提言しました。

すでに、多くの病院で医師・看護師・薬剤師・リハビリ専門職・管理栄養士からなる「寝たきり防止チーム」が設置され、医師の指導の下で専門的なリハビリ(疾患別リハビリなど)や栄養補給が実施されています。

しかし、専門的なリハビリは急性期病棟では実質2時間未満の実施にとどまっています。橋本会長は、ここに▼朝晩の更衣▼起床後・就寝前の整容(洗面、歯磨き、化粧、髭剃りなど)▼トイレ誘導・おむつ交換などの排泄介助▼食堂への往復・車椅子から椅子への座り替え▼食事介助▼毎食後の口腔ケア▼靴の脱ぎ履き▼入浴・清拭—を「ADLリハビリ・リハビリ介護」を適切に組み合わせることで、機能改善と入院期間短縮が期待できると指摘します。

ADLリハビリ・リハビリ介護の重要性(日慢協会見3 230914)



ところで、こうした「更衣や整容、移乗などはすでに看護師や看護補助者が実施しているではないか」とも思われます。この点について橋本会長は、次のように指摘し「専門職である介護福祉士が担うことが適切である」と強調します。

▽看護師は極めて多忙であり、今後、医師働き方改革に伴うタスクシフトでますます多忙となり、ADLリハビリ・リハビリ介護を行う時間が確保できなくなる。医療・看護内容が高度化・複雑化する中で、看護師は「看護師資格保有者でなければ実施できない業務」に集中特化すべきである

▽看護補助者には資格要件が設けられておらず、「専門的な視点でのADLリハビリ・リハビリ介護実施」は難しい。例えばベッドから車いすへの移乗1つをとっても、漫然とした実施では、何回行っても機能は改善しないが、専門的な視点で行えば徐々に「自立」方向に改善していく

看護補助者と介護福祉士(日慢協会見2 230914)



高齢者は「入院し安静臥床するだけで時間とともに心身の機能が低下し、寝たきりに陥ってしまう」ことが中央社会保険医療協議会などでも指摘されるに至っています(関連記事はこちらこちら)。

また、1991年には当時の厚生省が「寝たきりゼロへの10か条」を提唱し、上述の「ADLリハビリ・リハビリ介護の重要性」を説いていますが、実施が低調であり、寝たきりは「増えてしまっている」状況にあります。その背景には「看護職員の多忙さ」と「専門性のない補助、介助」があるのではないか橋本会長は指摘し、「専門職である介護福祉士を配置し、適切にADLリハビリ・リハビリ介護を継続実施することで、寝たきり防止に強力に取り組む必要がある」と訴えています。

厚生省が1991年に提唱した「寝たきりゼロへの10か条」(日慢協会見4 230914)



ところで、「介護福祉士の病院配置」に対しては、「介護現場で人手不足が深刻化しており、それを助長することになる」との批判もあります。この点について橋本会長は「病院での寝たきり防止が実現できれば、介護現場の負担を減らすことができる。寝たきり防止を進めなければ、高齢化に伴って要介護高齢者がますます増加する中で、どれだけ人手を増やしても追いつかない」との考えを改めて提示しています。

なお、日慢協ではDLリハビリ・リハビリ介護の知識・技術習得に向けた研修を実施しており、今後「研修の拡充を図る」考えを橋本会長は表明しています。



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