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退院・退所から3か月間、通院困難者に限定せず「在宅生活の維持を目的とした集中型の訪問リハビリ」を可能とせよ—日慢協・橋本会長

2023.4.14.(金)

リハビリの目的は「在宅生活に戻る」ところにあるが、医療保険・介護保険ともに「在宅の状況を踏まえたリハビリ」の提供は困難である―。

そこで、2024年度の診療報酬・介護報酬同時改定において、退院・退所から3か月間、通院困難者に限定せずに、「在宅生活を可能とする、在宅生活を維持する」ことを目的とした【早期集中訪問リハビリ】を実施可能としてはどうか―。

実際に、高密度の訪問リハビリを提供した患者では「大きなADL・IADL改善」効果が上がっている―。

日本慢性期医療協会の橋本康子会長が4月13日に定例記者会見を開き、こうした提言を行いました。

「アウトカム評価」などを導入し、訪問リハビリの質を担保せよ

2024年度には診療報酬・介護報酬の「同時改定」が控えており、中央社会保険医療協議会と社会保障審議会・介護給付費分科会の「意見交換会」の開催が始まっています。

すでに「医療・介護連携」「リハビリ・口腔・栄養の一体的推進」「要介護高齢者への急性期入院医療提供」について議論が行われ、今後、▼高齢者施設等における医療▼認知症▼人生の最終段階における医療・介護▼訪問看護—などについても、現状と課題、進むべき方向等について「共通認識」を醸成していきます。

そうした中で橋本会長は「自宅復帰を見据えた、退院直後の集中的な『訪問リハビリ』が必要である」との考えに立って、提言を行っています。

リハビリについては、「急性期から回復期にかけての機能回復・改善を目的とする医療保険リハビリ」と「維持期・生活期の機能維持を目的とする介護保険リハビリ」とがあります。いずれも「日常生活に戻る」「在宅(居宅)生活に戻る」ことを目的としています。

橋本会長は、このリハビリの目的に照らせば「居宅での生活環境、生活課題、生活支援資源などを踏まえたリハビリが必要である」と訴えており、すでに医療保険・介護保険の双方に「訪問リハビリを評価する報酬項目」が用意されています(例えば、医療保険ではC006【在宅患者訪問リハビリテーション指導管理料】が、介護保険では【訪問リハビリテーション費】ある)。

しかし、橋本会長は、現在の訪問リハビリには、医療保険給付にも介護保険給付にも「場所・量・質の課題」があると訴えます。

【場所の課題】
▽「訪問リハビリは医療保険・介護保険のいずれでも「通院・通所が困難な者」に限定される

【量の課題】
▽医療保険の疾患別リハビリは「最大で1日9単位(=3時間)」まで行えるが、訪問リハビリは▼医療保険では「通常、週に6単位(=2時間)」「退院から3か月間、週に12単位(=4時間)」まで▼介護保険では「通常、週に120分(=2時間、20分×6回)」「退院・退所から3か月間、週に240分(=4時間)」まで―しか行えない

【質の課題】
▽例えば医療保険では、回復期リハビリ病棟で「アウトカム評価」が設けられている(リハビリ実績が低い場合には、リハビリ提供可能数に制限あり)が、介護保険の訪問リハビリには、アウトカム評価などはなく、3年以上勤務の理学療法士等を配置した場合の【サービス提供体制強化加算】などがあるのみ

現在の「訪問リハビリ」の問題点(日慢協会見1 230413)



まず「場所」については、「居宅生活復帰を目指す」という目的に照らせば、通院・通所可能な者に対しても「医療従事者が居宅を訪問し、生活環境、生活課題、生活支援資源などを確認して、リハビリ実施計画を立て、リハビリを実施する」ことが重要ではないかと橋本会長は指摘します。

ここからは「訪問リハビリの対象者を限定する」規定は廃止すべきと思えます。もっとも、訪問リハビリは「密室」であり、適切かつ効果的なリハビリ実施を担保する必要もあるため、「期間制限」を考慮してはどうかとも橋本会長は指摘。例えば、「地域の介護保険サービス、生活支援サービスにつながるまでの3か月間」などを上限に「すべての退院・退所者に訪問リハビリ実施を認める」仕組みなどが考えられるでしょう。



次に「量」については、医療保険の疾患別リハビリに匹敵する量を訪問リハビリで確保することにより「医療保険の疾患別リハビリを同程度の効果・成果があがる」と橋本会長は、実際の患者例を提示しながら訴えました。



さらに「質」に関しては、「アウトカム評価」や「学術・職能団体の認定したハイスキルのリハビリ専門職配置の評価」などを行うべきと提案します。

上述のように、訪問リハビリは密室で行われます。そこで「対象者の制限大幅緩和」「量的制限の大幅緩和」が行われれば、「効果の上がらないリハビリが、だらだらと提供されてしまう」可能性も否定できません。これは患者・利用者にとっても、医療保険・介護保険にとっても非常に不幸なことです。

そこで橋本会長は「質の高い訪問リハビリ」を担保するために、▼アウトカム評価▼ハイスキルリハビリ職の配置—という仕組みを準備する必要があると指摘しています。

アウトカムについては、例えば「ADL改善」のほか、居宅生活で重要となる「IADL」(通学・通勤・社会参加などための自転車運転、スクーター運転、自動車運転、電車利用、日常生活維持のための買い物、子供の送迎、復職など)を重視した指標設定が重要になってくるでしょう。

またハイスキルリハビリ職については、職能団体(日本介護福祉士会など)による「知識・技術認定」がなされたリハビリ専門職を配置する医療機関・介護事業所等について「加算による評価」を行うことで、「優れたリハビリ職が訪問を行う」→「質の高いリハビリが提供される」ことが担保されると考えられます。



橋本会長は、こうした点を考慮した「早期集中型訪問リハビリ」を2024年度の次期同時改定で創設することを提言しています。改めて整理すると、次のような仕組みを橋本会長は想定しているようです。医療保険給付とするのか、介護保険給付とするのか、などは今後の検討課題となりますが、これまで見てきた目的に照らせば「両方の給付に設定しておく」ことが好ましそうです(65歳以上の要介護者では介護保険の【早期集中訪問リハビリ】を利用し、それ以外の者は医療保険の【早期集中訪問リハビリ】を利用できるようにしておくことが重要)。

【対象者】
▽病院から退院・介護施設から退所したリハビリが必要な者(通院・通所困難な者に限定しない)

【算定期間】
▽退院・退所から3か月以内

【リハビリ提供量の上限など】
▽今後の検討であるが、「医療保険の疾患別リハビリ」並みの上限とすれば、大きな効果が得られる

【リハビリの内容】
▽ADL改善はもとより、「IADL」改善も目的とする
▽訪問を行うリハビリスタッフは、在宅生活をサポートするケアマネジャーや介護サービス事業者と連携し「3か月の早期集中訪問リハビリ終了後の介護サービス」につながるようなリハビリ提供を行う

【質の確保】
▽アウトカム評価指標を設ける(質の低いサービスでは減算など)
▽ハイスキルのリハビリ専門職による訪問については加算などで評価を行う

【早期集中型訪問リハビリ】の創設を提言(日慢協会見2 230413)



こうした提言が、中医協・介護給付費分科会論議の中でどのように取り扱われるのか、今後の動きに注目が集まります。



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