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GemMed塾 過負荷状態の”看護部”が今こそ考えるべき業務改善・適正化 ~最前線の看護部門ならではの医療の質と経営の質の向上のための具体的なアクションとは?~

地域の医療・介護需給を把握し、地域の医療・介護関係者で対応策を議論していくことが極めて重要—厚労省検討会

2025.2.4.(火)

2025年から2040年にかけて少子高齢化がさらに進むが、その態様は地域ごとにバラバラである。そうした中で、例えば大分県では「介護予防・自立支援」に力を入れ、要介護度・要支援度の改善に伴って介護報酬が減少してしまう部分を、独自の加算で補填している—。

また、地域の医療・介護ニーズと医療・介護提供体制を十分に把握、分析し、地域の医療・介護関係者が膝を突き合わして対応策を議論することが極めて重要となる—。

2月3日に開催された「『2040年に向けたサービス提供体制等のあり方』検討会」(以下、単に検討会とする)で、こういった意見発表が行われました。検討会では、さらに「先進的な取り組みを進める事業者・団体」などの意見聴取も進め、今春(2025年春)の中間とりまとめを目指します(障害福祉や児童施策などを含めて今夏(2025年夏)に最終とりまとめ)。中間とりまとめは、社会保障審議会・介護保険部会に報告され、今後の介護保険制度改正や2027年度以降の介護報酬改定などの重要な検討要素となります。

大分県では介護予防等に力を入れ、要介護度等改善による介護報酬減を加算で補填

2025年度までに、人口の大きなボリュームゾーンを占める団塊世代がすべて75歳以上の後期高齢者に達します。2025年度以降は、高齢者人口そのものは大きく増えない(高止まりしたまま)ものの、▼85歳以上の高齢者比率が大きくなる(重度の要介護高齢者、医療・介護の複合ニーズを持つ高齢者、認知症高齢者などの比率が高まっていく)▼支え手となる生産年齢人口が急激に減少していく(医療・介護人材の確保が極めて困難になる)—ことが分かっています。少なくなる一方の若年世代で、多くの高齢者を支えなければならず、「効果的かつ効率的な医療・介護提供体制」の構築がますます重要になってきます。

また、こうした人口構造の変化は、地域によって大きく異なります。ある地域では「高齢者も、若者も減少していく」、別の地域では「高齢者も、若者もますます増加していく」、さらに別の地域では「高齢者が今後増加するが、そう遠くない将来に減少していく」など区々です。

そうした中では、どのようにして「高齢者向けサービス」等を確保すればよいかが大きな課題となり、検討会で次のような論点について議論を進めています(関連記事はこちら)。
(1)人口減少・サービス需要の変化に応じたサービスモデルの構築や支援体制をどう考えるか
(2)介護人材確保・定着、テクノロジー活用等による生産性向上をどう進めるか
(3)雇用管理・職場環境改善など経営支援をどう考えるか
(4)介護予防・健康づくり、地域包括ケアと医療介護連携、認知症ケアをどう進めるか



2月3日の会合では、「先進的な取り組みを進める自治体」と「学識者」から意見聴取を行いました。

前者の「先進的な取り組みを進める自治体」としては、高知県・大分県・鳥取県といった中山間地を多く抱える地域から、次のような取り組みが報告されました。

【高知県】
▽地域における支え合いの力を再構築し、支援が必要な住民が必要なサービスを受けられる体制を確保するために、▼既存の制度サービスの枠組みを超え▼子どもから高齢者まで、年齢や障害の有無にかかわらず▼1か所で必要なサービスを受けられる—小規模多機能支援拠点【あったかふれあいセンター】を設置
▽センターでは、「集い+α(預かる・働く・送る・交わる・学ぶ等)、相談・訪問・他機関へのつなぎ、生活支援」を基本機能とし、必要に応じて移動手段の確保、配食、泊まり、介護予防、認知症カフェ、子ども食堂などの機能を追加
▽「利用者」が、ある場面では「サービス提供者」にもなる
▽▼「集い」や「交わる」機能による住民同士の交流機会の創出▼「訪問」や「配食」機能などによる独居高齢者の見守り▼「学ぶ」機能による防災・防犯の取組▼「働く」機能による就労支援—といった効果が生まれている

高知県プレゼンより1(2024年サービス提供体制検討会1 250203)

高知県プレゼンより2(2024年サービス提供体制検討会2 250203)



【大分県】
▽要支援者の「重度化防止、自立支援」に向けて、地域で【短期集中予防サービス→「通いの場」等→地域包括支援センター→短期集中予防サービス・・・】という自立支援サイクルを構築
▽ただし、こうしたサービスが必要な高齢者(短期集中予防サービスで自立に向けた改善が期待できる高齢者)の見極めなどが課題であったことから、ICT・リハビリ専門職の知識・ノウハウなどを活用した【自立支援型ケアマネジメントシステム】を導入
▽要介護度・要支援度の改善に対し「独自の加算報酬」を設定(要介護度・要支援度が改善した場合、介護保険サービスの基本報酬が下がってしまう部分を一定程度、補填する)(関連記事はこちら

大分県プレゼンより1(2024年サービス提供体制検討会3 250203)

大分県プレゼンより2(2024年サービス提供体制検討会4 250203)

大分県プレゼンより3(2024年サービス提供体制検討会5 250203)



【鳥取県】
▽「買物環境」、「地域交通」、「医療・介護」などの各種施策を繋げることで、中山間地域における「生活基盤確保」を図る
▽中山間地域では「訪問介護」サービスの確保が難しいため、「事業存続が困難となっている訪問介護事業所の運営費を市町村が支援した場合、その2分の1を県が補助する」支援事業を実施
▽山間地では「、春から秋には訪問介護を利用するが、冬にはショートステイ等に移行する」ケースが多く、「冬季には訪問介護事業の収益が減少してしまうが、春から秋のために人員を減らすこともできない」という課題がある。そこで、▼市町村が定める「基準該当サービス」に登録して人員基準を緩和する→▼緩和した基準に照らして「余剰」となっているスタッフをショートステイ等に派遣する—などの「人材の有効活用に取り組む事業者」に対し、必要な人件費の一部を支援する仕組みを設置

鳥取県プレゼンより1(2024年サービス提供体制検討会6 250203)

鳥取県プレゼンより2(2024年サービス提供体制検討会7 250203)



まさに地域の実情を踏まえ、地域にマッチした対策が図られていますが、こうした取り組みに対して、構成員からは▼市町村の取り組みが今後重要になってくる。その際、「県が市町村を引っ張っていく」ケース(例えば奈良県)と、「大きな市が近隣の町村を引っ張っていく」ケース(例えば広島県)があると思う。地域ごとにその点も明確にしておくことが重要であろう(大屋雄裕構成員:慶應義塾大学法学部教授)▼地域独自の取り組みについて、「十分な黒字」が出るように、つまり事業が安定して継続できるようにしておくことが今後、重要になるのではないか(中村厚構成員:日本クレアス税理士法人富山本部長)—などのアドバイスがなされました。

地域における医療・介護のニーズと提供体制をしっかり分析し、対応策を検討せよ

また、学識者として意見陳述した松田晋哉構成員(産業医科大学教授)は、「各地域の医療・介護の需給状況を診断したうえで対策を練る」ことの重要性を強調。

上述のように、高齢化・少子化などの状況は地域で大きくことなり、例えば▼高齢者も、若者もますます増加していく【大都市型】▼高齢者も、若者も減少していく【過疎地域型】▼高齢者が今後増加するが、そう遠くない将来に減少していく【地方都市型】—に3区分できます。



その際、大都市型や地方都市型の地域では、増大する高齢者の医療・介護ニーズに対応しなければなりませんが、「既存の医療・介護資源」をしっかり把握し、それを有効活用していくとともに、不足する部分の整備が重要となります。その際、「入院+施設入所+在宅医療」をセットで考えることが必要で、例えば「病院や介護施設が潤沢にない地域では、在宅医療提供にさらに力を入れる」ことが重要ですが、「緊急時の入院・入所に対応できる体制」確保にも力を入れる必要があります。

さらに「病院」と一口に言っても、高齢者に多い傷病(肺炎、尿路感染症)に迅速に対応でき、介護施設・事業所と緊密に連携できる病院(地域包括ケア病棟や地域包括医療病棟などを持つ病院など)の整備が重要です。2024年度の診療報酬改定介護報酬改定でもこの点への対応が図られています(関連記事はこちら)。

松田構成員プレゼンより(2024年サービス提供体制検討会8 250203)



この点について江澤和彦構成員(医療法人和香会理事長)は「新たな地域医療構想では、医療のみならず、介護も包含した将来の医療・介護提供体制ビジョンとなっている」点を強調。松田構成員も「自治体の医療・介護担当者、地域の医療・介護の職能団体が地域医療構想調整会議に出席し、地域の課題を共有し、膝を突き合わせて対応策を議論していくことが極めて重要である。データ分析を市町村が行うことは非現実的で、県内医学部がリーダーシップをとることが重要である」と強く訴えています(関連記事はこちら)。



病院ダッシュボードχ zeroMW_GHC_logo

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