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診療報酬改定セミナー2022 新型コロナ対策

コロナ禍の医療現場負担考え小幅改定とすべきか、2025年度の地域医療構想実現に向け大胆な改定とすべきか―中医協総会(1)

2021.8.25.(水)

8月25日に開催された中央社会保険医療協議会・総会で、入院医療改革に向けた議論が行われました。

細部については、別に入院医療に関する調査・評価分科会で議論が進んでおり、中医協総会では「総論的な議論」となりましたが、「新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう中で、医療現場の負担を考慮し、大きな見直しは避けるべき」とする診療側委員と、「団塊の世代がすべて後期高齢者となる2025年に向けて医療提供体制改革は待ったなしである。2024年度対応では遅すぎ、2022年度の次期診療報酬改定で大胆に地域医療構想を後押しするしっかりとした内容とすべき」とする支払側委員との間に、大きな意見の溝があります。この溝は、当然、急性期・回復期・慢性期といった細部でも大きく、今後の議論の行方に注目が集まります。

2022改定、「コロナ踏まえた手直し」にとどめるか、2025見据えて大胆に進めるべきか

2022年度の次期診療報酬改定に向けた議論が急ピッチで進められており、すでに次のような議論が行われています。

◆急性期入院医療に関する記事はこちらこちら
◆地域包括ケア病棟に関する記事はこちら
◆回復期リハビリテーション病棟に関する記事はこちら
◆慢性期入院医療に関する記事はこちら
◆入退院支援の促進に関する記事はこちら
◆短期滞在手術等基本料に関する記事はこちら
◆外来医療に関する記事はこちら
◆新型コロナウイルス感染症を含めた感染症対策に関する記事はこちら
◆医療従事者の働き方改革サポートに関する記事はこちら
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◆後発医薬品使用促進・薬剤使用適正化、不妊治療技術に関する記事はこちら



8月25日の中医協総会では、▼入院医療▼在宅医療―に関する総論的議論が行われました。本稿では入院医療に焦点を合わせ、在宅医療については別稿で報じます。

入院医療に関しては、お伝えしているとおり、まず下部組織である診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」(入院医療分科会)で、技術的な課題の整理などが進んでいます。今後、入院医療分科会での整理を踏まえて、秋から中医協総会で「具体的な改革内容」に関する議論が行われるため、それに向けて8月25日の中医協総会で「総論」に関する議論を行ったものと言えます。もちろん「各論」にも意見が及んでおり、今後の入院医療分科会での議論でも、その意見を踏まえた検討が行われることでしょう。

中医協では、急性期や回復期などの分野別議論に入る前に、「2022年度改定に向けた考え方」が診療側・支払側の双方から示されました。

診療側の城守国斗委員(日本医師会常任理事)は「新型コロナウイルス感染症が爆発的に拡大する中で、医療現場は2020年度の前回改定前と全く異なる状況にあり、少なくとも2022年度の次回改定では、医療現場に大きな影響を及ぼす改定は難しいと思う。コロナ感染症に係る臨時特例措置について、一定程度検証したうえでの手直しが重要な課題になる」と指摘。

対して支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)や安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は「2022年度から人口構造・疾病構造の急激な変化が生じ(2022年度からいわゆる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になりはじめ、2025年度に全員が75歳以上に到達する)、地域医療を守るためには『地域医療構想の実現』が必要不可欠である。コロナ禍で明らかになったように、急性期医療の機能強化、各病院の機能・役割分担が極めて重要である。2022年度の次期診療報酬改定では、コロナ禍であるが、あえて、これまでの延長ではなく、地域医療構想を後押しするしっかりした改革を行うべきである。2024年度での対応では遅すぎる」と強調しました。

また安藤委員は「医療提供体制改革に本気で取り組むためには、診療報酬の根本からの検討も必要となろう。数次の改定を見据えた中長期的な工程表を考える時期に来ているのではないか」とも付言しています。もちろん診療報酬改定は「連続した」ものですが、例えば「ある事項について目標を定め、●年度改定では●●を実施、次の〇年度改定では〇〇を実施する」といった具合に、連続性がより見えるような形にすることを安藤委員は提案したものと考えられます。ただし、医療を取り巻く環境は刻刻と変わるため、改定論議にそうした工程表作成が馴染むのかについても、しっかりと検討し合意を形成する必要があるでしょう。

「コロナ感染症対応」も「地域医療構想の実現」も、いずれも「待ったなし」の課題です(コロナ感染症により人口構造が変化するわけではない)。他方、コロナ感染症を始めとする新興感染症対策を確実なものとするためには、幸野委員の指摘するように、中長期的な視点に立って「医療提供体制の機能分化」を進めていくことが必要となり、両者は「相反する」ものではありません。

もちろん、大きな改革は医療現場の負担となることは城守委員の指摘どおりでもあります。

これらを総合的に考慮しながら、2022改定議論が進められていくことになります。この点は、入院医療に限ったものではないことも述べるまでもありません。

【救急医療管理加算】、データ踏まえた「要件の見直し」を求める声多し

上記のように、診療側と支払側として「基本的なスタンス」に違いがあるもので、両側ともに▼急性期▼回復期▼慢性期▼入院医療をめぐる横断的事項―について、それぞれ見解を述べています。

まず急性期について、診療側の島弘志委員(日本病院会副会長)は、▼感染症対応力の強化は「診療報酬」ではなく「補助金」で行うべきではないか▼【救急医療管理加算】の要件をきちんと整理し、見直すべきではないか▼病棟薬剤師の雇用・配置が困難であり、【病棟薬剤業務実施加算】の見直し(例えば地域包括ケア病棟などでの算定も認めるなど)―と言った考えを述べています。

【救急医療管理加算】は、「重篤な状態で救急搬送された患者」に対して、入院初期(7日まで)に濃密な検査・治療が必要な点を評価するものです。患者の状態について▼意識障害または昏睡▼心不全・呼吸不全▼ショック▼緊急手術等が必要―などと例示され、2020年度の診療報酬改定では「患者の状態を評価する指標」(呼吸不全であればP/F比)をレセプトに記載するとともに、加算2の対象と明示された「(意識障害などに)準ずる状態」「その他の重症な状態」の詳細をレセプトに記載することが必要とされました。

救急医療管理加算の概要(中医協総会(1)3 210825)

2020改定で、救急医療管理加算の算定に当たり、レセプトに患者状態などを記載することが義務付けられた(中医協総会(1)4 210825)



今後、この記載内容を詳しく分析していくことになりますが、島委員は「そもそも意識障害や緊急手術が必要など、【救急医療管理加算】の要件で例示されている患者は、救命救急入院料や特定集中治療室管理料を算定するユニットで受け入れることがほとんどだ。しかし、そこでは【救急医療管理加算】は算定できない。医療現場の実態を踏まえた要件に見直していく必要がある」と強く要望しています。

データの詳細分析については支払側の幸野委員も賛同していますが、診療側の城守委員は「コロナ感染症の影響もあり、また2次救急医療機関にとって経営上重要な加算でもある」とし、【救急医療管理加算】についての見直しは次期改定論議では避けるべきとの考えも示しています。



なお、城守委員は「度重なる改定で急性期ベッド(旧7対1・現急性期一般1など)を削減し、これがコロナ禍でのベッド不足を招いている」と指摘。ただし、「コロナ禍で問題視される、いわゆる『医療提供体制の逼迫』は、ベッド不足によるものではなく、医療資源の分散・散在や機能分化の遅れが原因である」と指摘する識者も少なくありません。今後の人口減少も考慮すれば「ベッドが不足している。増床が必要である」と安易に判断することは危険でしょう。

地ケア病棟や回リハ病棟、支払側は改革進めよと求めるが、診療側は慎重姿勢

また回復期(地域包括ケア病棟や回復期リハビリ病棟など)については、診療側の城守委員が「2020年度改定で実績要件(例えば回復期リハビリ病棟におけるリハビリテ実績指数など)を厳格化したが、コロナ禍で経過措置を延長しており、その効果を見極めることが難しい」と指摘し、「大きな見直し」には極めて慎重な姿勢です。同じ診療側の松本吉郎委員(日本医師会常任理事)も「強引な見直しを行えば、モラルハザードが生じる可能性、入院でのリハビリ医療提供ができない地域が生じる可能性もある」とし、慎重検討を求めています。

これに対して、支払側の幸野委員は、▼地域包括ケア病棟については、3機能の実施状況を踏まえ、必要な見直し・適正化を行う▼回復期リハビリ病棟については、現在の6区分を3区分に集約する(従前よりリハビリ実績指数要件のない入院料2・4・6の存在意義について、幸野委員は疑問を投げかけている)―といった大きな見直しの検討を要請しています。

個別論点になると、診療側と支払側との対立構造がより際立ってくるため、今後、どういった議論が進むのか注目していく必要があります。

経過措置の療養病棟、規定通り2022年3月で終了すべきか

慢性期入院医療については、「経過措置病棟」(20対1看護配置などを満たせない病棟)の扱いが問題となりました。経過措置病棟は、名称どおり「2022年3月まで」の期間で存続が認められているにすぎません。

この点、支払側の幸野委員は「基本的に終了(廃止)すべき(つまり経過措置の延長はしない)」との考えを提示。診療側の池端幸彦委員(日本慢性期医療協会副会長、福井県医師会長)は、この考えに理解を示したうえで、「経過措置病棟に入院する患者が困らないような対応も必要であり、丁寧な議論をするべきである」と指摘しています。

入院医療分科会では、この経過措置病棟について「短期間の入院で、運動器リハビリを集中的に提供している」とのデータが示され、あたかも「ミニ回復期リハビリ病棟」の体をなしていることが分かりました。そうしたデータも踏まえながら、「経過措置病棟の在り方」を考えていくことになるでしょう。

骨太方針2021で示された「更なる包括払い」推進の行方は・・・

ところで、骨太方針2021(経済財政運営と改革の基本方針2021)では、「医療提供体制改革を進めるために、さらなる包括払いの在り方を検討する」ことなどを打ち出しています。

骨太方針2021では、さらなる包括払いの推進を指示している(中医協総会(1)1 210825)



例えば、米国などで導入されるDRG/PPSに代表される「1入院当たり包括支払い方式」を推進すれば、次のように医療機関の再編・統合が進みます。

▼包括報酬の中で利益を最大化するために、各医療機関が入院日数をさらに短縮させる

▼病床利用率を維持するために、診療エリアを拡大する(より遠方からの入院患者獲得に動く)

▼地域で患者獲得競争が激化し、病院の言わば「勝ち負け」が明確となったり、「連携協定」が結ばれる

▼医療機関の再編・統合が進む



我が国では、1日当たり包括のDPC/PDPSが導入されていますが、「1入院当たり包括」に近いD方式も一部導入されています(入院初日に、ほとんどの包括報酬を支払う仕組み)。骨太方針2021に沿えば「D方式の拡大」が重要論点の1つになると思われますが、今後、どういう議論が行われるのか注目する必要があります。

DPCには、入院初日にほとんどの報酬を支払ってしまうD方式があり、事実上の「1入院当たり包括支払い」方式と言える(中医協総会(1)2 210825)



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