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診療報酬改定セミナー2022 新型コロナ対策

救急医療管理加算、加算1・加算2それぞれの役割を踏まえながら「対象患者要件」の明確化・厳格化など検討していくべき―入院医療分科会(1)

2021.8.27.(金)

【救急医療管理加算】については、2020年度の前回診療報酬改定で「患者の状態(重症度を評価する指標)」などを記載することとなった。その結果、課題とされていた「状態のバラつき」や「不適切な算定」(重篤でない患者にも加算を算定するなど)が改善傾向にある。2022年度改定では「入院の阻害」にならないよう配慮したうえで、患者状態の明確化などを進めていってはどうか―。

【救急医療管理加算2】の対象患者である「その他重症な状態」としては、▼脳梗塞▼腎臓・尿路の感染症▼股関節・大腿近位の骨折▼肺炎等―などが多いことが分かった。しかし「要件を厳格化」し、2次救急病院のインセンティブを削ぐこととなれば、地域の救急医療提供体制が脆弱化してしまう点も踏まえた検討が必要である―。

8月27日に開催された診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」(入院医療分科会)で、こういった議論が行われました。

8月27日に開催された「令和3年度 第6回 診療報酬調査専門組織 入院医療等の調査・評価分科会」

救急医療管理加算、患者の状態記載で「バラつき」や「不適切算定」が改善傾向

2022年度の次期診療報酬改定に向けた議論が急ピッチで進んでいます。これまでに、次のような議論が行われています。

◆入院医療の総論に関する記事はこちら
◆急性期入院医療に関する記事はこちらこちら
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◆入退院支援の促進に関する記事はこちら
◆短期滞在手術等基本料に関する記事はこちら
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◆新型コロナウイルス感染症を含めた感染症対策に関する記事はこちら
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◆調剤に関する記事はこちら
◆後発医薬品使用促進・薬剤使用適正化、不妊治療技術に関する記事はこちら



8月27日の入院医療分科会では、▼重症度、医療・看護必要度▼リハビリテーション実績指数やFIM▼医療区分・ADL区分▼DPCの外れ値病院▼特定集中治療室管理料など▼救急医療管理加算▼医療資源の乏しい地域における特例―など多岐にわたるテーマを議題としました。本稿では、このうち【救急医療管理加算】に焦点を合わせ、他の項目は別稿で報じることとします。



【救急医療管理加算】は、重篤な患者が救急搬送された場合に「入院初期には、濃厚な検査や治療等が必要になる」(診断を下すだけでも相当数の検査が必要となる)点を踏まえた入院基本料加算で、一般病棟などで算定可能です(救命救急入院料などでは、そうした点を加味した点数設定がなされており算定できない)。

次のように明示された重篤な患者を受け入れた場合の加算1(950点)と、加算1に準ずる状態および「その他の重篤な状態」の患者を受け入れた場合の加算2(350点)とが設定されています。
(ア)吐血、喀血又は重篤な脱水で全身状態不良の状態
(イ)意識障害又は昏睡
(ウ)呼吸不全又は心不全で重篤な状態
(エ)急性薬物中毒
(オ)ショック
(カ)重篤な代謝障害(肝不全、腎不全、重症糖尿病等)
(キ)広範囲熱傷
(ク)外傷、破傷風等で重篤な状態
(ケ)緊急手術、緊急カテーテル治療・検査又はt-PA療法を必要とする状態
(コ)その他重症な状態(加算2のみ)

救急医療管理加算の概要(中医協総会(1)3 210825)



ただし、従前から「アからケの各状態について、病院間・審査支払機関間で大きなバラつきがある」「『その他重症な状態』の具体像が見えない」(どういった患者で加算が算定されているのか分からない)という点が問題視されてきました。一部には「重篤ではない状態の患者を受け入れた場合でも加算を算定しているのではないか」と指摘されています。

そこで「各状態について具体的な基準値を設けてはどうか」という議論が行われましたが、「実態が見えない中で基準値を設けることは危険である。厳しすぎる基準を設ければ、必要な緊急入院が受け入れられなくなる事態も生じうる」ことから、2020年度の前回診療報酬改定では、まず「実態を可視化する」取り組みが行われました。具体的には、次の点についてレセプトへの記載を義務付けています(関連記事はこちらこちら)。
(1)アからケのうち該当する状態(加算2では、アからケのうち準ずる状態、またコの状態のうち該当するもの)
(2)イ、ウ、オ、カ、キを選択する場合は、それぞれの入院時の状態に係る指標
(3)入院後3日以内に実施した検査、画像診断、処置又は手術のうち主要なもの―を

2020改定で、救急医療管理加算の算定に当たり、レセプトに患者状態などを記載することが義務付けられた(中医協総会(1)4 210825)



今般、イ、ウ、オ、カ、キを選択した場合の具体的な患者の状態などが明らかにされました。

例えば、イ(意識障害又は昏睡)により【救急医療管理加算1】を算定した患者について、意識レベルを測定するための指標「JCS(Japan Coma Scale)」の数値を見ると、「ゼロ点」(意識清明)である患者が10%強(2020年度改定前は15%強)おり、また一部の病院では「ゼロ点の患者が100%」であることが明らかとなりました。

JCSゼロ点(意識清明)にもかかわらず「意識障害」として救急医療管理加算1を算定するケースは、2020年度改定後に減っている(その1)(入院医療分科会(1)1 210827)

JCSゼロ点(意識清明)にもかかわらず「意識障害」として救急医療管理加算1を算定するケースは、2020年度改定後に減っている(その2)(入院医療分科会(1)2 210827)



また、ウのうち「心不全で重篤な状態」による【救急医療管理加算1】を算定した患者について、心不全患者の重症度を評価するための指標「NYHA心機能分類」を見ると、「I」(身体活動に制限のない心疾患患者)である患者が数%(2020年度改定前は5%程度)おり、またごく一部ですが、「Iに該当する患者が100%」である病院が存在することがわかりました。

NYHA分類I(身体活動の制限なし)にもかかわらず「心不全で重篤」として救急医療管理加算1を算定するケースは、2020年度改定後に減っている(その1)(入院医療分科会(1)3 210827)

NYHA分類I(身体活動の制限なし)にもかかわらず「心不全で重篤」として救急医療管理加算1を算定するケースは、2020年度改定後に減っている(その2)(入院医療分科会(1)4 210827)



「意識清明」な患者を「意識障害・昏睡」と評価したり、「身体活動に制限のない新疾患」患者を「心不全で重篤」と評価することは「不適切」と考えられ、そうした病院が依然として一部にあります。ただし、2020年度改定によって、そうした不適切な評価は「減少」していることも事実です。

この点、牧野憲一委員(旭川赤十字病院院長、日本病院会常任理事)は、「医療機関間で『重症・重篤』に関する判断のバラつき大きく、また審査におけるバラつきもある(●●の状態について、ある県の国保連は加算算定を認めるが、別の件の国保連では認めないなど)。基準を揃えることが重要であり、現在の方向性は理解できる」と評価。井原裕宣委員(社会保険診療報酬支払基金医科専門役)も「審査において、算定の可否(つまり重症・重篤の判断)に混乱があったのは事実である。2020年度改定後を見ると、十分ではないが改善傾向にあることが分かる。さらに進めていくと良くなるのではないか」と述べ、2020年度改定の効果を認めています。

ここからは、▼2020年度で「患者状態の記載」が義務化された → ▼2022年度の次期改定では「データを踏まえた基準値の設定」(他てば、意識障害であれば「JCS●●以上」などの基準値設定)を検討する―といった流れが見えてきそうですが、牧野委員は、「指標のみでなく、救急搬送・入院時の状況なども絡めて見ていく必要がある」と釘を刺しています。

救急医療管理加算2、「厳格化」すべきか、「点数を抑えて柔軟対応を認める」べきか

また、加算2のみで対象となる「コ」(その他重症な状態)の中身を見ると、▼脳梗塞▼腎臓・尿路の感染症▼股関節・大腿近位の骨折▼肺炎等―などが多く、▼酸素吸入▼高気圧酸素療法▼ドレーン―などの処置が多く行われている状況が初めて明らかになりました。

救急医療管理加算2における「その他重症な状態」の患者の内訳(入院医療分科会(1)5 210827)

救急医療管理加算2における「その他重症な状態」の患者になされている主な処置等(入院医療分科会(1)6 210827)



「本当に重症と言える患者に加算が算定されているのか」という視点で見ると「やや疑問である」と感じる向きも少ないことでしょう。今後、詳しい分析を加えていくことになります。

この点、【救急医療管理加算】の趣旨に遡れば、「加算2の要件(つまり重症・重篤の判断)を厳格化していくべき」との考え方が導かれそうです。

しかし、牧野委員は「脳梗塞患者について、本来であればSCU(脳卒中ケアユニット)での受け入れなどが望ましいが、すべての脳梗塞患者を受け入れることはできず、一般病棟で受け入れ、一定の治療を行っている状況が伺える。そうした点を【救急医療管理加算2】で評価することが重要である」と指摘。

また山本修一委員(地域医療機能推進機構理事)は、「年間の救急搬送受け入れ件数が1000件程度の2次救急病院の評価も重要であり、インセンティブを削ぐことは好ましくない。インセンティブを削ぎ、複数の2次救急病院が『救急搬送受け入れをストップする』事態となれば、それはすぐに『3000件、4000件の救急搬送受け入れがストップする』ことになってしまう」と指摘しています。

【救急医療管理加算】(とりわけ加算2)は、2次救急病院を評価する診療報酬項目となっている実態があります。上述した「重篤な救急患者を受け入れ、初期に濃厚な検査・治療を施す」という趣旨に照らせば、「加算2は本来の趣旨から外れている。『コ』(その他重症な状態)などの要件は厳格化し、真に重症・重篤な患者のみの算定に限定すべき」とも思われます。

しかし、これを推し進めれば、「重症・重篤とは言えないまでも、緊急入院が必要」な救急搬送患者の受け入れが止まってしまう可能性もあります。

昨今の診療報酬改定では、こうした救急医療現場の実態を踏まえて、▼加算1は、本来の趣旨である「重篤な患者を受け入れる」ケースを評価し、点数の引き上げを行う(2010年度改定以前は600点であったが、現在は950点)▼加算2は、「重篤・重症とは言えないかもしれないが、救急搬送が必要な患者を受け入れる2次救急の努力」を評価するが、点数は抑える(2014年度改定で400点に設定し(従前の加算(600点)から分離し、現在は350点)―という異なる進化を遂げてきたと見ることもできます。

この進化の方向に沿えば、▼加算1については、要件を明確化・厳格化するとともに、点数をさらに引き上げる▼加算2については、要件の明確化は行う(あまりに軽症な入院が必要ない患者での加算算定などはさすがに認めるべきではない)が、それほどの厳格化は行わずに、点数を抑える―という改定方針が見えてくるかもしれません。

この点、8月25日の中央社会保険医療協議会総会では、診療側の島弘志委員(日本病院会副会長)から「意識障害や緊急手術が必要など、【救急医療管理加算】の要件で例示されている患者は、救命救急入院料や特定集中治療室管理料を算定するユニットで受け入れることがほとんどだ。しかし、そこでは【救急医療管理加算】は算定できない。医療現場の実態を踏まえた要件に見直していく必要がある」との見解が示されましたが、上記の「進化の方向」と類似した考えと見ることもできるでしょう。今後の入院医療分科会や中医協論議に注目が集まります。

なお、井原委員は「(3)の『入院後3日以内に実施した検査、画像診断、処置、手術のうち主要なもの』の記載項目に、『注射』を追加することで、より診療行為の可視化が進む」と、猪口雄二委員(日本医師会副会長)は「救急搬送される患者の状態はバラエティに富んでおり、(ア)から(ケ)での振り分けが困難な場面もある。これらの妥当性も検証する必要がある」と付言しています。



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