心電図モニター管理や点滴ライン3本以上管理など「急性期入院医療の評価指標」として相応しいか―入院医療分科会(4)
2021.9.2.(木)
一般病棟用の重症度、医療・看護必要度について、項目ごとに見てみると、▼A項目の「心電図モニター管理」該当患者では、「専門的治療」の該当は4-6割弱、C項目該当割合は1―2割弱にとどまる▼使用薬剤が2種類以下であるにも関わらず、A項目の「点滴ライン3本以上管理」に該当するケースが1―2割存在する▼C項目の「骨の手術」は術後3日目から「A項目ゼロ点」となる患者が過半数となる―。
8月27日に開催された診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」(入院医療分科会)では、こういった分析結果の報告も行われました。
退院日当時にも心電図モニター管理、その患者は本当に退院させてよいのか?
Gem Medでお伝えしているとおり、2022年度の次期診療報酬改定に向けた議論が急ピッチで進んでいます。これまでに、次のような議論が行われています。
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8月27日の入院医療分科会では、▼重症度、医療・看護必要度▼リハビリテーション実績指数やFIM▼医療区分・ADL区分▼DPCの外れ値病院▼特定集中治療室管理料など▼救急医療管理加算▼医療資源の乏しい地域における特例―など多岐にわたるテーマを議題としました。本稿では、重症度、医療・看護必要度(以下、看護必要度)に焦点を合わせます(【救急医療管理加算】に関する記事はこちら、【特定集中治療室管理料】に関する記事はこちら、DPCに関する記事はこちら)。
看護必要度は、「急性期入院医療提供が相応しい患者」を抽出するための指標として活用されています。A項目(モニタリング・処置等)、B項目(患者の状態等)、C項目(手術等の医学的状況)を組み合わせて「急性期入院医療提供がなされている患者」を定義し、その受け入れ割合をもって「急性期入院医療提供を行うに相応しい病院」の基準としています(例えば急性期一般1では、評価票を用いる看護必要度Iで31%以上、DPCのEF統合ファイルを用いる看護必要度IIで29%以上、ただしコロナ感染症の影響で経過措置を延長中)。
ただし、看護必要度は、「急性期入院医療提供が相応しい患者」の側面を切り取るものであり、ズレが出てきます。例えば、例えば、A項目(モニタリング・処置等)では「患者に実施する」ことが評価されているため、「必要性が低い患者にも、当該処置を施す」ことで評価点を獲得できるケースもあります。このため、逐次「改善・改良」が図られてきているのです。
8月27日の入院医療分科会では、A項目のうち▼心電図モニターの管理▼点滴ライン同時3本以上の管理▼輸血や血液製剤の管理―の妥当性、B項目の相関関係、C項目の期間妥当性などの分析結果が報告されました(下部組織である「診療情報・指標等作業グループ」で分析を行ってきた)。
そこからは、例えば次のような状況が浮かび上がってきています。
【心電図モニターの管理】
▽退院日・退院前日に実施している患者が一定程度いる
▽「専門的治療」実施に該当する割合は4-6割弱に、さらC項目に該当する割合は1―2割弱にとどまる
【点滴ライン同時3本以上の管理】
▽使用薬剤が2種類以下であるにも関わらず、ライン3本以上管理に該当するケースが一定程度存在する(1-2割強)
▽「専門的治療」実施に該当する割合は7割強だが、C項目に該当する割合は2割強にとどまる
【輸血や血液製剤の管理】
▽輸血等の管理なし患者に比べて、医師による診察の頻度や看護師による直接看護提供の頻度が高い
【B項目の相関関係】
▽「患者の状態」(できる・できないなど)と「評価得点」(状態に介助の有無を掛け合わせる)は概ね同様の傾向だが、「移乗」は「評価得点」の方が低い
▽「口腔清潔」と「食事摂取」との間には、強い正の相関がある
【C項目の期間妥当性】
▽期間経過とともに「A項目」該当が低下していくが、とりわけ「骨の手術」については、該当前半であっても過半数が「A項目ゼロ点」となってしまう
これらの結果からは、A項目については、「心電図モニター管理」や「点滴ライン3本管理」の中には不適切な事例が一定程度含まれている可能性が浮上してきます。
例えば、「心電図モニター管理が必要な状態の患者」を退院させて良いのか?心電図モニター管理が必要なほど容体が不安定なのであれば、入院を継続するべきではないのか?という疑問が生じます。逆に「不要だが、A項目1点のために退院日であっても心電図モニターをつけているのではないか?」と考えることもできます。
また、「心電図モニター管理」該当患者は、専門的処置や手術等後に該当する割合が低くなっている点からは、「患者はそれほど重症ではなく、必要性は低いものの、A項目1点のためだけに心電図モニターをつけているのではないか?」とも思われます。
さらに、点滴ラインが3本確保されながら、投与薬剤が2種類以下、中にはゼロという患者もいるが、一体、何を点滴しているのか?という強い疑問も生じます(もちろん「薬剤の記載漏れ」の可能性もある)。
B項目に目を移すと、「移乗」で評価得点が低いことから、「移乗に介助が必要だが、介助は実施していない」患者が少ないことが分かります。また、「口腔清潔」と「食事摂取」の間に強い相関があるということは、「どちらかに該当すれば、高い確率で他方の点数も獲得できる」ことを意味し、「2重評価になっている」(自動的に高い点数を獲得できてしまう)と見ることもできます。
また、C項目のうち「骨の手術」では、術後10日間は「1点」が獲得され、自動的に「看護必要度を満たす」と評価されますが、術後3日目には53%が「A項目ゼロ点」となり、5日目には7割超が「A項目ゼロ点」となります。「10日間、C項目1点を獲得できる」とする期間設定について「長すぎるのではないか」という疑問も出てくるでしょう。
もちろん、これらの結果からダイレクトに「心電図モニターや点滴ライン3本をA項目から除外する」、「口腔清潔・食事摂取のいずれかを削除する」「骨の手術のC項目該当期間を大幅短縮する」という結論が導かれるわけではありません。
例えば、心電図モニター管理について疾患別に見てみると、呼吸器系疾患や循環器系疾患では「専門的処置」が行われている患者は3割未満にとどまり、上記のように「A項目獲得のために心電図モニターをつけているのではないか」と疑問を持たれる患者が少なくありません。しかし、消化器系疾患では、6割超で「専門的処置」が行われており、「心電図モニター管理が必要な重症患者」が相当程度いることが伺えます。
「●●の見直し(例えば心電図モニター管理の除外など)を行った場合に、抽出できなくなる重症患者はどの程度でるのか」なども含めて、さらに詳しい分析を行い、見直し方向を探っていく必要があるでしょう。
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