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充実した急性期入院医療を評価する【急性期充実体制加算】を新設、ICUでも2種類の加算を新設―中医協総会(2)

2022.1.26.(水)

Gem Medで報じているとおり、1月26日の中央社会保険医療協議会・総会には厚生労働省保険局医療課の井内努課長から「個別改定項目」(いわゆる短冊)が提示され、これに基づく議論が行われました。

1月26日の中医協総会では、短冊のうち(I)新型コロナウイルス感染症等にも対応できる効率的・効果的で質の高い医療提供体制の構築(入院医療や外来医療、在宅医療の見直し、新型コロナウイルス感染症対策など)(III)患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療の実現(オンライン診療など)―について議論を行いました。

本稿では、(I)の入院医療のうち「急性期入院医療」「高度急性期入院医療」に焦点を合わせてみます。コロナ感染症対応の経験も踏まえた「充実」が目立ち、「急性期入院医療・高度急性期入院医療提供に真摯に取り組んできた病院」にとっては朗報と言えるでしょう(「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度」の見直し内容も公益裁定で決定しており、すでに別稿で報じています)。「回復期入院医療」(地域包括ケア病棟、回復期リハビリ病棟)や「慢性期入院医療」(療養病棟、障害者施設等)、「外来医療」、「在宅医療」、「オンライン診療」などは、それぞれ別稿で報じます。

●短冊はこちら

充実した急性期病棟等を評価する【急性期充実加算】を新設

まず「急性期入院医療」については、別稿で報じた「看護必要度見直し」のほか、次のような見直しが行われます。

(1)充実した急性期入院医療を提供する急性期病棟を評価する【急性期充実体制加算】を新設する

(2)総合的かつ専門的な急性期入院医療提供体制を適切する【総合入院体制加算】について施設基準の見直しを行う

(3)一般病棟用の重症度、医療・看護必要度について「看護必要度II」の義務対象病棟を拡大する



(1)は、優れた急性期病棟を評価する「新加算」を創設するものです。次のような施設基準を満たし病院の入院患者について、一定の入院期間、新加算が入院基本料や特定入院料に上乗せされます。中医協論議では「急性期一般1の加算」をイメージした議論がなされましたが、より多くの入院患者について新加算が算定可能となりそうです。詳細は3月上旬に示される新点数表や新施設基準、解釈通知等を待つ必要がありますが、これまでの議論を踏まえれば「ICU等のユニット設置」「救急搬送患者受け入れ件数や手術件数が一定以上」「院内迅速対応システム(RRS)の導入」などが施設基準・要件に盛り込まれることになるでしょう(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

【施設基準】
▽急性期一般入院料1算定病棟を有する病院である
▽地域において「高度かつ専門的な医療」および「急性期医療」を提供するにつき十分な体制が整備されている
▽「高度かつ専門的な医療」および「急性期医療」に係る実績を十分有している
▽入院患者の病状の急変の兆候を捉えて対応する体制を確保している
▽感染対策向上加算1(感染防止対策加算を改組、別稿で詳説します)に係る施設基準を届け出ている
▽敷地内喫煙を禁止している
▽日本医療機能評価機構等が行う医療機能評価を受けている病院、またはこれに準ずる病院である



また(2)の【総合入院体制加算】については、次の2点の施設基準見直しが行われます。前者は、中医協総会で島弘志委員(日本病院会副会長)から、下部組織である入院医療等の調査・評価分科会で牧野憲一委員(旭川赤十字病院院長、日本病院会常任)から「昨今では人工心肺を用いない、より高度な手術が広まってきている。【総合入院体制加算】における実績要件のうち『人工心肺を用いた手術が年間40件以上』を見直す必要がある」旨の提言が行われたことを踏まえたものです(関連記事はこちらこちらこちら)。

▽「人工心肺を用いた手術が年間40件以上」との基準を「人工心肺を用いた手術、および人工心肺を使用しない冠動脈、大動脈バイパス移植術が年間40件以上」に改める(対象にK555-2【経カテーテル大動脈弁置換術】を加える)

▽「外来縮小体制確保」の中に「紹介受診重点医療機関」を含めるなどの見直しを行う、▼



一方、(3)は看護職員の負担軽減効果の高い看護必要度II(看護必要度の評価(A項目・C項目)についてレセプト電算処理システムコードを用いる仕組み、看護職員が評価票を用いて評価する手間が省略される)について導入義務病棟を拡大するものです。

(現行の導入義務病棟)
▼許可病床数400床以上で急性期一般1-6を届け出ている病棟

(見直し後)
▼許可病床数200床以上で急性期一般1を届け出ている病棟
▼許可病床数400床以上で急性期一般2-5を届け出ている病棟(看護必要度見直しの公益裁定により、急性期一般5・6が急性期一般5に統合されている)

もっとも看護必要度IIの導入には病院の院内システム(電子カルテやレセプトコンピュータなど)の準備などが必要となることから、「改定直前(2022年3月31日)に急性期1を届け出ていた許可病床数200-399床病院」(新たに看護必要度IIが義務化される)については一定の経過措置が設けられます(一定期間内は看護必要度評価票を用いる看護必要度Iの継続が認められる)。

専門性の高い看護師配置や専門メディエーター配置などを行うICUを新加算で評価

2022年度改定では「高度急性期入院医療の評価充実」が大きなポイントとなります。新型コロナウイルス感染症での経験を通じて、重症患者には「通常よりもさらに手厚い体制を敷いたICUでの治療・管理が必要となる」ことなどが強く認識されたことを受け、「ICU等の評価充実」が行われるものと言えます。

具体的には、次のような評価充実・見直しが行われます(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。

(1)専門性の高い看護師や臨床工学技士を手厚く配置し、医師、看護師、臨床工学技士が重症患者看護に当たり必要な知識・技術の習得とその向上を目的とした院内研修を実施するなど、重症患者対応の強化に資する体制を確保しているICU等(特定集中治療室管理料1-4、救命救急入院料2・4を算定)について【重症患者対応体制強化加算】で新たな評価を行う

(2)患者の治療に直接関わらない専任の担当者である「入院時重症患者対応メディエーター」を配置し、医療職とともに患者・家族等に対して治療方針・内容等の理解および意向表明を支援する体制を敷くICU等について【重症患者初期支援充実加算】で新たな評価を行う

(3)ICUやNICUなどのバイオクリーンルーム要件を見直し、「治療室内に、手術室と同程度の空気清浄度を有する個室および陰圧個室を設置することが望ましい」旨に改める

(4)患者の早期回復を目的とした取り組み体制が十分に整備されているICU等において、▼急性血液浄化または体外式心肺補助(ECMO)を必要とする患者▼臓器移植を行った患者―の算定日数上限を「通常の14日」から延伸する(具体的な日数は答申待ち)

(5)【早期離床・リハビリテーション加算】の算定対象に▼救命救急入院料▼ハイケアユニット入院医療管理料▼脳卒中ケアユニット入院医療管理料▼小児特定集中治療室管理料―算定ユニットを加えるとともに、関連職種に「言語聴覚士」を追加する

(6)【早期栄養介入管理加算】について、「入室後早期から経腸栄養を開始した場合」と「それ以外の場合」とで評価の切り分けを行う(現在は一律に400点)とともに、▼救命救急入院料▼ハイケアユニット入院医療管理料▼脳卒中ケアユニット入院医療管理料▼小児特定集中治療室管理料―での加算算定も可能とする

(7)ICU用の看護必要度について、▼A項目から「心電図モニター管理」を削除する▼B項目を削除する▼重症患者(看護必要度を満たす患者)の定義を「A3点以上」と見直す▼看護必要度IIを導入し、この場合の重症患者割合の基準値を別途設定する―といった見直しを行う

(8)救命救急入院料1・3において、現在に「ICU用の看護必要度」による状態評価から、「HCU用の看護必要度」による状態評価へと見直す



このうち(1)は専門性の高い看護体制などを敷き、さらに医療スタッフの知識・スキル向上に向けた院内研修を行うなどし、「より重症な患者に適切な対応を行えるICU」を経済的に高く評価するものです。

加算取得の前提となる施設基準を見ると、例えば▼集中治療を必要とする患者の看護に従事した経験を5年以上有し、集中治療を必要とする患者の看護に関する適切な研修を修了した専従の常勤看護師が1名以上配置されている▼救命救急入院料・特定集中治療室管理料を届け出ている病院で5年以上勤務した経験を有する専従の常勤臨床工学技士が1名以上配置されている▼常勤看護師のほか「集中治療を必要とする患者の看護に従事した経験を3年以上有し、一定の集中治療看護研修を受講している看護師」が2名以上配置されている▼医師、看護師、臨床工学技士により「集中治療を必要とする患者の看護に従事する看護職員」を対象とした院内研修を年1回以上実施する▼新興感染症の発生等の有事の際に、都道府県等の要請に応じて「他の医療機関等の支援を行う看護師」が2名以上確保されている▼【急性期充実体制加算】(上述)および【感染対策向上加算1】(別稿で報じます)を届け出ているを行っている▼ICU用の看護必要度において「特殊な治療法」該当患者割合が15%以上である―ことなどが目立ちます。



また(2)は「患者の意思決定支援」(例えば延命治療を継続するか、臓器移植に承諾するかなど)をより円滑かつ適切に行うための専門研修を受けている「入院時重症患者対応メディエーター」の配置と業務を診療報酬で評価するものです。▼【患者サポート体制加算】を届け出ている▼院内に専任の「入院時重症患者対応メディエーター」を配置している▼患者・家族等に対する支援に係る取り組みの評価等を行うカンファレンスを月1回程度開催している―などの施設基準を満たす医療機関において、次のユニットで加算算定が可能となります。
▼救命救急入院料
▼特定集中治療室管理料
▼ハイケアユニット入院医療管理料
▼脳卒中ケアユニット入院医療管理料
▼小児特定集中治療室管理料
▼新生児特定集中治療室管理料
▼総合周産期特定集中治療室管理料
▼新生児治療回復室入院医療管理料



また(5)の【早期離床・リハビリテーション加算】はICU等において多職種による早期の離床・リハビリテーションの取り組みが「早期退室・早期退院」につながることから2018年度の診療報酬改定で、(6)の【早期栄養介入管理加算】はICU等で早期に経腸栄養と宇を開始することが「早期退室・早期退院」につながることから2020年度の診療報酬改定で評価が新設されたものです。これらの取り組みが「早期退室・早期退院につながる」ことが一定のエビデンスを持って中医協で確認されたことを受け、算定対象ユニットの拡大などが行われます。▼加算の新設→▼効果の確認→▼評価の充実―という良い流れになっていることが確認され、言わば「模範的な加算の成長」と言えることができそうです。

ICU用の看護必要度を見直し、看護必要度IIの導入で看護スタッフの負担軽減狙う

一方、(7)(8)の看護必要度については、すでに中医協で方向が確認された内容が明確化されたものです。

A項目の「心電図モニター管理」については、ほとんどのユニット入室患者が該当しているために「評価の必要性が低い」として削除されます。

またICU等で「重症患者、看護必要度を満たす患者」と定義される「A4点・B3点」の患者像を詳しく見ると、「A4点」に該当する患者のほとんどが「B3点」を獲得できており、「B項目を評価する必要性が低い」ことから、やはり削除が行われます。

この2つの見直しを踏まえて「重症患者、看護必要度を満たす患者」の定義が「A3点以上」に見直される見込みです。

その際「A項目のみであれば、看護必要度評価を用いた評価を行う必要性は低く、レセプト電算処理システムコードを用いた看護必要度IIを導入することで、ICU看護師の負担を軽減することが可能となる」と考えられ、セットで看護必要度IIの導入が決まりました。ただし、評価票を用いる看護必要度Iの場合と、看護必要度IIの場合とで、重症患者割合(A3点を満たす患者の割合)に若干の差異が出ることから「看護必要度II用の重症患者割合の基準値」を別に設定することになります。

この点、看護必要度IIを導入すれば、重症患者対応で極めて多忙であるICU等において、看護師を「看護必要度の評価業務」から完全に開放することができます。すべての医療従事者において「働き方改革」が求められる中、ICU等における看護必要度の導入は極めて重要なテーマと考えられます。



なおGem Medでは改定セミナー動画も準備しております。是非、あわせてご活用ください。



【これまでの2022年度改定関連記事】
◆議論の整理(改定項目一覧)に関する記事はこちら
◆入院医療の全体に関する記事はこちら(入院医療分科会の最終とりまとめ)こちら(入院医療分科会の中間とりまとめを受けた中医協論議)こちら(入院医療分科会の中間とりまとめ)こちら(入院総論)
◆急性期入院医療に関する記事はこちら(看護必要度8)こちら(看護必要度7)こちら(看護必要度6)こちら(新指標4)こちら(新指標3、重症患者対応)こちら(看護必要度5)こちら(看護必要度4)こちら(看護必要度3)こちら(新入院指標2)こちら(看護必要度2)こちら(看護必要度1)こちら(新入院指標1)
◆DPCに関する記事はこちらこちらこちら
◆ICU等に関する記事はこちらこちらこちらこちらこちら
◆地域包括ケア病棟に関する記事はこちらこちらこちらこちら
◆回復期リハビリテーション病棟に関する記事はこちらこちらこちらこちら
◆慢性期入院医療に関する記事はこちらこちらこちらこちら
◆入退院支援の促進などに関する記事はこちらこちら
◆救急医療管理加算に関する記事はこちらこちらこちら
◆短期滞在手術等基本料に関する記事はこちらこちら
◆外来医療に関する記事はこちらこちらこちらこちら
◆在宅医療・訪問看護に関する記事はこちら(訪問看護)こちら(小児在宅等)こちら(訪問看護)こちらこちら
◆オンライン診療に関する記事はこちら
◆新型コロナウイルス感染症を含めた感染症対策に関する記事はこちらこちら
◆医療従事者の働き方改革サポートに関する記事はこちらこちら
◆がん対策サポートに関する記事はこちらこちら
◆難病・アレルギー疾患対策サポートに関する記事はこちら
◆認知症を含めた精神医療に関する記事はこちらこちら
◆リハビリに関する記事はこちら
◆小児医療・周産期医療に関する記事はこちら
◆医療安全対策に関する記事はこちら
◆透析医療に関する記事はこちら
◆個別疾患管理等に関する記事はこちらこちら
◆新規医療技術に関する記事はこちら
◆データ提出等に関する記事はこちらこちら
◆調剤に関する記事はこちらこちらこちら
◆後発医薬品使用促進・薬剤使用適正化、不妊治療技術に関する記事はこちらこちらこちらこちら
◆医療経済実態調査(第23回調査)結果に関する記事はこちら
◆消費税対応の是非に関する記事はこちら
◆薬価・材料価格調査に関する記事はこちら
◆改定率に関する記事はこちら
◆基本方針策定論議に関する記事はこちら(医療部会5)こちら(医療保険部会5)こちら(医療保険部会4)こちら(医療部会4)こちら(医療部会3)こちら(医療保険部会3)こちら(医療部会2)こちら(医療保険部会2)こちら(医療部会1)こちら(医療保険部会1)
●薬価制度改革に関する記事はこちらこちらこちらこちらこちらこちらこちらこちら
●保険医療材料制度改革に関する記事はこちらこちらこちらこちらこちらこちらこちら
●費用対効果評価制度改革に関する記事はこちらこちらこちらこちらこちらこちらこちら
●公聴会に関する記事はこちら



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