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心電図モニター等を除外して試算し、中医協で「看護必要度から除外すべきか否か」決すべき―入院医療分科会(2)

2021.10.4.(月)

一般病棟用の重症度、医療・看護必要度では、例えば「心電図モニター管理」や「点滴ライン同時3本管理」などについて、「急性期入院医療の評価指標として相応しいか」を分析しているが、これ以上のデータ分析をしても検討が前に進まないと思われる―。

そこで、中央社会医療協議会において、例えば「心電図モニター管理を看護必要度のA項目から除外して、重症患者割合を試算する」などし、「看護必要度から除外すべきか、このまま継続すべき」を決する必要があるのではないか―。

10月1日に開催された診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」(入院医療分科会)では、こういった議論も行われています。

10月1日に開催された「令和3年度 第8回 入院医療等の調査・評価分科会」

衣服着脱と口腔清潔(B項目)の相関関係、骨の手術(C項目)の該当日数なども検討を

10月1日の入院医療分科会では、▼委員意見を踏まえた、これまでの議論(2020年度調査のデータに基づく)の深掘り▼2021年度調査結果速報▼作業グループ(入院医療分科会の下部組織、看護必要度などの入院医療評価指標の見直しや、DPC制度改善などを非公開で検討)の最終報告―を主な議題としています。本稿では、注目される「一般病棟用の重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)に焦点を合わせます。

【これまでの2022年度改定に向けた記事】
◆入院医療の総論に関する記事はこちら(入院医療分科会の中間とりまとめを受けた中医協論議)こちら(入院医療分科会の中間とりまとめ)こちら(入院総論)
◆急性期入院医療に関する記事はこちら(新入院指標2)こちら(看護必要度2)こちら(看護必要度1)こちら(新入院指標1)
◆DPCに関する記事はこちら
◆ICU等に関する記事はこちら
◆地域包括ケア病棟に関する記事はこちら
◆回復期リハビリテーション病棟に関する記事はこちらこちら
◆慢性期入院医療に関する記事はこちらこちら
◆入退院支援の促進に関する記事はこちら
◆救急医療管理加算に関する記事はこちら
◆短期滞在手術等基本料に関する記事はこちら
◆外来医療に関する記事はこちら
◆在宅医療・訪問看護に関する記事はこちら
◆新型コロナウイルス感染症を含めた感染症対策に関する記事はこちら
◆医療従事者の働き方改革サポートに関する記事はこちら
◆調剤に関する記事はこちら
◆後発医薬品使用促進・薬剤使用適正化、不妊治療技術に関する記事はこちら



看護必要度は「急性期入院医療が必要な患者」を抽出する指標ですが、どうしても「看護必要度で抽出される患者」と「急性期入院医療が真に必要な患者」との間には、ズレが生じます。このため診療報酬改定の都度に「各項目が、『急性期入院医療が必要な患者』の抽出に相応しいか」を常にチェックし、必要な見直しが行われているのです。2022年度改定に向けては、入院医療分科会において、例えば▼心電図モニター管理(A項目)の妥当性▼点滴ライン同時3本以上の管理(A項目)の妥当性▼衣服着脱・口腔清潔・食事摂取(いずれもB項目)の相関関係▼骨の手術(C項目)の日数―などに着目した分析・検討が進められてきました(関連記事はこちら)。

心電図モニター管理に関しては、例えば▼「専門的治療」の該当は4-6割弱、C項目該当割合は1―2割弱にとどまる▼退院日やその前日にも心電図モニター管理を行っている患者が1-2割いる―ことが問題視されました。後者では、「心電図モニター管理が必要なほど重篤な患者を退院させてよいのか?それとも、退院可能なほど回復した患者に、心電図モニターを装着してA項目1点を獲得しようとしているのか?」といった疑問が生じるのです。

この点、厚労省がさらに詳しくデータ分析を行ったところ、例えば「退院前日・退院日ともに心電図モニターを装着する例が多く、退院日にのみ装着する割合は小さい」「自宅退院患者数が多い病院では、退院日・退院前日の心電図モニター装着割合が多いように見える」ことなどが明らかになりました。

自宅退院数と退院前日の心電図モニター装着割合との関係(看護必要度I)(入院医療分科会(2)1 211001)

自宅退院数と退院前日の心電図モニター装着割合との関係(看護必要度II)(入院医療分科会(2)2 211001)



後者からは「自宅退院可能な患者は、医療の必要度が相対的に小さい(医療の必要性が高ければ回復期病棟などへの転院が多くなると考えられる)。そうした患者に心電図モニター装着割合が高いことは、やはり問題なのではないか」といった考えが生じてきます。

この点、入院医療分科会の下部組織である作業グループでは、医学的必要性から心電図モニター装着がされているケースと、医学的必要性以外の理由で装着されているケースがあると考えられるが、「こうした背景を『心電図モニターの管理に該当している』という結果のみから分析しても、議論が深まらない」と判断。そこで、▼看護必要度の他項目該当割合との掛け合わせ結果▼看護必要度から「心電図モニター管理」を除外した場合の影響―などを見て、心電図モニター管理が急性期入院医療の評価指標として相応しいかどうかを検討すべきとの考えが示されています。

端的に、心電図モニター管理をA項目から除外して重症患者割合などを試算し、その影響を見て「心電図モニター管理を、このままA項目に残すか、除外するか」を中医協などで決すべきとの提案です。ここから先の議論は、今後、中医協に場を移すことになると言えますが、作業グループや入院医療分科会では、心電図モニター管理の妥当性に疑問を持つ声が少なくなく、また「心電図モニター管理のために、病棟看護師の負担が増えているだけではないか」との声も出ている点に留意が必要でしょう。



また、他の項目については、これまでに次のような問題点・改善点が指摘されています(関連記事はこちら)。

▽使用薬剤が2種類以下であるにも関わらず、「点滴ライン3本以上管理」に該当するケースが1―2割存在する(記載漏れなども考えられるが・・・)

▽C項目の「骨の手術」は術後3日目から「A項目ゼロ点」となる患者が過半数となる(現在は11日間「C項目1点」を獲得できるが、長すぎる可能性がある)

▽B項目の衣服着脱・口腔清潔・食事摂取(とりわけ衣服着脱と口腔清潔)には強い相関関係がある(1項目に該当すれば、自動的に他項目にも該当してしまい、B項目について「3点以上」という基準を設けた意味が失われてしまいかねない)

今後、中医協で「こうした問題点にどう対処し、改善していくべきか」を検討していくことになりますが、中野惠委員(健康保険組合連合会参与)は「心電図モニター管理と同様に、点滴ライン同時3本管理についても急性期入院医療の評価指標として相応しいかをそろそろ考える時期に来ている」「B項目の相関関係を考慮すれば、項目の整理を行うべき(例えば衣服着脱と口腔清潔は1項目に整理するなど)」「骨の手術はC項目該当日数の適正性を考慮していくべき」と具体的な提案を行っています。

なお、DPCのEF統合ファイルを活用する看護必要度II導入割合が、急性期一般1では▼2020年度改定前には19.3%▼2020年度改定後の2020年11月には58.4%▼2021年6月には67.6%―に増加している状況も報告されました。看護スタッフの負担軽減に大きな効果があることから、2020年度改定でも「看護必要度IIの推進」に向けた方策(例えば、看護必要度II導入義務を現在「許可病床数400床以上」病院から広げていくなど)が練られることになりそうです。

2021年6月時点の看護必要度II導入割合(入院医療分科会(2)3 211001)

2020年度改定後、看護必要度II導入病院が大幅に増加した(入院医療分科会(1)1 210616)

2020年度改定前には、看護必要度II導入病院は、急性期一般1でも2割程度にとどまっていた(入院医療分科会(1)2 210616)



急性期入院医療の新指標、看護必要度の項目、重症患者割合、看護必要度IIの推進など、急性期入院医療改革に向けた議論の素材がかなり明確になってきました。中医協でこうした素材をどう調理していくのか(すべての素材を扱うのか?一部にとどめるのか?)、今後の議論に注目が集まります。



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