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「回復期リハ要する状態」に心臓手術後など加え、希望する回リハ病棟での心リハ実施を正面から認めてはどうか―入院医療分科会(7)

2021.10.8.(金)

心臓疾患患者が増える中で、心大血管疾患リハビリテーションの推進に期待が集まっている。「回復期リハビリテーションを要する状態」の中に「心臓手術後の状態」などを加えることで、希望する回復期リハビリ病棟では、心大血管疾患リハビリが受けられるように、正面から認めることはできないか―。

また、10年、20年の長きにわたり、いわば入門編である回復期リハビリテーション病棟入院料5・6にとどまっているところがある。リハビリの効果・質が低く、回復期リハビリテーション病棟入院料1―4の基準を満たさない可能性が考えられ、回復期リハビリテーション病棟入院料5・6の在り方などを検討する必要があるのではないか―。

10月1日に開催された診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」(入院医療分科会)では、こういった議論も行われています。

10月1日に開催された「令和3年度 第8回 入院医療等の調査・評価分科会」

post acute患者は、sub acute患者に比べて状態が安定し、医療資源投入量も少ない

Gem Medでお伝えしているとおり、2022年度の次期診療報酬改定論議が進んでいます。10月1日の入院医療分科会では、膨大なデータをもとに入院医療改革論議を深めており、本稿では「回復期リハビリテーション病棟」に焦点を合わせます。

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回復期リハビリ病棟に関しては、より質が高く、効果のあるリハビリ提供を行うことを目指した報酬改定が進められてきており、2022年度の次期改定に向けては、次ような論点が浮上してきています(関連記事はこちらこちら)。

(A)リハビリテーション実績指数をどう改善していくか(とりわけ入棟時のFIM測定の適正性をいかに確保すべきか)
(B)心大血管疾患リハビリをどう推進していくか
(C)リハビリ効果と関係の深い栄養介入をどう進めていくか



10月1日の入院医療分科会では、このうち(B)に議論が集中しました。

田宮菜奈子委員(筑波大学医学医療系教授)は「心臓疾患患者が増える中で、心大血管疾患リハビリの実施が進むことが求められる。とりわけ高齢者では、心臓・大血管疾患に対する急性期治療を終えた後、外来で心大血管疾患リハビリを受けられるケースは少ない(2割程度)」とし、例えば「回復期リハビリ病棟で、心大血管疾患等リハビリを実行可能である旨を明記してはどうか」と提案しています。

心疾患患者数、心大血管疾患リハ実施数は年々増加している(入院医療分科会(7)1 211001)

心臓手術後に心臓リハを行い、そこから外来の心臓リハにまで到達した高齢者は2割強にとどまる(入院医療分科会(7)3 211001)

回復期リハビリ病棟での心臓リハに期待を寄せる声も小さくない(入院医療分科会(7)2 211001)



回復期リハビリ病棟には「回復期リハビリを要する状態の患者割合が8割以上入棟していること」という算定要件があります。「回復期リハビリを要する状態の患者」とは、次の5つの状態・期間に限定されています。
(1)脳血管疾患、脊髄損傷、頭部外傷、くも膜下出血のシャント手術後、脳腫瘍、脳炎、急性脳症、脊髄炎、多発神経炎、多発性硬化症、腕神経叢損傷等の発症後もしくは手術後の状態または義肢装着訓練を要する状態(算定開始日から起算して150日以内、ただし高次脳機能障害を伴った重症脳血管障害、重度の頸髄損傷・頭部外傷を含む多部位外傷の場合は同じく180日以内)
(2)大腿骨、骨盤、脊椎、股関節もしくは膝関節の骨折または2肢以上の多発骨折の発症後または手術後の状態(算定開始日から起算して90日以内)
(3)外科手術後または肺炎等の治療時の安静により廃用症候群を有しており、手術後または発症後の状態(算定開始日から起算して90日以内)
(4)大腿骨、骨盤、脊椎、股関節または膝関節の神経、筋または靱帯損傷後の状態(算定開始日から起算して60日以内)
(5)股関節または膝関節の置換術後の状態(算定開始日から起算して90日以内)

回復期リハビリを要する状態と、要件ごとの算定上限日数(入院医療分科会(2)4 210708)



田宮委員は、例えば、ここに(6)として「心臓、大血管手術後の状態」などを加えることで、「心臓大血管疾患リハビリが必要な患者への、回復期リハビリ病棟での取り組みが進んでいく」ことを期待しています。



しかし、入院医療分科会では、例えば▼心臓手術後の患者状態は千差万別で、高齢者ではそこにフレイル(虚弱)も関係してくる。回復期リハビリ病棟に循環器・心臓外科の専門医等が配置されていればよいが、そうしたケースは少なく、困難ではないか(井川誠一郎委員:日本慢性期医療協会常任理事)▼回復期リハビリ病棟サイドと、循環器・心臓外科の専門医サイドとの間で、心臓リハビリ実施の条件などをすり合わせをしてから検討すべきではないか(山本修一委員:地域医療機能推進機構理事)▼心臓リハビリは急性期治療の一環という位置付けではないか。循環器外科を持つ大病院に併設する形から始め、いきなり回復期リハビリ病棟で実施するのは難しいのではないか(猪口雄二委員:全日本病院協会会長)―などの慎重意見が相次ぎました。

もっとも、田宮委員の提案を踏まえると、議論が嚙み合っていないことがわかります。田宮委員は「すべての回復期リハビリ病棟で、心臓手術後患者を受け入れ、心大血管疾患リハビリを実施すべき」と提案しているわけではありません。この提案であれば上記委員の慎重意見にも得心が行きます。

しかし田宮委員の提案は、上述のとおり「回復期リハビリを要する状態」の1つに「心臓手術後の患者」などを位置づけることで、「心臓リハビリを実施したい、その体制も整っている」と考える回復期リハビリ病棟が、「心臓リハビリが必要な患者」を正面から受け入れ、心大血管疾患リハビリを実施できるようにすべき、というものです。

現在、心臓リハビリが必要な患者が回復期リハビリ病棟に入棟する場合には、上記(3)の「廃用症候群の患者」の中に含めて受け入れることになると思われますが、「心臓リハビリ患者を受け入れたい」という回復期リハビリ病棟の、「心臓リハビリを回復期リハビリ病棟で受けたい」という患者の思いに正面から応えるべきであるというのが、田宮委員の提案の根底にあると思われます。

つまり「自院では心臓リハビリを行える体制にない」という回復期リハビリ病棟は、これまでどおり運動器や廃用症候群のリハビリが必要な患者のみを受け入れればよく、「自院では心臓リハビリが必要な患者を受け入れます」と考える回復期リハビリ病棟のみが、心大血管疾患リハビリが必要な患者を受け入れれば良いのです。

今後の入院医療分科会や中医協において、前提を整理しなおし、「前向きに議論が進む」ことに期待が集まります。

なお、多くの委員が指摘するように回復期リハビリ病棟において循環器・心臓外科の配置はごくごく少数にとどまっており、こうした状態の中では「回復期リハビリ病棟における心臓リハビリの推進」はなかなか広がっていかないでしょう。この点、田宮委員は「心臓リハビリテーション指導士(日本心臓リハビリテーション学会の認定資格で、医師、看護師、理学療法士などが所定の講習を受けることなどで資格取得が可能となる)などの配置で可とすることを検討してはどうか」とも提案しています。

回復期リハ5・6に10年超もとどまる病棟がある、これは適切なのか

上記以外に「回復期リハビリ病棟5・6を長期間届け出ている病棟」の在り方も議題に上がっています。

初めて回復期リハビリ病棟を届け出る場合には、まず回復期リハビリ病棟入院料5・6を届け出て(いわば入門編)、そこでリハビリテーション実績指数などの実績を上げ、それを踏まえて回復期リハビリ病棟入院料1―4の届け出を行うことになります。

しかし、回復期リハビリ病棟の中には実績を上げられず(例えばリハビリの効果が低いなど)、回復期リハビリ病棟入院料5・6に長期間(10年以上、中いは20年というところも)とどまっているところが散見されます。これは「質の高いリハビリを目指す」という回復期リハビリ病棟の趣旨に照らして「問題がある」と考えるべきかもしれません。

回復期リハ5・6に10年、20年の長期間とどまっている病棟がある(入院医療分科会(7)4 211001)



このため、入院医療の評価指標の在り方を検討する作業グループ(入院医療分科会の下部組織、非公開)では「入院料5・6の在り方、対応を検討するべき」との指摘が出ています。例えば、「回復期リハビリ病棟入院料5・6には、滞在期間の上限を設定する」「一定期間経過後に回復期リハビリ病棟5・6にとどまる場合には点数引き下げを行う」などの厳しい対応が検討される可能性もでてきそうです。



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