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外来診療 経営改善のポイント 能登半島地震 災害でも医療は止めない!けいじゅヘルスケアシステム

平時に余裕のない医療提供体制では有事に対応しきれない、2022年度診療報酬改定での対応検討を―社保審・医療部会(1)

2021.10.5.(火)

2022年度の次期診療報酬改定の基本方針では「新型コロナウイルス感染症対策」を盛り込む方向で議論が進んでいるが、「平時に余裕がないため、有事にはとても対応が仕切れない」という現状がある、次期診療報酬改定では「平時に幾分の余裕がある体制」を組めるように考えていくべきではないか―。

10月4日に開催された社会保障審議会・医療部会で、こういった議論が行われました。医療部会では、別に「国家戦略特区のみで認められている『最先端医療提供を行う場合のオーバーベッド』を、全国で認めていく」方向も議論されており、別稿で報じます。

ICTの推進、診療報酬でどこまで見ていくべきか

診療報酬改定に向けた論議は、▼改定の基本方針を社会保障審議会の医療保険部会と医療部会で決定する▼改定率(つまり財源配分の大枠)を内閣が予算編成過程で決める▼基本方針と改定率を受け、中央社会保険医療協議会で改定内容を詰める―という役割分担が行われており、中医協では、すでに改定内容に関する論議が始まっています。

【これまでの2022年度改定関連記事】
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医療保険部会・医療部会でも今夏から基本方針策定論議が始まっており(関連記事はこちらこちらこちら)、10月4日の医療部会では厚生労働省から▼基本認識▼基本的視点と具体的方向性―に関する素案が提示されました(医療保険部会と同様の資料提示)。

2022年度診療報酬改定の基本方針策定に向けて1(医療保険部会(2)1 210922)

2022年度診療報酬改定の基本方針策定に向けて2(医療保険部会(2)2 210922)



医療部会でも、こうした方向に異論は出ておらず、委員からは「こういった点を明示し、中医協にメッセージを届けるべき」という前向きな意見が多数出されました。

まず新型コロナウイルス感染症対策に関しては、「平時に余裕を持っていなければ、有事(感染症の蔓延や災害など)にはとても対応できない」という意見が極めて多数の委員から示された点が注目されます。相澤孝夫委員(日本病院会会長)は「診療報酬などの締め付けにより、病院経営は平時でもギリギリの状況であり、とてもではないが緊急時に対応しきれない。人材確保や設備整備などは、緊急時になってからの対応では、どうしても遅れが出てしまい、平時からの準備が必要不可欠である。また地域連携、とりわけ『病院-病院』間の連携が最も重要であることがコロナ感染症対策の中で再確認された(コロナ回復患者の受け入れが進まず、急性期病床が目詰まりを起こしたことが大きな課題となった)。そうした点についての基本方向を明示すべきである」と強調。加納繁照委員(日本医療法人協会会長)や木戸 道子委員(日本赤十字社医療センター第1産婦人科部長)、井伊久美子委員(日本看護協会副会長、香川県立保健医療大学学長)らも、同旨の見解を示しています。

ほかに、▼コロナ感染症対策から「機能分化・連携の強化」などに発展させるべき(河本滋史委員:健康保険組合連合会常務理事)▼医療資源の散在を是正すべく、医療機関の集約化などの方向性も明示すべき(井上隆委員:日本経済団体連合会常務理事)▼コロナ感染症対策の中心となった公立病院への支援を強化すべき(平井伸治委員:全国知事会・鳥取県知事)▼広域搬送等を可能とすべく、全国の病院における入院患者受け入れ状況を可視化・共有できるようにすべき(松原由美委員:早稲田大学人間科学学術院准教授)―などの意見が出ています。

ただし、「診療報酬で対応すべきか?」というコメントも含まれており、内容の精査が必要でしょう。関連して島崎謙治委員(国際医療福祉大学大学院教授)は「中長期的に対応すべき部分と、2022年度の次期診療報酬改定で対応すべき部分とを、一定程度切り分けて考えていく必要がある」とコメントしています。

たとえば、井上委員・河本委員が指摘するとおり、コロナ感染症に対応する中で「我が国では、中小規模のクリニック等が乱立し、医療資源が散在してしまっている」ことが明確となりました。医療資源(医療従事者や設備)の散在には、▼医療の質向上を阻んでしまう(Gem Medを運営するグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンと米国メイヨークリニックとの共同研究)▼医療従事者の働き方改革を阻害してしまう▼医師偏在対策を遅らせてしまう―などの問題点があります。

このため、医療機関の再編・統合も視野に入れる「地域医療構想の実現」と、「コロナ感染症対策」とは、同じ方向にあると言えます。ただし「短期的に対応すべき部分」と「中長期の検討テーマになる部分」、さらに「診療報酬で対応すべき部分」と「別の仕組みで対応すべき部分」などが混在しており、「2022年度改定で何を行うべきか」を明確にする必要があるでしょう。

関連して小熊豊委員(全国自治体病院協議会会長)は「地域差」を十分に考慮すべきと強調しています。



また、改定の「視点」「方向例」では、3つ目に「医療機能の分化・強化、連携と地域包括システムの推進に関する視点」、4つ目に「患者・国民にとって身近であって、安心・安全で質の高い医療を実現する視点」とが示されていますが、神野正博委員(全日本病院協会副会長)や相澤委員らから「両者には重複も少なくない。統合して整理してはどうか」との指摘が出ています。



さらにICT推進に向けて、▼医療機関のシステム(電子カルテなど)の導入・メンテナンス経費を診療報酬でも支援すべき(加納委員)▼例えば救急搬送先を探す際に、救急隊が電話で受け入れ確認をしているが非効率すぎる。コストと時間をかけてもICT化を推進すべき(木戸委員)▼ICT関連としてオンライン診療の推進を報酬面でも進めるべき(井上委員)▼ICT化を進めるためには医療情報の標準化が大前提となる、その方向性を明示し、医療機関間でのデータ共有を推進すべきである(相澤委員)▼初診からのオンライン診療が解禁されるが、診療報酬の中で「安全」確保を担保してほしい―などの意見が出ています。ここでも診療報酬で対応すべき部分」と「別の仕組みで対応すべき部分」などが混在しており、精査をしながら、基本方針案を練っていくことになります。



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