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GemMed塾 新制度シミュレーションリリース

DPC外れ値病院、当面は「退出ルール」設定でなく、「診断群分類を分ける」等の対応検討しては―入院医療分科会(3)

2021.10.5.(火)

DPC制度では「外れ値病院」(医療資源投入量が極端に少ない、在院日数が極端に短いなど)が問題となっているが、これらに共通した特性・傾向を見出すことは難しく、「退出ルール」を設けることも現時点では難しく、将来の継続検討課題としてはどうか―。

ただし、外れ値病院と他の病院とでは、診断群分類を分けることなどを検討していく必要がある。「医療資源投入量」「疾患」「DPC病棟への入院元」なども勘案した診断群分類を考えてはどうか―。

また新型コロナウイルス感染症対策について、機能評価係数IIの地域医療係数・指数における「体制評価指数」の中で評価を行ってはどうか―。

10月1日に開催された診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」(入院医療分科会)では、こういった議論も行われました。

10月1日に開催された「令和3年度 第8回 入院医療等の調査・評価分科会」

外れ値病院のDPC退出ルール、継続検討課題だが、現時点での策定は困難か

10月1日の入院医療分科会では、▼委員意見を踏まえた、これまでの議論(2020年度調査のデータに基づく)の深掘り▼2021年度調査結果速報▼作業グループ(入院医療分科会の下部組織、看護必要度などの入院医療評価指標の見直しや、DPC制度改善などを非公開で検討)の最終報告―を主な議題としています。本稿では、作業グループ最終報告の中から「DPC制度改善」を取り上げて見てみます。

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お伝えしているとおり、DPCについて「医療資源投入量が著しく少ない病院」(いわゆる外れ値病院)などの存在が、2018年度診療報酬改定論議から問題視されています(関連記事はこちらこちら)。

DPC制度では、「全DPC病院の診療実績データ」(平均値)をもとに点数や係数を設定するので、例えば「不適切に医療資源投入量を著しく少なく抑えている」病院があれば平均値が下がり、DPC点数も低くなってしまいます。すると、「不適切に医療資源投入量を著しく少なく抑えている」病院は「DPC点数と資源投入量の差」が大きなために利益を得られますが、重症患者を多く受け入れ医療資源投入量の大きな病院の中には「収益が下がり、投入したコストを回収できない」ところも出てきてしまいます。このように外れ値病院の存在は、DPC制度全体を歪めてしまう恐れもあります。

そこで2022年度の次期診療報酬改定に向けて、標準化が進んだ内科系疾患(急性心筋梗塞、脳梗塞、狭心症、心不全)治療においても▼医療資源投入量が著しく少ない▼在院日数が著しく短い―病院をピックアップし、詳細な分析を行いました。

そこからは、▼「総病床数に占めるDPC病床(急性期病床)の割合が小さい」病院が比較的多い▼緊急患者受け入れを避けている▼回復期リハビリ病棟への待機場所としてDPC病棟を活用している―などの状況が見えてきましたが、「外れ値病院の共通した明確な特性・傾向」を見出すことはできませんでした。また、ほかにも標準的な治療から逸脱した病院(たとえば、脳梗塞治療においてエダラボンをごく短期間しか使用しない病院、急性期心筋梗塞治療で「その他手術」割合が著しく高い病院)についても分析が行われましたが、そうした病院に共通した明確な特性・傾向を見出すことはできませんでした。

作業グループの長を務める山本修一委員(地域医療機能推進機構理事)は「疾患によって病院の機能が異なることが再確認された。同じ病院でも、ある疾患は標準から外れ(つまりこの疾患では急性期入院医療は提供していない)、別の疾患では標準杯以内に収まっている(つまりこの疾患では急性期入院医療を提供している)ケースが多く、一概に『外れ値病院ゆえDPCから退出すべき』という議論はできないようだ」とコメント。

また作業グループの中では「外れ値病院が、DPC制度に及ぼす影響はそれほど大きくない」という状況も見えてきたことが牧野憲一委員(日本病院会常任理事、旭川赤十字病院院長)から報告されています。

ここからは、「外れ値病院をDPC病院から強制退出させるルール」設定は、現時点では困難で、必要性もそれほど高くないことが伺えそうです(外れ値病院に共通する特性が見いだせず、退出基準を設けることが困難である。また、外れ値病院の影響もそれほど大きくない)。もっとも「DPC病院として不適切である」と指摘する声も少なくなく、「退出ルールの検討は、今後も継続した課題」という位置づけになりそうです。

医療資源投入量などを勘案し、外れ値病院と標準グループとで診断群分類を分けてはどうか

ただし、現時点で退出ルールは設けないとしても、外れ値病院の存在が他のDPC病院経営等に及ぼす影響はゼロではありません。このため作業グループでは、「診断群分類を医療資源投入量に基づいて区別することも考えられるのではないか」との指摘が出ています。

例えば、外れ値病院の中には、上述のように「リハビリ目的の患者を一時的にDPC病棟に入院させ、そこから回復期リハビリ病棟に転院させる」という運用フローを設けているところがあります。DPC病棟は、リハビリ病棟ではありませんので「リハビリに合致する診断群分類」は存在しません。しかし入棟患者は何らかの診断群分類にコーディングしなければならないため、当該病院では「この診断群分類はどうであろう?別の診断群分類の方が良いであろうか?」と試行錯誤し、どこかの診断群にコーディングしています(例えば心臓リハの患者について、心臓疾患治療の診断群にコーディングするなど)。

すると、当該症例には急性期治療は行われないために、医療資源投入量が極めて少なく、当該診断群における「医療資源投入量の平均値」が下がってしまうのです。

この点、当該外れ値病院をDPC制度の中に包含する(2022年度に退出ルールは設けない)のであれば、こうしたリハビリ目的などの医療資源投入量が少ない患者を「別の診断群分類」にコーディングすれば、他の多くのDPC病院に迷惑をかけずにすむと考えられるのです。

厚労省の分析では、「他院(急性期治療)→自院のDPC病棟(待機)→自院の回復期病棟」という流れの患者と、「直接、自院のDPC病棟(急性期治療)→自院の回復期病棟」という流れの患者とで、日々の医療資源投入量を比較すると、▼脳梗塞では初期に大きな差がある(直接、自院のDPC病棟に入院した患者で資源投入量が多い)▼股関節・大腿近位骨折では、それほどの差異が見られない―ことが分かりました。「医療資源投入量」「疾患」「入棟元」などを勘案して、診断群分類を細分化するべきかを検討していくことも重要でしょう。

脳梗塞では、入棟元による資源投入量の大きな差はない(その1)(入院医療分科会(3)1 211001)

脳梗塞では、入棟元による資源投入量の大きな差はない(その2)(入院医療分科会(3)2 211001)

股関節・大腿近位骨折では、入棟元による資源投入量の大きな差はない(その1)(入院医療分科会(3)3 211001)

股関節・大腿近位骨折では、入棟元による資源投入量の大きな差はない(その2)(入院医療分科会(3)4 211001)



外れ値病院への対応方法について、現実的な解決策が見えてきたと言えそうです。もちろん「急性期入院医療とは何か」「診断群分類が増加し複雑化する(極論すれば出来高に近づく)」という問題点も浮上するため、継続した検討が必要になることは述べるまでもありません。

機能評価係数IIの地域医療係数(体制評価指数)の中にコロナ感染症対策などを盛り込んではどうか

また作業グループでは「医療機関別係数」についての検討も行われています。ただし、「機能評価係数IIに新たな項目を設けよう」といった大きな見直しというよりも、「項目の内容をどう改善していくか」といった視点での検討が中心となっています。検討の結果、機能評価係数IIの地域医療係数のうち「体制評価指数」(5疾病5事業への貢献度を評価する)において、▼新型コロナウイルス感染症への対応▼僻地医療への対応(医師派遣等の実績評価を行う)▼災害医療への対応(BCP(事業継続計画)策定実績の評価を行う)―などの見直し方向が浮上してきています。

2024年度からスタートする第8次医療計画(2024-29年度を対象期間とする)に向け、計画内容見直しの検討(新興感染症対策を加え5疾病6事業とする)が始まっており、その議論も横目で見ながら、「2022年度のDPC制度改革でどこまで下準備を進めるか」を中医協などで議論していくことになるでしょう。



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