顔面熱傷は救急医療管理加算の広範囲熱傷でないが手厚い全身管理が不可欠、加算算定要件の見直しを―入院医療分科会(5)
2021.10.7.(木)
「広範囲熱傷」として救急医療管理加算を算定する患者の中には、熱傷範囲が小さい患者も一定数いる。しかし、例えば顔面熱傷の場合には、熱傷範囲は小さいものの、気道熱傷の可能性も考慮して、手厚い全身管理を行わなければならない。こうした救急医療現場の実態を十分に踏まえて、救急医療管理加算の算定要件などを考えていくべきではないか―。
10月1日に開催された診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科会」(入院医療分科会)では、こういった議論も行われました。
救急現場の実態を踏まえた「救急医療管理加算の算定要件」を検討せよ
2022年度の次期診療報酬改定論議が精力的に進められています。10月1日の入院医療分科会では、膨大なデータをもとに入院医療改革論議を進めました。本稿ではその中から「救急医療管理加算」に焦点を合わせてみます。
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救急医療管理加算については、これまでに、たとえば次のような論点が浮かび上がってきています(背景を含めた関連記事はこちら)。
(1)加算1の各項目について「定量化」「明確化」を行ってはどうか
(2)加算1と加算2の峻別をより明確にしてはどうか
(3)患者状態の判定時期をどう考えるか
まず(1)は、従前より指摘されている部分で、例えば「意識障害又は昏睡」として加算1を算定しているが、その中には「意識が清明である患者」も含まれているのではいか、といった問題点です。
2020年度の前回診療報酬改定では、実態を可視化するために、次の事項をレセプトへ記載することを義務付けました(関連記事はこちらとこちら)。
(1)アからケのうち該当する状態(加算2では、アからケのうち準ずる状態、またコの状態のうち該当するもの)
(2)イ、ウ、オ、カ、キを選択する場合は、それぞれの入院時の状態に係る指標
(3)入院後3日以内に実施した検査、画像診断、処置又は手術のうち主要なもの―を
そこからは、「JCSゼロ点(意識清明)でありながら、意識障害又は昏睡として加算1を算定する」ような不適切とも思われる事例が、2020年度改定後も一部存在するが、改善(2020年度前に比べて減少)していることなどが明らかになりました。
さらに今般、Burn Indexでゼロ点でありながら、「広範囲熱傷」で救急医療管理加算を算定した患者について、次のような状況が示されています。
▽加算1・加算2ともに、Burn Indexでゼロ点でありながら「広範囲熱傷」として算定するケースがある
▽「広範囲熱傷」で加算を算定する患者に占める「Burn Indexゼロ点」の患者割合を見ると、ほとんどはゼロ%に近いが、ごく一部の病院で100%となっている(加算1・加算2ともに)
▽Burn Indexゼロ点で救急医療管理加算を算定し、うち植皮術を行った患者は、ゼロではないが、ごくわずかであった(加算1・加算2ともに)
Burn Indexは「真皮に達するII度熱傷の面積割合(体表に占める熱傷面積の割合)」×1/2 + 「皮下組織にまで達するIII度熱傷の面積割合(体表に占める熱傷面積の割合)」で計算され、一般に10-15以上で「重症」と判断されます。
このため上記の結果のみを見ると、一部に「広範囲な熱傷でない軽症と思われる患者に、広範囲熱傷として救急医療管理加算を算定する」という不適切な事例があると考えられます。
この点、牧野憲一委員(日本病院会常任理事、旭川赤十字病院院長)は「確かに『burn Indexゼロ点で広範囲熱傷とする』のはおかしい。しかし、例えば顔面に熱傷を負った場合には、熱傷の面積は小さい(当然、Burn Index値も小さくなる)が、医療現場では気道熱傷(放置すれば呼吸困難になる)を疑い、手厚い全身管理を行うのが鉄則である。そうした点も考慮して救急医療管理加算を算定しているのではないか」と推測し、「救急医療現場の実態に照らして、救急医療管理加算の算定要件などを考える必要がある」と指摘しました。中野惠委員(健康保険組合連合会参与)も、「例えば熱傷であれば、深度なども踏まえた評価指標を整理していく必要がある」と、牧野委員提案に理解を示す発言をしています。
あわせて牧野委員は、(3)にも関連して「患者の状態を評価・測定する時期」についても検討の余地があるのではないかと指摘します。
救急医療管理加算は、「入院時に重篤な状態」の患者にのみ算定でき、「入院時には重篤でないが、後に重篤化した」ようなケースでは算定できません。
しかし牧野委員は「救急搬送される重症・重篤な患者の状態は刻刻と変わる。入院時点では意識があるが、直後に意識が落ち、心停止になるなどのケースも少なくない。入院時という1時点でのみ患者の状態を評価する現行制度は、救急医療の現場にあっていないのではないか」との考えも改めて表明しました。
従前から指摘されている論点であり、今後、中医協でどういった方向に向けた議論が進むのか注目されます。
なお、(2)の加算1と加算2の在り方については、8月27日の入院医療分科会で深い議論が行われており、これも引き続き中医協で検討されることになります。
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