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看護職員や介護職員の処遇改善に向けた「報酬改定」、2022年度診療報酬はネット0.94%のマイナスに―後藤厚労相

2021.12.22.(水)

来年度(2022年度)の診療報酬改定については、診療報酬本体についてプラス0.43%の引き上げを、薬価についてはマイナス1.35%、材料についてはマイナス0.02%の引き下げを行う(いわゆるネット改定率はマイナス0.94%となる)—。

本体プラス0.43%のうち0.2%分は「来年(2022年)10月からの看護職員等の給与引き上げ」に支弁することとし、「診療報酬のA205【救急医療管理加算】を算定し、救急搬送件数が年間200台以上の医療機関、および3次救急を担う医療機関」に対し「看護職員の収入を3%(月額平均1万2000円)程度引き上げる」ことを可能とする診療報酬上の手当て(例えば加算の創設)を行うこととする―。

また介護職員についても、介護職員処遇改善加算(I)(II)(III)を取得する事業所を対象に「介護職員の収入を3%(月額平均9000円)程度の引き上る」ことが可能となるような介護報酬上の手当て(加算の充実や新加算創設など)を行う―。

来年度(2022年度)の予算案編成に向けて、12月22日に後藤茂之厚生労働大臣と鈴木俊一財務大臣が折衝を行い、こうした内容が正式決定されました。2022年度の社会保障関係費は、今年度(2021年度)と比べて「4400億円増」に抑えられます(夏の概算要求段階では6600億円増を見込んでいた)。

●厚労省のサイトはこちら

12月22日に、来年度(2022年度)予算案編成に向けた財務大臣との折衝を終え、その内容を発表する後藤茂之厚生労働大臣

2022年度改定率、本体+0.43%、薬価等▲1.37%、ネットで「マイナス0.94%」

まず2022年度の診療報酬改定率を見てみましょう。

診療報酬本体については「プラス0.43%の引き上げ」(国費負担が約300億円増加する)が行われ、その内訳は次のようになっています。
(a)(b)から(e)を除く部分:プラス0.23%(同約250億円増)

(b)看護職員の処遇改善のための特例対応(2022年10月から):プラス0.20%(同約100億円増、関連記事はこちら

(c)リフィル処方箋導入・活用促進による効率化:マイナス0.10%(同110億円減、関連記事はこちら

(d)不妊治療の保険適用のための特例対応:プラス0.20%(同100億円増、関連記事はこちら

(e)「小児の感染防止対策」にかかる加算(医科)の期限到来による効果:マイナス0.10%(同50億円減、関連記事はこちら))

このうち(a)については、▼医科がプラス0.26%(同220億円増)▼歯科がプラス0.29%(同20億円増)▼調剤がプラス0.08%(同20億円増)—で、従前からの「医科:歯科:調剤の比率=1:1.1:0.3」(技術料の比率に応じている)が維持された格好です。



一方、▼薬価についてはマイナス1.35%の引き下げ(市場実勢価格を踏まえ、調整幅2%を確保した引き下げ分がマイナス1.44%(国費が約1600億円減少・節減できる)、不妊治療に使用する薬剤を新たに保険適用する部分でプラス0.09%(国費が約50億円増加する))▼材料についてマイナス0.02%の引き下げ(医科で資料する材料価格について市場実勢価格を踏まえた引き下げを主に行う、国費が約20億円減少・節減できる)―が行われます。

診療報酬本体「プラス0.43%」と薬価「マイナス1.35%」・材料「マイナス0.02%」を合計すると、2022年度のいわゆるネット改定率は「マイナス0.94%」となる計算です。

社会保障・税一体改革がスタートした2012年度以降のネット改定率を見ると、次のように推移しており、「かなり厳しい改定」と言えるかもしれません。
▼2012年度:プラス0.004%(本体プラス1.379、薬価等マイナス1.375)
▼2014年度:プラス0.1%(本体プラス0.73、薬価等マイナス0.63%)
▼2016年度:マイナス0.84%(本体プラス0.49、薬価等マイナス1.33)
▼2018年度:マイナス1.19%(本体プラス0.55、薬価等マイナス1.74)
▼2020年度:マイナス0.46%(本体プラス0.55、薬価等マイナス1.01)
▼2022年度:マイナス0.94%(本体プラス0.43、薬価等マイナス1.37)

看護職員の収入を「3%アップ」できる加算を創設、配分は病院サイドの裁量認める

次に、注目される(b)の「看護職員の処遇改善のための特例対応」について見てみましょう(来年(2022年)2―9月の補助金による看護職員給与引き上げの関連記事はこちらこちら)。

詳細は今後、中央社会保険医療協議会で詰めることになりますが、来年(2022年)10月から「診療報酬のA205【救急医療管理加算】を算定し、救急搬送件数が年間200台以上の医療機関、および3次救急を担う医療機関」に対し「看護職員の収入を3%(月額平均1万2000円)程度引き上げられる」ような診療報酬上の手当て(例えば加算の創設)を行うことになります。この対象医療機関は「来年(2021年)2―9月の1%程度の賃金引き上げ」補助と同じで、これら医療機関に勤務する看護職員は57万人と推計されています。

もっとも「財源をすべて看護職員の処遇改善に充てる」ものとは言い切れません。新たな「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」では「看護補助者、理学療法士・作業療法士などのメディカル・スタッフの処遇改善に充てるなどの柔軟な運用も可能とする」とされており、今般の厚労相・財務相折衝でもこの点が確認されています。

新たに設けられる仕組みは、例えば次のようなイメージとなりそうです。
▽「対象医療機関(上述)に勤務する看護職員の収入を3%程度引き上げられる」程度の診療報酬(例えば【看護職員処遇改善加算】)を新設する

▽X病院で「100名の看護職員がおり、収入3%アップが月額1万2000円に相当する」と仮定した場合には、月額120万円(年額にして2880万円)の加算算定が可能となる

▽加算で得られた財源(X病院の例では月額120万円・年額2880万円)をもとにX病院で「スタッフの賃金引き上げ」を行う

▽ただし、どのスタッフの賃金をどの程度引き上げるかは、相当程度「X病院の裁量」が認められる(すべてを看護職員のみに充当することも、「看護職員+看護補助者」に充当すること、「看護職員+看護補助者+リハビリ専門職」に広く充当することも可能)

例にあげたX病院で「スタッフ間の賃金バランスを確保する必要がある」と考えれば、例えば「看護職員+看護補助者+リハビリ専門職」に広く充当することになるでしょう。ただし、加算で得られる財源は決まっている(上記例では月額120万円・年額2880万円)ので、対象を広げれば「1人1人の賃金引き上げ額は小さくなる」点に留意が必要です。

詳細な要件(例えば「算定要件として事前の賃金引き上げ計画提出を求め、事後に確実に賃金が引き上げられたかの証拠を提出することを求めるなど」)などは今後の中医協論議を待つ必要があります。

なお、この診療報酬上の手当ては2022年10月からスタートするため、2022年度に必要な予算は「5か月分」(2022年10・11・12、2023年1・2月の5か月、2023年3月分は2023年度の支払いとなる)となります。上述した「国費が100億円増加する」のはこの5か月分に相当するため、2023年度には「満年度、つまり12か月分の予算」を確保しなければならず、国費で「240億円(100億円÷5か月分×12か月分)」を2023年度に確保することになります。このため、2022年度との差額「140億円」(240億円(2023年度に必要となる国費)-100億円(2022年度に必要となる国費)を社会保障の効率化などで生み出す努力が2023年度予算編成に向けて厚労省に求められることになります。

介護職員についても臨時の介護報酬改定で「収入3%アップ」相当の加算を設ける

関連して「介護職員等」についても、来年(2022年)10月から臨時の介護報酬改定による賃金引き上げが行われます。詳細は社会保障審議会・介護給付費分科会で年明けから議論することになりますが、「介護職員処遇改善加算(I)(II)(III)を取得する事業所」を対象に「介護職員の収入を3%(月額平均9000円)程度の引き上る」ことが可能となるような介護報酬上の手当て(加算の充実や新加算創設など)を行うことになります。加算や事業所スタッフへの配分イメージは、上述した看護職員と同様に考えることができます(来年(2022年)2―9月の補助金による介護職員給与引き上げの関連記事はこちら)。

この処遇改善に必要となる費用は約150億円(国費ベース)と見込まれています。看護職員と同様に「5か月分」の予算であり、2023年度には満年度(12か月)分となる「360億円」が必要となります。2022年度との差額「210億円」(360億円(2023年度に必要となる国費)-150億円(2022年度に必要となる国費)を社会保障の効率化などで生み出す努力が厚労省に求められます。

ピンポイントで「リフィル処方箋」導入を決定、「再診料の効率化」狙う

なお上記(c)のリフィル処方箋とは「医師が認めた場合、一定期間、反復使用できる処方箋」のことです。詳細は今後の中医協論議を待つことになりますが、例えば、容体の安定した慢性疾患(高血圧症など)患者に対し、医師が「3か月間は『この同じ処方箋』を使ってで薬局から降圧剤を交付してもらってください。3か月後に再度受診してください。もちろん3か月たつ前に体調に異変などがあればすぐに受診してください」と処方箋を出すイメージです。

これにより、例えば「同じ薬を出してもらう(いわゆるDo処方)ためだけの再診」を減らすことができ、医療費の効率化につなげることが可能になります。

医療費の効率化は極めて重要な視点ですが、厚労相・財務相との折衝で「ピンポイントの制度改革に言及する」ことは珍しいと言えます(ただし2014年度改定ではかなり細かな部分まで両大臣が言及しているので「前例がない」わけではない)。

中医協ではリフィル処方箋について何度も議論していますが、診療側、とりわけ「医師」を代表する委員から「長期処方を誘発し、患者の安全確保が難しくなる可能性がある。慎重に検討すべき」旨の意見が強く出ています。その議論を超えてこうした方針が決定したわけですが、両大臣は「効果について検証を行う」ことも明確にしています(医療費の節減効果はもちろん、患者の安全についても検証を行う必要がある)。



さらに両大臣は2022年度の次期改定に向けて次のような点を議論することを中医協に強く要請しています。

▽医療機能の分化・強化、連携の推進に向けた、医療機能・患者像の実態に即した「看護配置7対1の入院基本料」を含む入院医療評価の適正化

▽在院日数を含めた医療の標準化に向け、DPC制度見直しなどの「さらなる包括払い」の推進

▽医師働き方改革にかかる診療報酬上の措置について、実効的な仕組みとなるような見直し

▽外来医療の機能分化・連携の強化に向けた「かかりつけ医機能」にかかる診療報酬上の措置の実態に即した見直し

▽費用対効果(加算額と医療費節減額)を踏まえた「後発品の調剤体制にかかる評価」の見直し

▽収益状況・経営の効率性なども踏まえた「多店舗を展開する薬局」の評価適正化

▽OTC類似医薬品など「既収載医薬品の保険給付範囲」の見直し、湿布薬処方の適正化

すでに中医協で議論されている事項がほとんどですが、例えば「看護配置7対1の入院基本料を含む入院医療評価の適正化」などは「急性期一般1の点数引き下げを求めているのか」と深読みすることもでき、今後の中医協における大詰め論議に注目が集まります。もちろん「急性期一般1の点数引き下げ」が決まったわけではなく、「中医協で議論せよ」と両大臣が共通認識をもっているにすぎない点には留意が必要です。

一定所得以上の75歳以上後期高齢者、来年(2022年)10月から医療費は2割負担に

このほか、▼オンライン資格確認等システムの導入や電子処方箋の運用準備のために「医療情報化支援基金」に公費約735億円を積み増しする▼一定所得以上の75歳以上後期高齢者における医療費2割負担導入は来年(2022年)10月1日からとする▼薬価制度における「調整幅」について、その在り方を検討していく▼医療費適正化計画の在り方見直しについて、2024年度からの第4期計画に間に合うよう必要な法整備を行う▼医療法人事業報告書のでデジタル化を進める(2022年3月決算分から電子アップロードをはじめるなど)▼地域医療構想の実現に向けて「2022年度・23年度」に民間医療機関も含めた各医療機関の機能検証や対応方針策定・実施等を行い、状況の定期的な公表を求める―といった点も固められています。



【これまでの2022年度改定関連記事】
◆入院医療の全体に関する記事はこちら(入院医療分科会の最終とりまとめ)こちら(入院医療分科会の中間とりまとめを受けた中医協論議)こちら(入院医療分科会の中間とりまとめ)こちら(入院総論)
◆急性期入院医療に関する記事はこちら(看護必要度6)こちら(新指標4)こちら(新指標3、重症患者対応)こちら(看護必要度5)こちら(看護必要度4)こちら(看護必要度3)こちら(新入院指標2)こちら(看護必要度2)こちら(看護必要度1)こちら(新入院指標1)
◆DPCに関する記事はこちらこちらこちら
◆ICU等に関する記事はこちらこちらこちらこちら
◆地域包括ケア病棟に関する記事はこちらこちらこちらこちら
◆回復期リハビリテーション病棟に関する記事はこちらこちらこちらこちら
◆慢性期入院医療に関する記事はこちらこちらこちらこちら
◆入退院支援の促進などに関する記事はこちらこちら
◆救急医療管理加算に関する記事はこちらこちらこちら
◆短期滞在手術等基本料に関する記事はこちらこちら
◆外来医療に関する記事はこちらこちらこちらこちら
◆在宅医療・訪問看護に関する記事はこちら(訪問看護)こちら(小児在宅等)こちら(訪問看護)こちらこちら
◆新型コロナウイルス感染症を含めた感染症対策に関する記事はこちらこちら
◆医療従事者の働き方改革サポートに関する記事はこちらこちら
◆がん対策サポートに関する記事はこちらこちら
◆難病・アレルギー疾患対策サポートに関する記事はこちら
◆認知症を含めた精神医療に関する記事はこちらこちら
◆リハビリに関する記事はこちら
◆小児医療・周産期医療に関する記事はこちら
◆医療安全対策に関する記事はこちら
◆透析医療に関する記事はこちら
◆個別疾患管理等に関する記事はこちら
◆データ提出等に関する記事はこちらこちら
◆調剤に関する記事はこちらこちらこちら
◆後発医薬品使用促進・薬剤使用適正化、不妊治療技術に関する記事はこちらこちらこちらこちら
◆医療経済実態調査(第23回調査)結果に関する記事はこちら
◆消費税対応の是非に関する記事はこちら
◆薬価・材料価格調査に関する記事はこちら
◆基本方針策定論議に関する記事はこちら(医療部会5)こちら(医療保険部会5)こちら(医療保険部会4)こちら(医療部会4)こちら(医療部会3)こちら(医療保険部会3)こちら(医療部会2)こちら(医療保険部会2)こちら(医療部会1)こちら(医療保険部会1)



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2022年度改定基本方針を了承、医療提供体制改革・医師働き方改革が重点課題—社保審・医療保険部会
2022年度診療報酬改定の基本方針策定は目前、オンライン資格確認稼働から1か月間の状況は―社保審・医療保険部会
2022年度診療報酬改定、「強固な医療提供体制の構築」「医療従事者の働き方改革」が重点課題―社保審・医療部会
かかりつけ医制度化を検討すべきか、感染症対策と医療提供体制改革はセットで検討を―社保審・医療保険部会(1)
平時に余裕のない医療提供体制では有事に対応しきれない、2022年度診療報酬改定での対応検討を―社保審・医療部会(1)
コロナ感染症等に対応可能な医療体制構築に向け、2022年度診療報酬改定でもアプローチ―社保審・医療保険部会(2)
「平時の診療報酬」と「感染症蔓延時などの有事の診療報酬」を切り分けるべきではないか―社保審・医療部会
診療報酬で医療提供体制改革にどうアプローチし、医師働き方改革をどうサポートするか―社保審・医療保険部会(1)

2022改定は診療報酬本体0.5%超の引き上げを、医療法人の事業報告書開示は丁寧な議論を―四病協

2022年度は診療報酬プラス改定する環境にない、メリハリをつけ急性期病床の集約化など進めよ—中医協・支払側委員
かかりつけ医機能評価する診療報酬を患者視点で整理、慢性疾患にはオンライン診療やリフィル処方箋活用を―健保連
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自院の急性期後患者割合に基づく地ケア病棟減算、拡大はコロナ対策阻害しかねない―地ケア病棟協・仲井会長
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回復期リハ病棟1、組織的な正しい評価体制確保のため「第三者評価」要件化など検討せよ―リハ医療関連団体協
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2022年10月からの介護職員処遇改善、現場の事務負担・職種間バランス・負担増などに配慮を―社保審・介護給付費分科会

2022年2月からコロナ対応病院勤務の看護職員給与を1%、介護職員の給与を3%引き上げる策を打つ―政府経済対策
2022年2-9月、看護職等の賃金引上げの補助を実施、10月以降は診療報酬対応も視野に入れ検討—2021年度補正予算案

紹介状なし患者の特別負担拡大、一定所得以上の後期高齢者の2割負担論議を確認―社保審・医療保険部会