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診療報酬改定セミナー2022 診療報酬改定セミナー2022

2020年度、医業収支は大きく悪化したがコロナ補助で経営好転、21年も医業収支はコロナ前に戻らず—中医協総会(1)

2021.11.24.(水)

2020年度の医療機関等経営状況を見ると、新型コロナウイルス感染症の影響で大きく悪化しているが、コロナ関連補助金を加味すると2019年度よりも改善しているケース(特に大規模の急性期病院)が少なくない―。

2019年・20年・21年の「6月」について医業損益をみると2021年は20年に比べれば好転しているケースが多いが、2019年水準には戻っていない―。

11月24日の中央社会保険医療協議会・総会および調査実施小委員会に「第23回医療経済実態調査」が報告され、こういった状況が明らかになりました。同日はDPC改革、短期滞在手術等基本料改革も議題となっており、これらは別稿で報じます。

●第23回医療経済実態調査結果(厚生労働省サイト)
医療機関等調査全体
医療機関等調査の概要
保険者調査の全体

コロナ関連補助で経営好転するが、医業損益はコロナ禍で大幅悪化

医療経済実態調査は、医療機関等調査と保険者調査で構成されます。前者の医療機関等調査では「直近の(つまり前回の)診療報酬改定の前後で、医療機関の経営状況がどう変化したか」を、後者の保険者調査では「医療保険者(健康保険組合や協会けんぽ、国民健康保険など)の財政状況はどう変化したか」を調べるものです。例えば医療機関等調査において「前回改定後に医療機関等の経営が厳しくなっている」ことが分かれば「今回はプラス改定とし、医療機関経営等を下支えする必要があるのではないか」という議論を行い、逆に「前回改定後に医療機関等の経営が好調である」と分かれば「今回改定での全体底上げの必要性は低い」などと判断することになるでしょう。

本稿では、医療機関等調査の中でも「一般病院の経営状況」に焦点を合わせてみましょう。ここでは「介護収益2%未満の一般病院」に絞って見ていきます。なお、後述するとおり2020年度の前回改定後に新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、医療機関経営にも多大な影響が出ました。今般の医療経済実態調査では、こうした点も踏まえた工夫が行われていますが、「調査に限界がある」(医療機関経営への影響が2020年度の前回改定によるものか、コロナ感染症によるものかの判別が難しい)点に留意が必要です。

まず一般病院全体の損益([医業収益+介護収益]-[医業・介護費用])比率は、改定前の2019年度には▲3.1%でしたが、改定後の2020年度には▲6.9%で、3.8ポイントも悪化しました。ただし、ここにコロナ感染症関連の補助金・支援金を加味すると、2020年度の損益状況は「プラス0.4%」となり、2019年度に比べて3.5ポイントの改善となっています。

一般病院全体の経営状況(中医協総会(1)1 211124)



もっとも、一般病院について開設主体別に損益の状況を見ると、次のようにバラつきがあるものの、「医業収支のみでみると2019年度から20年度にかけて悪化しているが、コロナ関連補助金を加味すると2019年度から20年度にかけて好転している」という傾向は同じです。

【医療法人】
2019度(改定前):プラス1.8%→2020年度(改定後):プラス0.1%:1.7ポイント悪化
→コロナ関連補助金を加えるとプラス2.3%:0.5ポイントの改善

【国立】
2029年度(改定前):▲1.7%→2020年度(改定後):▲9.2%:7.5ポイント悪化
→コロナ関連補助金を加えるとプラス6.8%:8.5ポイントの改善

【公立】
2019年度(改定前):▲14.2%→2020年度(改定後):▲21.4%:7.2ポイント悪化
→コロナ関連補助金を加えると▲7.3%:6.9ポイントの改善

【公的】(日赤や済生会など)
2019年度(改定前):▲0.2%→2020年度(改定後):▲3.0%:2.8ポイント悪化
→コロナ関連補助金を加えるとプラス5.4%:5.6ポイントの改善

【その他】(企業立や学校法人など)
2019年度(改定前):プラス0.3%→2020年度(改定後):▲3.1%:3.4ポイント悪化
→コロナ関連補助金を加えるとプラス1.2%:0.9ポイントの改善



また、コロナ感染症対応別に見ると次のような状況です。コロナ患者受け入れの有無・濃淡によって状況が若干異なります。

【重点医療機関】(コロナ感染症患者専用病棟等を設置)
2019年度(改定前):▲5.4%→2020年度(改定後):▲10.7%:5.3ポイント悪化
→コロナ関連補助金を加えるとプラス2.2%:7.6ポイントの改善

コロナ重点医療機関の経営状況(中医協総会(1)2 211124)



【協力医療機関】(コロナ感染症疑い患者専用の個室を設置)
2019年度(改定前):▲4.4%→2020年度(改定後):▲8.0%:3.6ポイント悪化
→コロナ関連補助金を加えると▲3.4%:1.0ポイントの改善

【病床割り当て医療機関】(重点・協力以外でコロナ感染症患者等受け入れ病床を割り当て)
2019年度(改定前):▲2.2%→2020年度(改定後):▲4.0%:1.8ポイント悪化
→コロナ関連補助金を加えるとプラス▲1.2%:1.0ポイントの改善

【病床を割り当てられていない医療機関】
2019年度(改定前):プラス1.2%→2020年度(改定後):▲0.9%:2.1ポイント悪化
→コロナ関連補助金を加えると▲0.1%:1.3ポイントの悪化



さらに、コロナ感染症患者の受け入れ実績別に見ると、次のような状況です。やはり受け入れ実績の有無・濃淡により状況が異なります。

【コロナ感染患者等の入院受け入れ実績あり】
2019年度(改定前):▲4.7%→2020年度(改定後):▲9.4%:4.7ポイント悪化
→コロナ関連補助金を加えるとプラス0.7%:5.4ポイントの改善

コロナ感染患者等の受け入れ実績がある医療機関の経営状況(中医協総会(1)3 211124)



【コロナ回復患者の受け入れ実績あり】
2019年度(改定前):プラス2.3%→2020年度(改定後):プラス0.1%:2.2ポイント悪化
→コロナ関連補助金を加えるとプラス1.2%:1.1ポイントの改善

【コロナ患者でない転院患者の受け入れ実績あり】
2019年度(改定前):プラス0.5%→2020年度(改定後):▲0.5%:1.0ポイント悪化
→コロナ関連補助金を加えるとプラス0.4%:0.1ポイントの悪化

【いずれでもない医療機関】
2019年度(改定前):プラスマイナス0.0%→2020年度(改定後):▲2.5%:2.5ポイント悪化
→コロナ関連補助金を加えるとプラス▲1.7%:1.7ポイントの悪化





病床規模による影響を排除するために、一般病院について、開設者別に「100床当たりの損益」を見てみても、次のように施設全体と似た動きをしています。

【一般病院全体】
2019年度(改定前):プラス0.5%→2020年度(改定後):▲3.1%:3.6ポイント悪化
→コロナ関連補助金を加えるとプラス4.2%:3.7ポイントの改善

【医療法人】
2019年度(改定前):プラス1.6%→2020年度(改定後):プラス0.4%:1.2ポイント悪化
→コロナ関連補助金を加えるとプラス2.6%:1.0ポイントの改善

【国立】
2019年度(改定前):▲0.9%→2020年度(改定後):▲8.3%:7.4ポイント悪化
→コロナ関連補助金を加えるとプラス7.7%:8.6ポイントの改善

【公立】
2019年度(改定前):▲1.6%→2020年度(改定後):▲9.3%:7.7ポイント悪化
→コロナ関連補助金を加えるとプラス4.8%:6.4ポイントの改善

【公的】
2019年度(改定前):プラス1.3%→2020年度(改定後):▲1.9%:3.2ポイント悪化
→コロナ関連補助金を加えるとプラス6.5%:4.2ポイントの改善

【その他】
2019年度(改定前):プラス1.0%→2020年度(改定後):▲1.0%:2.0ポイント悪化
→コロナ関連補助金を加えるとプラス3.3%:2.3ポイントの改善

特定機能病院、DPC病院、子ども病院でもコロナ補助で経営改善

次に、一般病院について機能別に損益状況を見ると次のような状況です。

【特定機能病院】
2019年度(改定前):プラス0.7%→2020年度(改定後):▲3.1%:3.8ポイント悪化
→コロナ関連補助金を加えるとプラス3.8%:3.1ポイントの改善

【DPC病院】
2019年度(改定前):プラス0.2%→2020年度(改定後):▲4.3%:4.5ポイント悪化
→コロナ関連補助金を加えるとプラス5.1%:4.9ポイントの改善

【子ども病院(小児総合医療施設)】
2019年度(改定前):▲1.7%→2020年度(改定後):▲6.1%:4.4ポイント悪化
→コロナ関連補助金を加えるとプラス0.7%:2.4ポイントの改善

急性期一般2・3、急性期一般1でコロナ対応による補助効果「大」

さらに、一般病院について、主な入院基本料別に病院の損益状況を見ると次のようになりました。

【急性期一般1】
2019年度(改定前):プラス0.5%→2020年度(改定後):▲4.3%:4.8ポイント悪化
→コロナ関連補助金を加えるとプラス5.1%:4.6ポイントの改善

【急性期一般2-3】
2019年度(改定前):▲3.5%→2020年度(改定後):▲1.5%:2.0ポイント改善
→コロナ関連補助金を加えるとプラス8.0%:11.5ポイントの改善

【急性期一般4-7】
2019年度(改定前):▲0.8%→2020年度(改定後):▲3.0%:3.8ポイント悪化
→コロナ関連補助金を加えるとプラス1.1%:1.9ポイントの改善



【療養病棟1】
2019年度(改定前):プラス2.8%→2020年度(改定後):プラス2.3%:0.5ポイント悪化
→コロナ関連補助金を加えるとプラス3.9%:1.1ポイントの改善

【療養病棟2】
2019年度(改定前):▲1.1%→2020年度(改定後):▲3.3%:2.2ポイント悪化
→コロナ関連補助金を加えるとプラス1.1%:2.2ポイントの改善

一般病院の損益率動向、大規模病院ほどコロナ対応による補填効果「大」

また一般病院について、病床規模別の損益の状況は次のようになっています。大規模の急性期病院ほど「多くのコロナ感染患者の受け入れ→多くのコロナ関連補助金の交付」となり、補助金加味後の経営状況改善が伺えます。

【20-49床】
2019年度(改定前):プラス1.9%→2020年度(改定後):▲1.7%:3.8ポイント悪化
→コロナ関連補助金を加えるとプラス1.0%:0.9ポイントの悪化

【50-99床】
2019年度(改定前):プラス0.4%→2020年度(改定後):▲0.7%:1.1ポイント悪化
→コロナ関連補助金を加えるとプラス1.0%:0.6ポイントの改善

【100-199床】
2019年度(改定前):プラス0.3%→2020年度(改定後):▲1.6%:1.9ポイント悪化
→コロナ関連補助金を加えるとプラス2.4%:2.1ポイントの改善

【200-299床】
2019年度(改定前):▲0.5%→2020年度(改定後):▲3.9%:3.4ポイント悪化
→コロナ関連補助金を加えるとプラス4.0%:4.5ポイントの改善

【300-499床】
2019年度(改定前):プラス0.7%→2020年度(改定後):▲3.3%:4.0ポイント悪化
→コロナ関連補助金を加えるとプラス6.9%:6.2ポイントの改善

【500床以上】
2019年度(改定前):プラス0.1%→2020年度(改定後):▲5.1%:5.2ポイント悪化
→コロナ関連補助金を加えるとプラス4.8%:4.7ポイントの改善



こうした医療機関の経営状況は、「診療報酬改定の改定率」にも関係してきます。Gem Medでもお伝えしていますが、改定率は「内閣が予算編成過程で決定」します。ただし、中医協が「改定率に向けて意見を述べる」ことは禁じられておらず、11月24日の中医協総会でも小塩隆士会長(一橋大学経済研究所教授)から「中医協としても改定率について議論し、加藤勝信厚生労働大臣に考え方を報告したい」との考えを明らかにしました。今後、診療側・支払側のそれぞれの立場から、「医療機関等調査結果の分析」と「分析に基づく2020年度改定率に向けた考え方」が主張されます。

クリニック、コロナ関連補助金を加味しても2019から20年度にかけて経営が若干悪化

一般病院以外の医療機関における損益状況は、例えば次のようになっています。

【無床の一般診療所(全体)】
2019年度(改定前):プラス9.6%→2020年度(改定後):プラス6.6%:3.0ポイント悪化
→コロナ関連補助金を加えるとプラス7.1%:2.5ポイントの悪化

【有床の一般診療所(全体)】
2019年度(改定前):プラス4.0%→2020年度(改定後):プラス3.4%:0.6ポイント悪化
→コロナ関連補助金を加えるとプラス3.6%:0.4ポイントの悪化

【保険薬局(全体)】
2019年度(改定前):プラス6.7%→2020年度(改定後):プラス6.5%:0.2ポイント悪化
→コロナ関連補助金を加えるとプラス6.8%:増減なし

2021年6月の病院経営状況、2020年より好転するが、コロナ禍前の2019年水準に戻らず

今般の医療経済実態調査では、特例的に「2019年6月」→「2020年6月」→「2021年6月」の単月調査も行われました。コロナ感染症の流行が収束したと言えない中で「2020年度以降にどういった影響が出ているのか、継続しているのか」を見るものです。

ただし単月調査ゆえ、▼賞与は年間の12分の1を機械的に加味している▼休日日数等にズレがある―などの留保要素がある点に注意が必要です。

また、コロナ関連補助金は加味されておらず、「医業損益」のみを見たものです。公立病院を除いて「2021年に入ると、2020年よりは医業収支が改善しているものの2019年の水準に戻っていない」状況が伺えます。公立病院では2021年に入り「2020年よりも悪化してしまった」ことが分かりますが、この背景には「給与、賞与費の増加」があるようです。

【一般病院全体】
2019年:▲2.3%→2020年:▲6.6%→2021年:▲4.7%

2019年・20年・21年の各年における「6月」の医業損益状況を比較すると、2021年は20年に比べれば好転しているが、19年水準には戻っていない(中医協総会(1)4 211124)



【医療法人】
2019年:プラス1.4%→2020年:▲1.3%→2021年:プラス0.5%

【国立】
2019年:▲2.8%→2020年:▲12.2%→2021年:▲5.1%

【公立】
2019年:▲9.9%→2020年:▲15.9%→2021年:▲17.9%

【公的】
2019年:プラス0.1%→2020年:▲4.1%→2021年:▲0.7%

【その他】
2019年:プラス0.5%→2020年:▲3.3%→2021年:▲2.3%





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◆入院医療の全体に関する記事はこちら(入院医療分科会の最終とりまとめ)こちら(入院医療分科会の中間とりまとめを受けた中医協論議)こちら(入院医療分科会の中間とりまとめ)こちら(入院総論)
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